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2019年06月12日20:47

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セブンイヤースインチベット

「セブン・イヤーズ・イン・チベット」観ました。2回目です。
1997年の映画。
「アイガー初登頂で知られるオーストリアの登山家ハインリヒ・ハラーの自伝の映画化」ということで、彼がチベットのダライ・ラマと出会って別れるまでの物語です。
ブラピ主演だから観たんだけど、背景を調べるの、大変でした。
ジャン=ジャック・アノー監督、出演は他にデヴィッド・シューリス、B・D・ウォン、等がいますが、ダライ・ラマ役は、ジャムヤン・ジャムツォ・ワンチュクという無名の子役が演じてます。

たまきは歴史ものや、事実に基づいた映画が好きですけど、これはその中でもかなりよかった。
チベットのダライラマ14世に即位した14歳の男の子と、この本の作者である、登山家で写真家のハインリヒ・ハラーの友情を描いた、心温まる話です。

でもその背景がすごいんです。
第二次世界大戦勃発、中国による、チベットへの侵攻等があって。
中国共産党の、人民解放軍によるチベット国への軍事侵略、チベットを中国の一部とする、というものですね。

 *これに関して、映画が、中国側の一方的な虐殺のように描かれている、として、中国政府が、この映画の中国での上映を禁止したそうです。

とにかくですね、まずチベット、という国について、ほとんどが草原で、非常に海抜の高い高原地帯にあり、「世界の屋根」と呼ばれる、ということくらいしか知らなかった。
興味はあったものの、中国とのそういった歴史的背景がわからなかったので、ちょっとググってみました。
その前に、坂本龍一の「Tibetan dance」という曲に歌詞をつけて歌う為に、以前ちょっとチベットについて調べたこともあって、結果、素朴な少女が「祈りのダンスを踊る」というイメージが浮かんで、そういう歌詞を作りました。
そしてその歌の録音を仕上げた直後(?)に、教授(坂本龍一)が癌を克服した、というニュースレターを受け取ったので、
「チベットの少女の祈りが天に届いた!」とたまきは思ってしまったのです。
それ以来、この曲は自分にとって特別な曲になってます。

そうそう。
教授と言えば、1999年のオペラ「Life」で、ダライラマ14世(この映画の登場人物よ!)にインタビューしに、インドのダラムサラに樹立された中央チベット行政府でしょうか?彼の居城に自分で出かけて行ったのですね。(彼は「1959年にインドへ亡命して政治難民となり、インドのダラムサラに樹立された中央チベット行政府(現「チベット人民機構」、通称「チベット亡命政府」)においてチベットの国家元首を務めている」ということです。)
そして彼の居城の下の方で、8日間だったか?待たされて、その間高山病に苦しんだそうですが、本人に会ったらそれも吹っ飛んだ、とても魅力的な人だった、と言ってました。
ダライラマのメッセージの画像が、「Life」には入ってますけど、なんだか顔が日本人に似てて、人の好さそうなおじさん、という印象をたまきは受けたな。尊大な感じが全くしない人です。

そして、主人公のハインリヒ・ハラーという人についてもちょっと見てみたけど、この人、元ナチス親衛隊のメンバーだったんですね!
そのせいで、ユダヤ人団体による、この映画のボイコット運動もあったらしい。
世界の「平和の象徴」のダライ・ラマと、「悪魔の大量虐殺の象徴」のようなナチス親衛隊が出会って、お友達になっちゃった!
すごい組み合わせですね。

だけど、映画にはそんな話(ナチス)は出てこなくて、とても好感度の高い人物なんです。
ブラッド・ピットはこのハインリヒ演じてるんだけど、とってもお茶目で可愛いですよ。

あの。
ここで、たまきは普段から考えていたことを少しお話ししたい、と思います。
ナチスの話に興味のある人は多いらしくて、その関係の映画がけっこう流行ってる、ということですけど、たまきも興味ある人の一人です。
あまりにも現実離れした、信じがたい話だからだし、また、ドイツ国民というのは、1998年くらいだったかな?国全体で協力して、環境ホルモンゼロ(近く?)を実現したり、2011年の日本の原発事故を受けて、市民が「原発ゼロ」を政府に訴えて承諾させた
りしてる、素晴らしい国なんですよ。
バッハのような芸術家を生み出したり、医学、科学、工学その他の面でも非常に優れた国ですね。
なのに、戦争の最中にユダヤ人を大量殺害なんて、それやったからって戦況に有利になるとは思えない、ばかなことやってる。
無駄なエネルギーと時間、経費、人員を使って、それで戦争にも負けてるんじゃないの?
と思って。
あの頭の良さそうな人達が、ああいう冗談みたいな(ヒンシュクですか?)狂気の世界に国全体で突入した、というのが解せなくて。

