mixiユーザー(id:57818185)

2020年06月13日11:50

32 view

DX時代 組織・役割を再定義  アフターコロナを考える 東京大学教授 柳川範之氏

DX時代 組織・役割を再定義
アフターコロナを考える 東京大学教授 柳川範之氏

2020/6/9付
日本経済新聞 朝刊
日本経済新聞社の参加型ウェブセミナー「アフターコロナを考える」に登壇した東京大学の柳川範之教授は、経済再生に向け、社会としてデジタル技術の一層の活用に取り組んでいく必要があると語った。デジタルトランスフォーメーション(DX)に対応した組織や役割分担を整えることが企業の成長につながるとも指摘した。




――新型コロナウイルスの感染拡大で「対面しないメリット」が重視され、テレワークなどのDXが加速しています。
「壮大な社会実験を結果としてやったことになる。在宅勤務は実務的に難しいと多くの人が思っていたが、やらざるを得なくなってみると、意外に仕事がはかどるじゃないかという人が出てきている。ツールとしては以前からあったが、実際に海外や遠隔地の人とふつうにオンライン会議をするようになり、距離の概念もずいぶん変わった。誰もがデジタルの力を実感したことで、今後は個人の行動もビジネスも大きく変わるだろう。感染が完全に終息するのが一番いいのだが、それが難しい状況では社会としてデジタル技術のさらなる活用を考えながら、少しずつ経済活動を再開していかなければならない」
「アフターコロナの世界では、まったく逆向きの動きが同時に進行するだろう。人の動きが制限されて海外になかなか行けないので閉鎖経済化が進む面はあるが、一方で国際会議にオンラインで簡単に参加できるようになる。自然が豊かな場所に住んでデジタルで仕事をする人が増えるだろうが、例えば教育ではオンライン授業の普及で(アクセスが容易になる)都市の大学を選ぶ学生が増え、地域分散化と都市集中が同時進行する。デジタルと非常に親和性が高い人工知能(AI)の活用が進むなかで、人にしかできない仕事や役割も再認識されるだろう。こうした逆向きの動きにどう対応するかがビジネスのカギになる」


画像の拡大

――視聴参加者に尋ねたところ、DXによる変化としてテレワークの普及などのほか、「非効率な仕事が見直される」と考える人が多いのが印象的です。
「デジタル技術の活用でかなり非効率だった仕事を改善できることがわかったのは大きな収穫だった。ここで止まってしまうと非常にもったいない。デジタルはあくまで手段なので、企業はオンラインで何をするのかをじっくり考える必要があるだろう。今の紙の作業をデジタルに変えるだけでも効果はあるが、やはりポイントはデータ活用だと思う。プライバシーの問題に配慮しつつデータをうまく蓄積・分析する仕組みを作ることだ」
「もうひとつのポイントはやらなくていい業務の見直しだろう。在宅勤務が拡大するのは間違いないので、これまでの組織のあり方や仕事の役割分担の再定義は不可欠だ。デジタルシフトではあるが、けっこう組織内の泥臭い話になるかもしれない。これとあわせて、デジタルではない行動、つまりリアルな行動の価値を再確認することも大切だ。社会や組織を変えていくときに、これは変えないための言い訳になっては困るのだが、非デジタルな部分をどう残すのかはきちんと考えないといけない。これらをうまく実現させた企業は今後もさらに成長していける」
――視聴参加者から、テレワークで働ける人と働けない人がはっきりと分かれてしまっているという意見をいただいています。
「リテラシーが低い人はどうしても出てきてしまうので政策的にも解決していかないといけないが、本来は技術で解決すべき問題だ。知識も能力もなくてもデジタルを使えるのが本当のサービスで、それがまだ不十分ともいえる」
――在宅勤務になって部下の仕事ぶりをどう管理・評価すればいいかわからないという質問も多くの人から寄せられています。
「労働時間だけで仕事ぶりを評価する仕組みがいよいよ限界にきている。仕事の成果を幅広く見ていけるように、企業として(人事評価制度を)変えていかないといけない。すべての仕事を在宅勤務だけでこなすのは難しいので、会社でやる仕事と自宅でやる仕事をどのように整理するか、仕事をどう割り振っていくかを考えるのが大事だ」

――DXと並行してAIやロボットの活用も広がりそうです。
「AIか人間かではなく、両方とも必要になるのだろう。代替関係ではなく、補完関係ととらえるべきだ。AIの活用は急速に進んでいくと考えられるが、同時に人間がより活躍できる方向を目指す必要がある。視聴参加者の皆さんが指摘するように人と人とのコミュニケーションは人間にしかできない。人間が生活しているからこそ人間でないと対応できないこと、人間でないと伝えられないことはたくさんあり、インターフェースとしての人間の機能は非常に重要だと考える。これまでは(リアルなつながりという)貴重な機会を無駄に使ってきたところもあるので、そのポイントを押さえていけば、さまざまなビジネスチャンスが得られるだろう」
――グローバル経済の先行きも大きな論点の一つです。グローバルなサプライチェーン(供給網)の再構築も気になります。
「感染拡大の影響に加えて国際的な政治情勢も考えると、ブロック経済化の方向に進んでいくリスクは高くなっている。日本は閉鎖経済の中ではこれまでのように生きていけないので、各国とうまく関係を構築して、乗り越えていかないといけない。供給網の再構築では、海外に頼るのは危なくて日本国内は安全という議論があるが、そうではない。大きな災害が発生すれば国内の供給がストップして、海外に調達を頼らざるを得なくなる。供給網を複層化・多層化させる工夫が問われている」
――視聴参加者に日本の立場を尋ねたところ「自由貿易の維持・推進」と「国内回帰」で意見が大きく分かれました。
「短期的か長期的かでも見方は変わってくると思う。短期的には感染リスクが残ると考えられるので、人の移動の制限や供給網の機能不全をふまえ、ここ数年である程度は日本国内で調達できる体制を構築する必要があると思う」
――学生の視聴参加者から「これからの時代に求められる能力」について質問を頂きました。
「これから起こることの予想は外れることが多いし、思いがけないことも起きてくるだろう。何が起こるかわからないので、変化への対応力が必要になる。重要なのは正解を求めずに、正解を作り出していく癖を身に付けることだ。学校のテストには正解があるが、ビジネスでは間違っているかもしれないし、やり直す必要があるかもしれないなかで、判断していくことが求められる。もうひとつのポイントは読解力だ。紙であろうとデジタルであろうと、多くの知恵と経験は文章の中に詰まっており、それをどう読み取るか、いかに読み解いていくかという能力は非常に大事だと思う」

▼参加型ウェブセミナー 登壇者が一方的に講演するのではなく、オンラインならではの機能を活用し、視聴参加者の意識調査や質問をふまえて議論を展開するスタイルを採用した。1時間の討論の中で6回の意識調査と3回の質問紹介の機会を設け、約3000人の視聴参加者にもアフターコロナの世界がどう変わるのかを一緒に考えてもらった。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する