一日目 １月１１日 会場アトリエ第Q芸術
「宇宙のふろしき�供�
と題する、喜多尾浩代のパフォーマンス。
程よい薄明かりの会場の客席下手側後方より、静かにゆっくり揺蕩い舞うように動きながら会場に喜多尾が現れた。
コの字に設定された客席の前方（正面席の近く）でしばらく膝を折り曲げ伸ばししながら、体幹はしなやかに揺れ動き、上肢はまるで風に乗る蜘蛛の糸のように緩やかに波打つ。
長い上肢はその体躯から独立した別の存在のようでもあり、体幹の延長のようでもあり、不思議な存在となって、私を惑わせる。
徐々にゆっくりとスペースを後ずさり、向きを変え、沈み、伸びあがり、常に身体全体が様々な方向へ伸び縮みして、確実に人であることを保持しながら、人ならぬ何ものかを想起させる。安直に四つ足であったり、魚であったり、鳥であったりということにはならないその存在は、観客としての私の眼を宙吊りにする。「宇宙のふろしき」とは、このことだったか。得心いかぬまま、私は会場という現実の空間から引き離されて、何処という定点を失うに任せられて、喜多尾の身体がそうであるように静かに揺蕩い始めた。
喜多尾の身体は決して停止することがない。その身体は常にしなやかに揺れ続け、流れるように会場を移動する。
一瞬の停止があるように見えても、身体のどこかが次の行き先を指し示すように伸びていく。
喜多尾はその内なる感覚と、外からの刺激（情報）とを出会いを受けて、ささやかな隙間を感じ取って身体を滑り込ませる。内なる感覚も外からの刺激もとどまることなく変化し続けるから、当然喜多尾の身体もとどまることがないのだ。
喜多尾の身体によって、場は豊かに満たされ続ける。
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