これについては、また書く機会もあると思うので、その時に詳しく、と思ってます。
ただ、このハインリヒが、SS隊員だったから、本当は悪人だった、ということではない、と言いたかったのです。
更に言うなら、他のSS隊員も同様に、です。
極端な言い方をするなら、根っからの悪人も、根っからの善人もこの世に存在しないのです。(あら?何だかダライラマ口調・・・)
たまきはこの2〜3年?ナチス関連の映画を観たり、関連記事を読んだりして、わかったことがあります。(多くはまだ謎のままですが)

元SS隊員の人達って、戦争後に裁判に引き出されたりすると、描いていた人物像との大きな違いに、違和感を感じる人が多いようです。
「悪人像」には程遠く、小市民的な、生真面目な、おとなしい家庭人、働き者、きちんとした人達、ということがほとんどみたいで。
それなんですよ!
重要なのはここです。
彼らは、もともと、悪人でも何でもなかった。
そういう要素すらなかったような人達なんですね。
平和な世の中なら、立派に社会に貢献し、人助けをしたり、医学や科学の分野、また芸術の世界で才能を発揮しそうな人たちです。
そして、極端な言い方をするなら、世の中のほとんど全ての犯罪者がそうなのですよ。

では、何故彼らは犯罪に走ったか?
このナチスに関して言うなら、政治的、歴史的流れ、ドイツという国の地理的、気候的な状況、そういった、多くの要素から、世界の状況まで、あらゆる要素がからまって、「狂人の見る悪夢」が現実化してしまってる・・・
そういうことなんだ、と思うのです。
特に戦争中の軍人は皆、悪人です。どこの国の人も。人の命を奪う、という行為をしているのだから。

話がだいぶ脱線しました。
ただ、このハインリヒがナチスに入ったのは、うんと若いころで、(しかも彼はドイツ人ではなく、オーストリア人です!)彼曰く、「自分で考えるということを未だ学んでいない、若さゆえの
過失だった」ということです。
人は、深く考えることなく、世の中の大きな流れに巻き込まれることが度々あります。
この、「大きな時流の影響」に不注意に巻き込まれる「集団心理」が、多くの戦争を引き起こしている、という気がしてます。

とにかく、このハインリヒは素晴らしい人物で、この映画でもそれを、ブラピはとても魅力的に演じてます。
まるでいたずら好きな少年のようで、快活、元気、陽気なオーストリア人の若い男性。
そしてまだ会ってすらいない、一人の男の子の父親でもある。

まず、彼は登山家で、ヒマラヤ登山のメンバーに選出されるんですね。アイガーバンク初登頂で名が知られるようになったので。
それが1939年のこと。
ドイツはそれまでに数回ヒマラヤ山脈制覇を試み、失敗、もう国威をかけて意地になってる、とハインリヒはナレーションで言ってたかな?(ブラピのナレーションが素敵です。
あれは、オリジナルの本そのままのセリフなのかな?
読んでないのでわかりませんが)
彼らは登頂(詳しく言うと頂上までの最短ルートを探る任務)に失敗、国に戻ろうとした矢先に第二次世界大戦が勃発して、帰国を阻まれるのですね。
それからイギリス軍に捕まって捕虜になったり強盗に捕まったりして、帰国が遠のくばかり。
その間に子供はとっくに生まれてるんだけど、会えないまま。
そして奥さんは他の男性と結婚する、なんて手紙に書いてくるし。
そして収容所からの脱出に成功、国境を越えてチベットへ、と逃れる、と。
ずいぶん波乱万丈な、苦難続きの人生に思えるけど、この人の性格のせいなのか、この長旅を共にするペーター・アウフシュナイターというイギリス人の登山家と二人、まるで「ヤジさんキタさん」の珍道中みたいな、笑える、めちゃ愉快な話。
観てて笑顔がこぼれるシーンの連続です。

でも不思議なのは、このヤジさんキタさん、じゃなかったハインリヒとペーター、戦争が終わっても帰国しないのですよ。
ペーターは確か、中国で職を見つける、と言ってたかな?
そして
「1948年、ハラ―はチベット政府の職員になる。
英語の記事を翻訳し、裁判所の写真家として働く」
とあります。
更に、
「48年、Potala Palaceに招かれ、初めてダライラマに会う。
アイススケート(彼がチベットに紹介した)の映画を作るよう、頼まれる。
ハラ―は映画館を作り、投影機を回すのに、ジープのエンジンを使う。
ダライラマの教師になり、英語、地理と科学を教える」

