愛知県美術館などで開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、
企画展「表現の不自由展・その後」を中止すると、
昨日、実行委員会トップの大村秀章愛知県知事が発表しました。
今回の企画展は2015年に開かれた「表現の不自由展」を
引き継ぐ形で企画されたもので、
全国の公立美術館やギャラリーに展示を拒否された芸術作品を、
その経緯の解説と併せて展示していました。
今回の展示の中でも、注目を浴びたのが、
元従軍慰安婦を象徴したとされる「平和の少女像」です。
展示内容が報じられた先月31日から抗議の電話が相次いだとの事です。
中には、「大至急撤去しろ。ガソリンの携行缶を持ってお邪魔する」との
脅迫文が送られたとも大村知事は説明し、
「これ以上エスカレートすると安心安全にご覧いただくことが難しくなる」のが、
中止に至った理由としています。
この理由はいかがかなと思いました。
安全が心配ならば、先ずは警備を強化すべきであり、
手荷物検査の導入などの様々な手法があったような気がします。
脅迫文については、警察に被害届を出したのかどうか分かりませんが、
犯罪ですから、警察の捜査を求めるべきだと思います。
こうした無法な圧力に屈した形になってしまいました。
今後、抗議などを行った人達が味をしめて、
同様の美術展やイベントに抗議を殺到させ、
これに不安を感じる主催者などの自粛が広がるのではないかと気になります。
特に今回は、職員の個人名をインターネット上で公表して
誹謗中傷する書き込みなども相次いでいたとも報じられています。
職員の事を心配する管理者としての気持ちも分からないではありませんが、
やはり断固として立ち向かって欲しかったと思います。
この企画展に関しては、
名古屋市の河村たかし市長が2日に少女像の撤去を要請したほか、
菅官房長官は、
「補助金交付の決定にあたっては、
事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べています。
政治家が作品の撤去を求めたり、
行政府が補助金の支出停止をチラつかせるのは、
表現の自由を認めた憲法21条で禁止する検閲に当たるような気がします。
税金で補助を受けているのだから、
政府の方針に反する展示はどうかとの声も上がっているようですが、
政府の補助と表現の自由は、別の次元の話だと思います。
意に沿わない作品の展示に対する執拗な抗議や脅迫、
展示作品に対する政治家や行政府の検閲に近い関与、
どんどん戦前の日本になって行くような気がして、暗い気持ちになっています。
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