第10話 『そして・・・』
悪鬼と羅刹が裏世界樹の樹の実をさらにもう一つ食べ大幅に妖力を上げる。
そして鬼の姿へと姿を変え幽助たち精鋭部隊7人を葬るべくその牙をむいた。
パワー型の悪鬼には同じくパワー型の酎とその恋人となった棗が息の合った連係プレイで少しずつではあるが押していく。
酎が動きを止め棗がそこに追撃をしていく地味な作業。
だが、確実に悪鬼にダメージを蓄積させていく。
これには幽助も驚きを隠せずにいた。
「酎、おめー本当に強くなったよな」
「愛だよ「愛」!棗と俺の愛の力〜!」
酒の力も借りてかストレートな表現。
「でっかい声で恥ずかしいんだよ、あんたは!」
さすがに照れくさいのか、そう言って酎の頭を小突く棗。
羅刹と対峙した躯と蔵馬も善戦。
男を惑わす妖気と花の香のブレンドも躯には効果なし。そして蔵馬も植物の知識は豊富。
風華円舞陣で花の香を上手くかわしながら傷の手当なども含めた躯のサポートに徹する。
妖狐の姿になったとはいえさすがに実力的には劣るのが現状であったからである。
羅刹と躯のスピードタイプ同士のすさまじい攻防が繰り広げられた。
一方首謀者の修羅は煙鬼、孤光、幽助の3人相手。
さすがに劣勢と見るや、最後に残しておいた木の実を口に運んだ。
しかしここで異変が起こる、、、
「うぐっ、、、」
苦しそうな表情を浮かべ修羅が体に走る激痛に顔を歪める。
それを見た羅刹の口元がにやりと緩んだのを蔵馬は見逃さなかった。
「貴様、何かしたな、、、」
「うふふふふ、3つ目を食べてしまったわね?」
修羅の体が巨大化していく、、、しかし人型ではなく植物の姿へと、、、
「これはいったい、、、」
百戦錬磨の煙鬼も理解の追いつかぬ事態に戸惑う。
「1つ食べたらパワーアっプ、2つ食べたらその者の最高の到達点、すなわち潜在能力の全開放、でもね、、、3つ食べると大変なことになるのよ、うふふふふ」
「そいつの大幅に上がった妖力を栄養にして裏世界樹の樹がまた生まれるって寸法さ」
悪鬼が得意げに説明をする。
「くそ、、、僕をはめたね、、、うぐぅっ!」
もうほとんど原形をとどめていない姿、、、顔の部分だけが樹から浮き彫りになっているだけの修羅が悔しそうに悪鬼と羅刹を睨めつける。
「私たち2人だけじゃ手数が足りないからね〜。裏世界樹の樹をもう一つ育てて強い、強〜い下部たちをたくさん獲得して魔界を掌握するって算段さ」
修羅を苗床にした裏世界樹の樹は想像以上の速さで成長していく。
「こんなはずじゃ、、、こんなはずじゃなかった、、、」
その言葉を最後に修羅が裏世界樹の樹に飲み込まれていく。
そして先端の部分が人間界への結界をも破る勢いで伸び始めた。
「まずいよ、まずいよ。このままじゃ人間界にも甚大な被害が出ちゃうよ」
ぼたんが焦る。
「桑原くんが暮らしていた人間界が壊れてしまう、、、大好きな、、、大好きだった桑原くんの街も、、、」
そばにいた雪菜が何か思いつめたような表情で口を開く。
「『永久凍結の結界』なら、、、」
「えっ?」
聞きなれない結界の名前にぼたんが聞き直す。
「私たち氷目一族に代々伝わる禁忌の呪法です。どんなものでも氷の結界に閉ざすことが出来ると、、、」
「そんなすごい結界、、、雪菜ちゃんが使えるのかい?」
「ええ、、、でも、、、」
何かを言いかけたがそれを飲み込み、意を決した表情で立ち上がる雪菜。
自分を大事にしてくれた最愛の人を殺された悲しみと怒り。そしてそれ以上にその人が住んでいた街、そして世界が壊されていくのを見過ごすことが出来なかった。
「この裏世界樹の樹を封印できるのは私だけ、、、ぼたんさん、、、こんな私と仲良くしてくれて本当にありがとね。」
「雪菜ちゃん、、、何言ってるの、、、それじゃまるでお別れみたいじゃないかい、、、」
ただならぬ雪菜の雰囲気を察してぼたんがそばに寄りそう。
しかしそれを振り払い裏世界樹の樹の前に立ち、『永久凍結の結界』を発動させる雪菜。
樹の根っこ、幹、枝、木の実。
そのすべてが凍りついてゆく、、、雪菜の体と共に、、、。
第10話 ―完―
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