だそうです。
いい給料をもらい、待遇もよく、農業と牧畜を中心とした、美しい高原での生活に、すっかり魅せられてしまったようです。
何故早く家族の元へ戻らなかったのか?
それは、奥さんが別な人と再婚したこと、そしてハインリヒがしょっちゅう子供に送っていた手紙に対する、子供の返事が、「父親でもない人からの手紙は欲しくありません。もう手紙を送らないで」と書いてあったから。
・・・・と。実際はどうだったのかわかりませんけど、映画ではそうなってます。
作者もこの映画を観て、承諾してるのだから、事実に即しているのかも。
ペーターの方は、地元の英語ペラペラの美人と結婚して、この地に留まることにしたようです。

ダライ・ラマは、すっかり彼が気に入ったようで、会うといつも質問攻め、西洋の文化について、多くのことを知りたがる、「知性に飢えた少年」という印象です。
そして、この国の教育程度についても調べてみたけど、極めて低いのですね。
学校に行けるのは貴族と僧侶のみ、それも仏典を読むための字の読み書きに留まるレベル。
最近、徐々に改善されてきてはいるけど、まだまだ字の読み書きもできない人が大勢いるらしい。
そして、「ダライ・ラマ」というのは、そのチベット仏教における、この国の最高指導者で、代々、国中の子供達の中から、「神のお告げ」によって選ばれた人達がなるのであって、世襲制ではないんですね。
ダライ・ラマ14世も、そうして選ばれた一人で、貴族の出身ではなく、農家の出身です。
他の国との、大きな違いがここにありますね。
そして、その宗教の最高指導者と、政治の最高指導者が同一人物、一人で二役をするようにいつ頃からか、なってるのです。

映画「リトルブッダ」でも同じようなことをやってましたね。
アメリカ人の普通の家庭にチベット僧がやって来て、ここの子供が、高僧の生まれ変わりなのではないか?と言って彼をチベットに連れていき、最終選考をするのです。

仏教一般がそうなのか、チベット仏教だけか、よくわかりませんけど、「輪廻転生」を彼らは信じているのですね。

たまきは観てて思ったんだけど、人々の暮らしぶりは、恐らく1千年前からさほど変わってないのです。
ほとんどの人が教育を受けていない、農業か牧畜に従事している人達で、先進国がどんどん工業化したり、科学やテクノロジーの発達著しい中で、この国はまるで、ある意味天国のような理想郷なのです。
だけど、ダライラマ14世を見てもわかるように、本当は知識(特に西洋の)に飢えているのですよ、知的な人達は。
勿論、こういう平和的な、ミミズすら、「貴方の両親の生まれ変わりかもしれない」と言って殺さない、という生き方はある意味理想ではあるけど、ここに一つ、大きな問題がある、とたまきは思った。
それは、人間には他の動物にない「大脳」という、極めて特殊な、神からの贈り物のような優れた器官があるので、宗教を中心にした精神世界を頼りにして生きるのも、限界があるのじゃないか?と。
知識、というものは、人類だけが得られる、最も大きな快楽なのに、それを享受しないで生きるのは、しんどくない?と思うのです。

それに、宗教の力だけで国の平和を守る、という考え、方法にも
限界がありますよね。
中国共産党の侵略に対しても、一方的な虐殺のように実際なってしまったわけだから、こんな理想郷が変わっていくのは寂しいけど、やはり近代化は必要なのでは?と思いました。
人は理想だけでは生きていけません、悲しいけど。

そう思いながら観てると、ダライラマ14世がハインリヒの授業、というか友情に夢中になったのもとても納得できて、微笑ましかった。
あれが人間なんですよね。
宗教的なことに身を捧げてはいても、映画やスケート、科学、物理、他国の言語を通したニュースの受信、そういったものに、彼は飢えきっていた、という感じでした。
とても自然な反応、正常に発達した子供の、素直な反応なのだ、という感じ。
たまきだって、ああいう国に生まれついたら、我を忘れて夢中になるでしょうね、外国からの知識に。

片や、ハインリヒの方は、その進んだ文明の最先端のような所に
いたわけなので(オーストリアがドイツに併合されてからは特に?)、その進んだ文明の恩恵に浴してもいるし、また、その結果のマイナス面も人一倍感じていたことでしょう。
チベットに来てからは、そこの自然の美しさと平和な生活に、すっかり魅せられて、多くの人を死に追いやったドイツのことを、深く反省、というか非難する気持ちになってるのです。

