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2019年10月06日19:42

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日本フィル 横浜定期演奏会@350(2019.9.28)井上道義とアリス=紗良・オット、一期一会の演奏会

2019.9.28 18:00〜 於:みなとみらいホール

(前半)
伊福部昭
日本組曲より 第1曲「盆踊」 第3曲「演伶」 第4曲「佞武多」

井上道義
メモリー・コンクリート

(後半)
  リスト 死の舞踏

(ソリストアンコール)
  サティ グノシェンヌ 第1番

  リスト ハンガリー狂詩曲 第2番(管弦楽版)

(オーケストラアンコール)
  アーレン オーヴァー・ザ・レインボウ
  (ミュージカル オズの魔法使いより 虹の彼方へ)

指揮:井上 道義

ピアノ:アリス=紗良・オット(死の舞踏)

コンマス:木野 雅之
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

(終演後)
マエストロ&ソリストサイン会

待望の秋のシーズンが始まりました。

隣接する臨港パークでラグビーワールドカップ、アイルランド戦のパブリックビューイングが行われ、いつにも増して活気のあるみなとみらいへ。

久しくクラシックを聴いていないなあ、と思ったら、前回の演奏会から2ヶ月近くが経っていて、直ぐにじっくり音楽を聴く体に戻るかな・・と、少し心配でしたがそれは全くの杞憂となりました。

1曲目は「ゴジラ」や「ビルマの竪琴」「座頭市」などの映画音楽でも馴染みのある伊福部昭さんの「日本組曲」より第2曲「七夕」を除いた抜粋版からスタート。祭りの光景や心意気を彷彿とさせるダイナミックで思い切った(日本)民族的なリズムとメロディーが特徴の傑作です。

井上さんは、文字通りの「盆踊」を本当に太鼓に合わせて踊っているかのようなアクションの指揮で盛り立てます。勢いがあるだけではなく、細かくウイットに富んだコントロールをしています。それは祭りと感謝を神に捧げる厳かな「演伶」、悪魔払いの「佞武多」でも同様。

西洋音楽偏重の日本の音楽界に逆らうように土着的なサウンドを散りばめたこうした作曲家や作品は、背景も含めもっと音楽の授業などで取り上げても良いように思います。日本フォルのパーカスも頑張りました。ブラボー!

2曲目は井上さん自身の生い立ちや印象深い出来事を自ら曲に仕立てた「メモリー・コンクリート」。普通、相当の巨匠でなければこうした自伝的な曲を30分以上・・・というのはちょっと考えにくいなあ、とも思ったのですが、音の使い方、内容が具体的で分かり易く、生い立ちに合わせた流れも自然なため、あらかじめ考えていたような違和感や退屈さは一切感じない興味深い曲となりました。

田んぼのカエルの声やサイレン、黒電話の音、酔っぱらった父親の黒田節、忙しいタイプライター、パーカスではジョッキの乾杯も・・・奇をてらう・・は続き、指揮者が行う音楽以外のカデンツアでは客席の最前列から釣りでぬいぐるみの魚を釣り上げる・・・(海の見えるみなとみらい、だかららしい)でも、こうした現実音に紛れて奥様のテーマ?も。
結局何のための曲かはまだ理解できませんでしたが、十分楽しめました。


後半1曲目はこの日実質的なメインのリスト。グレゴリオ聖歌の「怒りの日」「深き淵より」などの旋律を超絶技法を織り交ぜ変奏して行く難曲。華麗(だけど黒基調で派手ではない)なロングドレスで颯爽と現れたアリス氏の笑顔は着座で一変。まさに全身全霊を投じて音楽(鍵盤)に向き合い、激しい緊張感と緊迫に満ちたオーケストラとの掛け合い(勝負)やソロを演じます。

この、井上さん、日本フィルとの演奏はもちろん、一期一会だけれど、同じプロが3日続く中日。それでも、まるで人生最後の演奏かのように、ありったけのテクニック、曲への思い、力を込める。当然、彼女の魂の叫びのような音に聴衆の集中力もMAX。演奏が終わったら演者も私も倒れるのか・・・と恍惚感の中に不安がよぎったとき、壮絶、壮麗なコーダで約15分の演奏が終わりました。

いやあ、素晴らしいです。アリス=紗良・オットさんの演奏は随分前から拝見していますが、ここ1〜2年で緊張感というか、切迫感が増して、曲の個性に応じた生の感情がより現れているように感じます。不治の病(進行は抑えられる)を公表したのが今年の初めだったので、そうした出来事も影響しているのかも知れません。とにかく、これからの進化(既に十分ですが)も楽しみです。(あまり進化すると気軽に演奏を聴けなくなってしまいますが・・・)
素敵な演奏をありがとうございます。ブラーバ!

これだけの演奏をして、かなりお疲れな様子の紗良さん、名演への喝采と、横浜会員のしつこいアンコール要求でサティを少し短めにアンコールしていただけました。

それでも、病気への不安、演奏への不安を克服して奏でるアンコールは味わいと安堵が感じられ、カーテンコールに往復する足取り(おなじみの裸足)は跳ねるように軽やかでした。

興奮冷めやらぬ最後の演奏もリストのハンガリー狂詩曲第2番。これも最初はピアノ独奏の曲として作曲されましたが、今回はオケ用に編曲されたバージョン。時に力強く、時に軽快でコミカルな響きが。この日、良い意味での「重く心に残るもやもや感」を昇華してくれたような気がしました。ブラボー!

そしてアンコールは、マエストロ(とオケが)病気を克服して今日の演奏会を成功させたアリス氏へ捧げる「虹の彼方へ」。

演奏が始まるとアリスさんも舞台袖に現れてじっと曲に聴き入ります。

2014年に癌を公表して活動休止/再開したマエストロは、ちょうどこの頃に共演が決定し、演奏会の成功に強い不安を感じるアリスさんを(当時、アリスさんは自身に病気を公表していない)励まし、そして今日に至ったのだと思うと、父にも似た強い愛情を感じました。

終演後のサイン会では、私なりに感じた、この気持ちを伝えたかったのですが、やはり緊張からうまく話しが出来ず、以下のようなやり取りとなってしまったのが少し心残りでした。

マエストロのサインを頂いた時、
私「今日の演奏、とても良かったです!」
氏「そう、何が良かったの?」
私「えっ、えー、マエストロの人生を感じる事ができました」
氏「おー、そうかあ」
私「あっ、いえ、人生でなく、半生です。まだまだ続きを聴きたいのでこれからもお願いします
!」
氏「・・・」笑いながら・・・

アリスさんのサインを頂いた時、
私「あの、ここ数年の演奏が、すごく良くて、とても好きです!」
氏「そうですか。ありがとうございます」
私「これからもすっと演奏聴きたいのでどうか頑張ってください!」
氏「はい。ありがとうございます!」

思いが伝わっている事を祈ります。
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