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2019年07月14日05:40

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蟻の街の子供たち 北原怜子(きたはらさとこ)−66

聖母文庫 聖母の騎士社刊

 こうやって、零細に集めたお金は全部蟻の会の、「蟻銀行」にお預けしておきました。そのうちに、約六百円ばかりたまったので、それを松居先生のところへ持って行って
「これで、できるだけ机を作って下さい」
 とお願いしました。松居先生は、さっそく、会長さんとご相談して下さいました。会長さんは、笑って
「六百円じゃ三脚の材料代にもならないが、子供たちが、そんなに骨折ったのだから、とりあえず六脚作ってあげましょう。お金の方はあわてずにゆっくりお貯めなさい」
 とおっしゃって、すぐ長机を六脚作って下さいました。

海と山と子供たち

 夏休みーーそれは、子供たちよりも私のほうが楽しみにしておりました。
 蟻の街の子供たちが、屑拾いの子として軽蔑されるばかりでなく、学力が劣っているために、つい他の子供や先生から馬鹿にされがちだからです。そのマイナスを取り返すのは、夏休みこそ絶好のチャンスだと思ったのです。
 私の少女時代の経験からいっても、せめて宿題だけでもしっかりやって行けば、先生からは褒めて頂けるし、友達からは尊敬されるので、なんとなく自信がついて、学校に通うことにも張りが出て来るものです。
 ところが、子供たちが学校から持ち帰って来た夏休みの学習帳を見て、私はがっかりしてしまいました。どの学年の宿題にも、実際に、海や山に行ったことのない子供には、答えの書きようがない質問があるのです。これでは、夏休みだからといって、海にも山にも行かれない貧乏人の子供は、九月になって、金持ちの子供の自慢話を聞かされるだけでも、卑屈な気持ちになって、ますます学校に行くのがいやになるに相違ありません。

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