★先週、注文して心待ちにしていたモノが到着。
望遠鏡の高級アイピース、マスヤマ32mmであります。1本34.000円也(自腹)。
★言わずもがなですが、アイピースというのはいわゆる接眼レンズ、望遠鏡の覗き口につけてそこから覗くアレであります。しかしこれ、単なる一枚のレンズではありません。望遠鏡が結ぶ像を歪みなく正確に、そしてできるだけ明るく見るための、光学設計上の工夫が詰まっています。特に天体望遠鏡は「星」という究極の点像を見るため、一番シビアな設計が必要な分野。かれこれ350年に渡る工夫の歴史が詰まったシロモノなのであります。現代のアイピースの多くは6枚程度の高精度レンズを組み合わせたものになっています。
★とはいえ現代では昔の天文学者でも使えなかった性能のいいものでもだいたい一本数千円。一本ウン万円というのはその中でも選りすぐりの超高級品です。なんでこんな贅沢品を買うことにしたかというと…それはこないだの四国旅行がきっかけ。
★こないだの旅行で遊びに行った久万高原天文台で見せてもらった天体がとてもよく見えたのは以前の日記に書きましたが、帰ってからよくよく考えると、空や望遠鏡の性能もさることながら、そこのアイピースが良かったためでもあることに気がつきました。久万の天文台で使っていたのはテレビュー社の「ナグラー」(31mm)という製品。これは知る人ぞ知る究極のアイピースで、なんと1本約9万円。小型のものならちゃんとした望遠鏡一式が全部揃えられるお値段です。
★タイトルはこのメーカーの創業者で世界的に有名なアイピース設計者、ナグラー氏の言葉。そして彼自身の名を冠した「ナグラー」は、まさに現代アイピースの頂点に君臨する超有名(天文ヲタ限定で、だけどw)アイピースなのであります。
★このアイピースのどこがすごいのかというと、その結像性は当然として、なんといってもその視野の広さ。通常のアイピースは覗いた時の視野が50°前後ですが、ナグラーは80°以上…数字だと大したことないように思えるかもしれませんが、これが大違いで、穴を通して覗くのと、宇宙船の窓から頭を突き出して見るのくらいの差があります。
★そしてこの広い視野がもたらすのは快適さだけではありません。久万で見た銀河はとても諧調豊かに見えました。どうも広視野アイピースを覗くと、目の働き方も少し違ってくるようでした。そしてその効果が、あの時の「見え味」につながっているようなのです。
★そのことに思い至ってから、私もナグラーが欲しくてしょうがなくなってきました。こいつがあればウチの空と望遠鏡でも、久万に負けないくらいよく見えるんじゃなかろうか…そんな気がしてきたからです。しかしお値段が…。そしてもう一つ、ナグラーはその特性上アホみたいにでっかくて、ウチの望遠鏡の可動式接眼部につけるにはちょっと大きすぎて使い勝手に影響しそうなのです。うーん、買うべきか否か…。そうやって思い迷っている4月末に、ウチに格好のお客さんが遊びに来てくれました。
★それはNTTの天文台プロデュース部門で活躍しているKさん。JAPOSで毎回会って、お互いよく知っている仲です。彼はまた重度の「アイピースオタク」でもあり、今回もご自慢のアイピースコレクションを持ってきてくれました。
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それがこれ。右端のがテレビュー社の最新作「イーソス」で、ナグラーの上をいくさらにすごいヤツ(笑)。でもナグラーもこのくらいの大きさです。
★そして彼に私の「悩み事(笑)」を相談したところ、「結像性ではやや劣るけれども、負けないくらいよく見えるのがあるよ」と教えてくれたのが上の写真の右から2番目のアイピース、笠井トレーディングの「EWV32mm」でした。現在は絶版となってしまいましたが、実は全く同じ製品が、今では「マスヤマ32mm」として売られているとのこと。値段は3万円台と安く(←感覚崩壊w)、大きさもウチの機構にとって無理がありません。こ、これは…。
★そしてその晩はこれらのアイピースでいろいろ見比べてみました。その結果、確かに「あの時」の見え方がウチでもちゃんと楽しめることが判明。ウチにあるアイピースもそこそこの高級品(ペンタックスXLシリーズ)なのですが、なにしろちょっと古い製品で視界が狭いので、上に書いたような効果のために見え方の違いが歴然としていました。そういうわけで、その晩のうちに購入を決心したという次第。
★届いたのが週末で、月齢と悪天候のためまだこれで見てはいませんが、使うのが楽しみでしょうがありません。
★ふうう…。大長編の日記になってしまいましたが、天文オタクはアイピース一本買うのにも、このくらいのなんだかんだを考えてから決心するものなのであります(笑)。
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