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2019年11月30日17:18

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本当は,あまり褒められた患者さんじゃない

新人看護師の失敗… かばってくれた患者さんの言葉に賞賛の声が続出「泣けました」「男前すぎるわ」
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=253&from=diary&id=5883973

この話,美談に捉えたり,患者を賞賛したりしているコメントが多いけど,正直,この患者さん,アピールの方向がちょっとおかしい。

慣れない新人看護師をかばいたい気持ちは分かるけど,この対応では,看護師は患者の世話になってしまうだけで,育たないと思う。ここで患者に甘えず,患者の気持ちだけはちゃんと受け取り,プロとしての対応を続けた看護師を褒めてあげるべきではないだろうか。
こういうことが出来る人なら,きっと,良い看護師に成長すると,私なら思う。

医療現場は,人の命を預かる現場であると同時に,患者の気持ちや人格と濃厚に接する「感情労働」の場でもある。
技術以外の部分も求められる割合が大きいのが,看護師の職域の特性でもある。

以前,私が入院したとき,担当診療科の看護師長に頼まれ,看護学校の実習の学生を付けることになった。しかも集中治療室に居る時から。
後で気がついたのだが,病棟内で私がいちばん若いと言う状況で,わがままな爺さんや,ちょっと認知症の始まった人などがゴロゴロいる場所で,たまたま私が現役の勤め人で,獣医師免許持ちだと言うこともあちこちにバレていて,主治医もそれを了解して病状の説明や手術前の説明なども,一般の人よりも理解が早いから,簡潔に少し突っ込んだ話をしてくれていた。

病棟内で実習生を付けやすい人だったらしい。

そこまで頼まれてしまうと,数日前まで病床で死にそうだったくせに,きちんと対応しようと言う根性が……職業柄なんだか性格なんだか……
学生だから採血や点滴など,資格の必要な業務は出来ない。事実上,看護助手の立場だ。それだけでは実習にならないので,学生さんには,なるべく優しくコミュニケーションを取りつつ,主治医の問診の時間では時間が足りなくて伝えきれなかった,自分の病状のこと,体調のことなどを少し伝えたり,重病の患者が抱くことの多い,不安や絶望感と言った心の揺れについても,時々明かすようにし,医療行為だけでなく,患者特有の気持ちに寄り添うことも,看護の大切な使命であることを,それとなく分かるように(←但し,説教や講釈をしてはいけない),さりげなく伝えるようにした。

こちらとしても,良い医療,良い看護を受けるには,医療スタッフとのコミュニケーションや信頼関係,自分の受けている医療への理解度が大切であることは承知しているので(まぁ,獣医も,言わば,飼い主相手の感情労働なので),医療や看護に役立つ情報は積極的に提供するようにしているのだが。

退院するとき,学生さんがロビーまで見送りに来てくれて,実習が面白かった,役に立ったと言ってくれた時は,嬉しかったな。(看護学校の担当の先生にもお礼を言われてしまった)

この入院期間中に,新人看護師さんが,朝の採血の時に5回連続で失敗して針穴をたくさん作られてしまったこともあった。看護師さんは「すみません~」と恐縮しまくっていたが,そこは気にしていませんよ,検査できる分の血液が最終的には採れたんだから,目的は果たせたのだし,と言いつつ,さらっと,「私も駆け出しの獣医の頃,動物の採血で,なかなか血管に当たらなかったら,先輩に「あ,この子,血がない。病気だ。」とからかわれて恥ずかしかったな~」などと笑い話をしてフォローしたっけ。

人の医療と獣医は,同じような部分もあるけれど,結構違う部分もあるので,看護師さんや学生さんとの雑談ネタに事欠かなかった。

その翌年に入院したとき,あの新人看護師さんも,すっかり腕を上げて,頼もしい「プロの顔」になっていた。軽く挨拶して,「また何日かお世話になります」と言ったぐらいだったけど,分かってくれたかな。





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