"The West meets the East"だ!
と映画を観てて最初は思ったけど、単に西洋文化と東洋文化の出会い、以上の違いがあった。
映画「ラストエンペラー」のことも思い出しましたよ。
やはりあれも、国の最高位の人と、一人の家庭教師(イギリス人)との友情が描かれていた。
動乱の最中、国の最高位の人の命が危険に晒される、そして家庭教師が、他国への脱出を勧めても、敢えて国に留まる話でした。

ダライラマ14世は、1959年にインドへ亡命し、ダラムサラに樹立された中央チベット行政府で、チベットの国家元首を務めていて、世界中に散らばったチベット民族に対して、政教両面で指導的立場にある、と見做されているそうです。
そうすると、現在、チベットという国は存在するのかしないのか、それまでチベットだった地域は、今は中国に統合されてしまっているのか、よくわかりません、たまきには。
でもダライラマ14世は、チベット仏教に興味のある著名人達の支持を得て、ノーベル平和賞を受賞し、その為国際的影響力はますます大きくなっているらしい。

ところで、ハインリヒは最初、子供は欲しくない、と言って妻を困らせていたけど、いざ長男が生まれたことがわかると、まだ見ぬ我が子(男の子)を熱烈に愛するようになって、しょっちゅう手紙を書くのです。
子供は、母親に早く父親のことは忘れるように、と言われていたせいか、返事も書かず、やっと1度だけ書いたか、と思うと、「父親でもない人からの手紙は欲しくない。もう手紙をよこさないで」なんて書いてる。
でも本当は、この子は父親が大好きで(手紙の文面から、好きになったのかも)、心の中ではとても恋しがっているのですよ。
この父子の関係が、なんとも言えずに心温まる話で、観ててなごみます。

あのね、たまきは思ったんだけど、知的な親というのは、子供にとっても魅力的なんですね。
未知の、あらゆることを教えてくれ、特にこのハインリヒは有名な登山家だから、登山にも連れて行ってくれたりして、子供にとってはスーパーヒーローのような存在なのですよ。

子供を持つ人は、知的な人になった方がいい。
というか、なるべきです。
子供が、貴方に夢中になるから。
面白い話や魅力的な話術も持たずに、ただ「パパと同じ、有名学校に行くんだから、勉強しなさい」の一点張りの人じゃだめよ。
嫌われるから。
たまきは、ですね、高校の時、先生が「きょうは1時間自習にする」と言って喜んでたら、他の生徒がわざわざ先生を呼んで、「お話しをして下さい」と頼んで、死ぬほどくだらない話を1時間聞かされた、という苦い経験があります。

大人になってから、ちょっとした雑誌なんか読んでても、「マジックツリーハウス」を読んでも、「世の中にはこんなに面白い話が山ほどあるのに、あのバカ先公は”年かさの人を敬いなさい”だの”お行儀よくしなさい”だのと、脳みそが腐りそうな道徳の
話をして、1時間費やされたことを、未だに恨みに思ってるのっ。

知的に面白い話ができる人は、子供に尊敬されるだけじゃない、女性にもモテること、間違いなし、です。

あのハインリヒの、子供への手紙って、実際の手紙の内容と同じかな?脚本だけかな?
とにかく、感動的に美しい文面、子供としての扱いをしてないんですよ。
一人前の人間、男同士、親しい仲間、そして最も愛する人、として書いてるのね。
あの手紙を読んだら、どんな子供だってこの人を好きになるよ、と思った。
女性だって恋しちゃいますよ。

そしてたまきは思うんだけど、親が子供に話す日常の会話、話って、本人たちが思ってるよりはるかに重要で、頭のいい、将来大きなことができる子になるかどうかは、そこにかかってる、といっても過言ではないくらいです。
実際、常に面白い話(彼の場合は主に登山と、そこでの雄大な自然など)を聞かされて育つ子供は、頭がよくなっちゃうの。
物理的に。脳が大きくなるのよ。
知的に刺激を受け続け、あんまりにも面白いので、「もっと知りたい、もっと聞きたい」という気持ちを抱かせ、不足部分を自分の想像力で補ったり、ということを続けてるうち、物理的に脳の容積が大きくなるし、学校に行っても、以前から知りたかったことが授業で出てくると夢中になって学ぶでしょ?
将来、知性的な人になるのは当然なのです。

ブラピは、この映画でめちゃお茶目で可愛い、少年のような部分と、正反対に、子供を育てる理想的な父親、の両方を見せてくれました。
これって、彼の本質に近いのじゃないか?
と思ったの、たまきだけ?

ブラピの新作映画、「Once upon a time in Hollywood」が、7月
26日からリリースされるそうですが、日本上陸はいつかしら?
今年の秋か冬になりそうですね。
楽しみ!

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