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2019年11月03日12:17

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小林登志子『古代オリエントの神々』

古代オリエントは、紀元前3000年頃から紀元前330年までの時代に、東はインダス川から西はナイル川に至る広大な地域に興った文明を総称する概念である。本書は、その古代オリエントの各地に生まれ、民族、都市、国家の消長とともに変遷した神々の歴史をたどる。

もともとメソポタミア、エジプト、ギリシアと続くオリエントの地では、豊穣を祈る多神教が優勢であった。本書も大半は多神教の世界の描写に終始する。しかし、古代オリエントの一地方でイスラエル人が一神教を採用し、それがキリスト教、イスラム教へと継受され世界宗教(普遍宗教)へと発展していった。それでは、現代において本書で多神教の世界を学ぶ意味は何か。

特にキリスト教は、布教の過程で多神教の神々を征服しつつその影響も残している。民衆心理の奥底にもまだ多神教に対する畏怖・憧憬の念があり、それがマグマのように歴史の表舞台に噴出することがある。ヨーロッパ史は一神教のキリスト教だけでは理解できないのだ。翻って、我が国はラフカディオ・ハーンも憧れた多神教の国柄である。現代ヨーロッパや中東、そして日本を理解するうえでも本書が役に立つことだろう。

なお、例えばバビロニアの最高神マルドゥク神をネットで画像検索すると、ほとんどゲームのキャラクターで埋め尽くされる。もしかしたら、我々大人よりも子どもたちのほうが古代オリエントの神々に触れているのかも知れない。
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