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2020年08月20日08:54

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(転載)中国・チベット女子一人旅−27

4,800mの峠を越えてしばらく行くと、高台から昌都の街が一望できた。
でかい。
江達での約束をシオンチューチュェジエが忘れていなければ、
私は明日ここに到着する彼とどこかで落ち合い、ラサ行きのトラックに同乗させてもらうはずだった。
この街で、待ち合わせ時間も場所も無く、もちろん携帯電話なぞある訳も無く、一人の人間を探すなんて、到底ムリだ。

市街地に入った瞬間、徳格で私のダウンジャケットの前を閉めてくれた、青年ラマ僧一団の姿が見えた!
あッ、という間にバスは彼らの前を通り過ぎてしまい、大声で呼ぶ暇さえなかった。
彼らは昨日、ここ昌都に着いていたはず・・・私が到着する頃になってもまだ、ラサ行きの車を捕まえられずにいるのか・・・。
一瞬だったが遠目にも、青年ラマ僧はとても困っているように見えた。

バスステーションに到着した。
私は、トンロウ酒店という安ホテル(酒屋ではない)に泊まるつもりだった。
江達で、オジサンに放りこまれた三人部屋にいた女2人が、実は中国人ではなく昌都出身のチベタンで、
彼女たちが、散々私を中国語でどやした次の朝、親切にも、昌都へ行くんなら、トンロウ酒店は安くて小ぎれいよ、と教えてくれたのだ。
運転手が、泊まるところはあるのか、と訊いてきたので、そう答えると、
じゃぁこの人が連れて行ってくれる、没問題(問題ない)だ、と、そこに居たタクシーを指した。
そんなゼイタクはしたくなかったのだが、無理矢理乗せられてしまった。
トンロウ酒店には一分で着いた。
タクシーの運転手はさぞかし有り難かったんだろう、自分の携帯番号まで教えてくれて、
何かあったらかけてきなさい、緊急のときは110番(日本と同じなのね)すること、などと言ってくれたが、
公安を恐れる私がわざわざ自分で呼ぶはずもなく、
そんなんで初乗り10元も取られて、ハッキリ言って余計なお世話だった。

しかも、トンロウ酒店の入り口には、早速、あのカーキ色の公安が
3人も、いるのであった。
そして、フロントを探してキョロキョロしている、不審ないでたちの私は、たちまち職務質問の対象に・・・
私は焦りまくって、ただでさえ操れない中国語で、しどろもどろになってしまった。
公安の人が訝しげな表情になる。やばい。
私は早口で、友達を探しているから、と、公安たちの間を強行突破し、フロントに向かった。
と、そこにも2人のカーキ色の人が。
黙って私を監視する公安2人の視線に耐えながら、「20元の部屋はありますか?ドミトリーでいいんです。」と言うが、
私の中国語が分かりづらいらしく、服務員のオネエサンに何度も「あぁ?!」と聞き返されてしまう。
中国語で「アァ?」というのは、フツーの聞き返しで、日本語で言うと「え?」にあたるのだが、
何回聞いても私には、関西のチンピラが眉間にしわを寄せて、足先から上に向かってガンを飛ばす、あの時の唸りにしか聞こえない。
やっと25元の部屋ならある、という事になり、オネエサンが宿帳を取り出す。「身分証は?」
・・・あぁ、そうか・・・
背後から依然として私を脅かし続ける公安パワー。
まさかパスポートを取り出す訳にはいかない。どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・・・・・・
私は身分証を探すフリをしながら、一生懸命、考えた。
そのうちオネエサンが面倒臭そうに、「失くしたの?じゃいいわよ、名前は?」と言ってきた。
うっ、名前?!
中国人女性の偽名を考えておくことくらい、なんでしなかったんだろう・・・
ええと、ジュディオング。じゃなくて、オーヤフィーフィー。じゃなくて、テレサテン。じゃなくて・・・(心の声)。
ダメだ!中国人じゃないよそれ。しかも歳バレだし。
私は「身分証を・・・バスの中に置いてきちゃったみたいです。」と、ごまかし(になってないが)、
ひとまずその場をそそくさと離れた。


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