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2020年07月31日22:03

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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

少し前の話になりますが、年度末以降、多くの展覧会・コンサートが中止や延期となっていたところ、緊急事態宣言の解除を受け、東京での会期が終了してしまっていたロンドン・ナショナル・ギャラリー展が延期開催されている事を知り、遂に先日鑑賞をさせて頂く事が出来ました。

鑑賞には多くのハードルがありました。先ず、感染予防の観点から殆どテレワークとなっている身で在りながら、展覧会目的でわざわざ都内に出歩く、という事。
懸念するかしないかは個人的な判断ではあるのですが、行き帰りの交通機関を含め、都内でのリスクを最小限にする必要があり、月2〜3回だけ、止むを得ず必要な出勤日と月2回必要な通院日を合わせ、そこに経路途中にある展覧会を(一番人が少なそうな平日午後早めに)組み込む事にしました。

そして予約。延長開催を鑑賞するには数週間前に予約・購入する日時指定のチケットが必要で、かつ、密を避けるため設定されるチケット数はかなり少な目。何度かのトライを経て、週毎にまとめて開始される発売日にスマホから何とか次々週くらいのチケットを予約する事が出来ました。

数日前から漢方の補剤で免疫を上げ、当日は電車が空いている早朝に出勤して夕方の分の業務まで早めに済ませ、そのまま上野に・・・急ぎ足(3時間弱)で常設展を含めた鑑賞を終わらせ、そのまま都内の通院先へ向かう事になりました。


早朝の電車もガラガラ、会社もガラガラ、三層構造のマスクと伊達メガネを装着、マイアルコール持参でまたもやガラガラの山手線に乗り久々の上野に到着しましたが、いつもの公園口の位置が変り、文化会館前の横断歩道が無くなりちょっとびっくり。その上を跨ぐ形で広い舗道が設定されていて、改札から美術館へはストレートに向かえるようになっていました。(数か月で随分変わってしまいました・・)

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入り口には「事前予約の方のみ入場可」の案内。行列やいつもの広場の混雑も無くすんなり入場し検温、消毒を経てスマホ画面のチケットを見せ、そのまま入場に。

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館内はいつもの(平日の)美術展然り、年配の方が多いのかと思いましたが、やはりコロナの心配の為か学生の姿が目立つものの、中高年率はかなり低めでした。混雑具合はメジャー系の美術展では先ず考えられない状態で、有名な絵画の前では5〜6人の人だかりが出来る事もありますが、タイミングや鑑賞の順番を工夫すると印象派の名画さえ正面からの鑑賞を独占できる事も。

音声ガイドも念入りに消毒していて、いつも受付でお借りするメモ用の鉛筆も今回は(ゴルフのスコアなどを記入する)簡易なものを頂ける形でした。(返却しないでください!)

内容は「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展公式サイト」に詳しく記載があります。
https://artexhibition.jp/london2020/

展示は西洋絵画そのものの展開に合わせ、イギリスに欧州大陸側の美術がどのように受け入れられたかを順を追って紹介する構成で、最後にフランス近代美術がドーンと現れるというもの。(全61作品は全てロンドン・ナショナル・ギャラリーのものです)

以下、気になったものの備忘です。

1.イタリア・ルネサンス絵画の収集
 ・カルロ・クリヴェッリ 聖エミディウスを伴う受胎告知
 ・ドメニコ・ギルランダイオ  聖母子
 ・ティツィアーノ・ヴェチェッリオ ノリ・メ・タンゲレ
 ・ヤコポ・ティントレット 天の川の起源

 緻密な描写に様々な宗教的なモチーフ・意味合いが込められていたり、新しい画法が試されています。特にこの時代の油絵具が出す質感や色使いは500年も前の作品とは思えないほど美しく繊細です。

