人間の無知と誤った対策　コロナウイルスをめぐって

　今回のコロナウイルスをめぐっては、人間の無知と誤った対策が、問題を過剰に大きくしてしまった可能性が高いのではないか。つまり、各国が都市の封鎖、いわゆるロックダウンをおこなったことによって、より被害が拡大してしまったのではないだろうか。
　まず、コロナによる死者数の多い上位十か国（アメリカ、イギリス、イタリア、スペイン、フランス、後略）については、いずれも都市の封鎖、または国の封鎖を実施している。致死率の高い上位十か国（ベトナム、フランス、ベルギー、イギリス、イタリア、後略）で見ても、状況は同じである。
　一方で、死者数、致死率ともに低い国または地域（韓国、日本、シンガポール、台湾、香港など）では、対策は国民の行動の規制にとどまっている。
　さらに特徴的なのが、アメリカでは都市封鎖をおこなったニューヨーク州で、コロナに夜死者数が、アメリカ全土の死者数の30％以上を占める結果になっている。更に中国では、中国国内でのコロナ死者数の80パーセント余りが、都市封鎖をおこなった武漢市に集中しているありさまだ。
　ここから浮かびあがるのは、次のような経緯だろう。
　コロナ発症者が増え、さらなる拡大を防ぐために地域を閉鎖する。すると、その地域は周辺との交易、交流が遮断されるわけだから、必要な物資も入ってこなくなる。狭い地域に感染者を閉じ込めておくことで、むしろ地域内での感染を速めてしまう。感染者を収容、治療できるのも地域の病院に限られるから、いずれ病床、医師、看護師ともに足りなくなる。結果、死者数が増える。
　コロナの対応については、地域に押しとどめようとするのでなく、むしろ周辺地域や国家と協力しながら、患者を分散することで、被害を最小限に抑えることができるのではないか。
　もとより、今回のコロナウイルスは、致死率の高い病ではない。感染しても、無症状や軽症の人がほとんどという、それほど恐れる必要のない病気だった。
　しかし、「未知のウイルス＝怖い」という先入観ばかりが世界中で拡大し、とにかく抑え込まなければならないウイルスだ、という誤った思い込みから、都市封鎖などをおこなって、結果的に医療崩壊を招き、多数の死者を出すに至った。
　反対に、感染者の多く発生している地域から、まだ病床に余裕のある地域へ積極的に患者を分散していたら、どうだったであろうか。物資が急速に不足することもなかっただろうし、不足したとしても、物流が停止していなければ、普段通り納品される。患者一人当たりにないする医療従事者にも余裕ができるから、例えば院内でコロナ専門班などを組成することで、他者への感染を最小限に抑えられたであろう。
　それが証拠に、台湾、韓国、香港など、比較的冷静にコロナに対処した地域では、死者数はそれほど大幅には増えていない。
　被害の大きかったＥＵでは、仮に今回のように各国が国境を閉鎖してしまうのではなく、むしろ国家をまたいで、緊迫した国から比較的余裕のある国へ患者を分散したり、医療用物資を融通したりしていれば、これほどの死者を生まなくても済んだ可能性が高い。
　冒頭に述べた通り、今回死者数が伸びてしまった地域では、一様に都市や地域の封鎖をおこなってしまった。それが間違いだったのである。
　エボラ出血熱に代表される、感染後の致死率が50パーセントにも達するような病であるならば、たとえ、その地域での犠牲者を生んででも、当然一定の地域に抑え込まなくてはならない。しかし、今回のウイルスは明らかにそれとは違う。感染しても、ほとんどの人が感染した自覚すらない病である。それほど軽微な病であったからこそ、これほど世界中に拡散してしまったのである。
　一度できてしまったウイルスは、地球上から消えることはない。ノロウイルスやインフルエンザが毎年ぶり返すのは、それらのウイルスが、普段はどこかに潜んでいるだけだ。時期が来れば、また繁殖活動を始める。ウイルスは生物だから、それは当然のことだ。
　だが、私たちは。ノロウイルスやインフルエンザを、それほど恐れない。それは、すでに治療薬があったり、ワクチンがあったり、免疫を獲得したりしたためだ。
　要するに、新規のウイルスは、誕生した瞬間から、人間は上記いずれか（治療薬か、ワクチンか、免疫か）を手に入れるまで、「終息」はあり得ないということなのだ。
　だから、今回のウイルスに対して、各国が「地域で抑え込もう」としたのが、大問題だったのである。いったん感染者数が減少しても、また季節になればウイルスは活動を活発にするからだ。そのたびに都市封鎖をしていては、切りがない。正しい姿勢は、薬ができるまでの間は、みんなで感染しないように気を付けよう、だったのである。
　人間の無知による過剰な反応の結果、今回は無用な犠牲者を大量に生んでしまったと思われる。最初から冷静に対処していれば、世界中の人がカゼを引いたとしても、これほどの重大事にはならなかったはずだ。