宿舎”上乃家”到着は七時過ぎ。落日の遅い夏の五島もさすがに夕闇が立ちこめていた。
五島は魚類の宝庫である。夕食の卓上は魚介類に溢れていた。とにかく鮮度が高い。刺身など馴れない舌にはコチコチと固く、鯛もひらめも分からないという勿体なさ!体長十センチほどのきびなごは初めて見る魚で、美しい銀色の刺身となって並んでいた。初めて、と言えば五島牛の刺身も。
一日の緊張が食卓についてようやくほぐれていった。
三 福江、久賀島二島をめぐって(1988年8月29日)
●牢屋の窄(さこ)
早朝、宿舎近くの福江教会にそれぞれ聖体訪問に出かけた。
教会に入ろうとしてふと見ると、玄関の石段上に鎌倉・聖母訪問会のシスター原田(ベアタ)が立っているではないか。この奇遇に双方が同時に
「まあ、シスター、どうしてここに?」
シスター原田は横浜教区主催の五島巡礼団に参加して、団長・浜尾司教司式のミサにあずかるところだと言う。立話をしていると、横浜の巡礼団がゾクゾクと到着した。その中に田代不二男先生はじめ知人の顔ぶれがそこにも、ここにも。そのうち浜尾司教様が元気な足どりで近づいてきて、意外という顔付きで声を掛けられた。
「シスターは今ここに住んでいるの?」まさかと思う遠隔の地で、知人に会うのはなつかしい。
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