2.オランダ絵画の黄金時代
 ・ヤン・ステーン 農民一家の食事(食前の祈り)
 ・ヨハネス・フェルメール  ヴァージナルの前に座る若い女性
 ・ウィレム・クラースゾーン・ヘ―ダ ロブスターのある静物
 ・フィリップス・ワウウェルマン 鹿狩り
 ・ウィレム・ファン・デ・フェルデ(子) 
   多くの小型船に囲まれて礼砲を放つオランダの帆船

 ロブスターの静物やきとんとした身なりの肖像画がある一方、パンとスープのみの食事の農民が描かれていたりなど、当時の人々の暮らしが分かる風俗画が興味深いです。リアルな描写や絹を思わせるような衣服の光沢も素敵です。

3.ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
 ・ヴアンソニー・ヴァン・ダイク 
   レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー
 ・ライト・オブ・ダービー トマス・コルトマン夫妻
 ・トマス・ローレンス 55歳頃のジョン・ジュリアス・アンガースタイン

 肖像画に(成功した)リアルな自分を描かせる事が新興市民の新たなステイタスとして定着して行く様が、自信有り気な肖像からも伺えます。

4.グランド・ツアー
 ・カナレット ヴェネツィア:大運河のレガッタ
 ・フランチェスコ・グアルディ ヴェネツィア:サン・マルコ広場
 ・クロード=ジョゼフ・ヴェルネ ローマのテヴェレ川での競技

 イギリスの上流階級の子息がヨーロッパ文明発祥の地(イタリア)を訪れる流行が起き、土産として緻密な風景画と自分の肖像を持ち帰る。当時の人々がそうやってどのくらいの時間をかけてイタリアと往復したのか思いを馳せます。

5.スペイン絵画の発見
 ・フランシスコ・デ・ゴヤ ヴェリントン公爵
 ・ディエゴ・ベラスケス マルタとマリアの家のキリスト
 ・バルトロメ・エステ・バン・ムリーリョ 幼い洗礼者聖ヨハネと子羊

 ムリーリョの少年少女を描く風俗画がなぜ当時のイギリスで特に好まれたのか、その背景をより深く知りたい所です。

6.風景画とピクチャレスク
 ・クロード・ロラン 海港
 ・アルベルト・カイプ 羊飼いに話しかける馬上の男のいる丘陵風景
 ・ヤーコブ・ファン・ロイスダール 城の廃墟と教会のある風景
 ・リチャード・ウイルソン ディー川に架かるホルト橋
 ・トマス・ゲインズバラ 水飲み場
 ・ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
   ポリュフェモスを 嘲 あざけるオデュッセウス
 
 唯一無二な瞬間を捉えたような劇的な風景に目を奪われます。夕焼けオタクなのでロランやターナーには目を奪われます。

7.イギリスにおけるフランス近代美術受容
 ・アリ・シュフェール ロバート・ホロンド夫人
 ・アンリ・ファンタン=ラトウール ばらの籠
 ・ピエール=オーギュスト・ルノワール 劇場にて(初めてのお出かけ)
 ・エドガー・ドガ バレエの踊り子
 ・クロード・モネ 睡蓮の池
 ・フィンセント・ファン・ゴッホ ひまわり
 ・ポール・ゴーガン 花瓶の花
 ・ポール・セザンヌ プロヴァンスの丘
 ・ポール・セザンヌ ロザリオを持つ老女

 ここはメジャーな名作が続き、疲れた体が再び覚醒します。全ての画に「写真とは全く異なる圧倒的な本物の力」を感じます。特に特にひまわり・・・

印象派の名作をゆっくり観る機会は滅多に無いと思いじっくり味わせていただきまた。
そのため、充実した常設展を観る時間が僅かとなってしまったのが悔やまれましたがそちらはまたの機会に・・・。

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何もかもが異常な事態となっていて、芸術鑑賞どころではない、という雰囲気もありますが傑作揃いの「厳重警戒の名画鑑賞」を思い出として語れる日が一刻も早く訪れる事を願っています。
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