mixiユーザー(id:1762426)

2020年01月05日15:07

32 view

1983年ジャマイカ旅日記ー6

1983年ジャマイカ旅日記ー6

 ラッシュアワーのバスはすごい。キャラバン、ハイエースなど日本車が圧倒的に多いミニバスが街を走り回る。ミニバスの中は座った人の上まで横になって人がかぶさり、開けっぱなしで走るバスのドアから男女のお尻がいくつも重なっているのが見える。車掌は車のステップから身を乗り出し、片手で誇らしげに進行方向を指差す。ラスタの車掌もドレッドをなびかせて、中には歌いながら、定員を遥かに超えた乗客の重みにくじけそうになるバスを励ます。超満員の車内で料金を受け取れない車掌が、渋滞で止まった隙に、バスの外から窓越しに金を受け取る。客達に押し潰れそうな運転席のドライバーは、それに気づかず走り出す。車掌がワメキながら後を追いかける。周りの車からの爆笑が警笛と二重奏になる。

 山の手の高級住宅地。芝生が見事な広い前庭と手入れの良い草花や樹木、イギリス風の白亜の洋館が建つ広い通り。街路樹のある道は心地よく、白人の女が馬に乗り悠然と通り過ぎる。僕の乗るタクシーは、昨夜の強盗事件を興奮して報じるラジオニュースを静かな通りに響かせながら、ゆっくりと走る。道のかたわら、大きな樹の下に年老いたラスタマンが居た。タムをかぶり、漆黒の顔の白い髭が見事な彼の両足は根元から無かった。車椅子に座り、ただ穏やかに前方を眺めている。誰がつれてきたのか。物乞いなのか。貧しい国、ジャマイカでハンデ・キャップを持って生きるのはどんなに大変なことだろう。しかし通り過ぎた一瞬の光景は、静かで平和だった。空を飛んでいた鳥が木陰で休んでいるように。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する