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2019年05月15日20:51

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12モンキース

「12モンキーズ」観ました。
初めてです。
1995年の映画で、テリー・ギリアム監督、ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、ブラッド・ピットその他豪華キャスト。
ブラピは、アカデミー賞助演男優賞にノミネート、そしてゴールデングローブ賞を受賞してます。
これがほぼ、彼の出世作、と言えるのかな?
その前年、’94年の映画「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」でもゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされてるけど、その時は受賞は逃してますね。
それに「セブン」が同じ’95年にリリース、大ヒットしてるから、どの作品でブレイクした、とはっきり言えないかもしれないけど。
主演はブルース・ウィルス、「ダイ・ハード」でたまきも大好きになった人です。


この映画、SFだけど、1回観ただけなので、観たことのある人には、言わなくても察しはつくでしょうけど、何が何だか、さっぱりわかりませんでした。
「大人には楽しい謎解き映画でも、子供にはわからないでしょうね」と、どこやらの感想にありましたけど、たまきは子供ではありませんが・・・・

大体、ですね、たまきは昔からSFものは理解できないことがほとんどです。
「スターウォーズ」シリーズだって、ほんとのこと言うとわからないんですから。
好きですけど。
細かいところがいろいろ、難解で。
サイエンスフィクションて、実際にはあり得ないことを描いているわけなので、ほとんどの部分はミステリー、完全なる解釈、などというものは存在しないのかもしれません。
製作者側には、細かく、「ここはこういうことで、こういうつもりだった」というはっきりしたビジョンがあるのかもしれないけど。
でもそもそも設定自体が、現実には起こりえないことなのでーー
例えば「タイムトラベル」みたいなーー科学的根拠を持って推理することもできない。
だからこそ、想像が広がって、観る人をエキサイティングな世界に引き込めるわけですね。
ファンタジーやSFには、現実の物語にはない面白さ、わくわく感がある。
そして今回、観終わってから、あまりにも何もわからなかったので、検索して数人の方々の「ネタバレ、あらすじ、解説」など読んで、ようやく話全体の流れがつかめました。
サンキュー!

主人公のコールが、未来の2035年から1996年の世界へやってきて、人類がほぼ全滅状態になる原因となったビールスをばら撒く男を射殺しようとする、ラスト近く。
でもそれをやってしまったら、歴史が変わってしまうでしょ?
昔から、SFで最も多く問題にされる点の一つかな?
歴史を変えてもいいのか?ということ。
何かのSF小説では、「時間パトロール隊」(だったかな?)という、起こった事実を勝手に変える人がいないように、見張ってる人達がいるんです。
じゃないと、大混乱が起きるからって。
そうでしょうね、確かに。
それやったら、ありとあらゆる国の人達が、昔の自国対敵国の戦場にタイムトラベルして、現代の武器を使って全て勝利させることだって可能になる。
どんなに悲惨なことでも、そしてタイムトラベルが可能になっても、歴史を変えることはできないし、してはいけないのでしょうね。
例え、壊滅状態になった人類を救う為であっても。


ところでこの映画は、超科学的な未来の話であるのに、変にヨハネの黙示録やカサンドラコンプレックス(別名カサンドラメタファー、カサンドラシンドローム等)なんていう象徴的な言葉が出てきて、それがこの映画の重要なテーマの一つになってるんですね。
面白いです。
大昔からの言い伝えや思想、宗教的概念等と、最も進んだ文明が密接に関係している物語の構成というのは、秀作に共通してよく使われているように思います。

これで急に、グッと話がわかりやすく、重みと格式のある内容に感じさせてくれる、という感じ。

そして、テーマの一つに環境問題もあるんですね。
これが、人類を滅ぼすだろうと考える人がいる、という。
実はたまきもそれをテーマにした歌詞を作って、坂本龍一の曲に合わせて歌ったことがあります。
核戦争によって地球の汚染が破滅的に広がり、人類が住めなくなった為、新たに住む星を探して移住する、という話。
その歌詞にも、キリスト教の概念が生きてます。
地球から新しい星へ、と向かう船が、「ノアの箱舟号」というのです。
そこへ使わされる最初の移住者10組は、若いアベックばかりで、彼ら(と言うか、人類全て)は地球という楽園から追放された「現代のアダムとイブ」です。
神への敬虔な思いの欠如と、地球に対する「愛の欠如」の結果が、地球という永遠の住処を失うことになった、という深い悔恨と反省の気持ちを持って、新しい星に着いた「アダムとイブ」達は、「同じ過ちを二度と繰り返しません」とその星に誓うのです。

地球とそっくり同じような星を見つけ、畑を耕し、野菜を植えて、大事に育てつつ、環境に負荷をかけない科学の進歩を目指すのです。

ところで、カサンドラコンプレックス、別名カサンドラメタファーというのは、ギリシャ神話からきているのですね。
トロイの王の娘、カサンドラは、アポロに愛され、予言(神託)の能力を与えられるが、アポロの求愛を拒んだ為、アポロによって、彼女の予言を誰も信じない、という罰を与えられた女性。

これを現代の話にして、人類の99%が死に絶える原因となったビールスが撒かれる1996年末。
1%の生き残りの一人、コールがビールスの一部を採取するためにやってきて、(警告する目的で来たわけではなかったけど)ビールスをばら撒く奴がいて、それで人類は滅びることになっている、と言ったら当然ながら誰も信じず、精神病院に入れられるのです。
しかもコールが来たのは、タイムマシンの故障により1990年だった。目的の’96年ではなくて。

その病院で出会うのが、ジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)と医師キャサリン・ライリー(マデリーン・ストウ)なんですね。
キャサリンは、彼を妄想癖、と診断して精神病院に入れたんだけど、次第に彼自身も人類滅亡なんて自分の妄想に過ぎなかったんじゃないか?と思い始めるのです。
未来の世界から、過去に戻った人なら、当然過去の時代に起こったカタストロフィーについて知っているわけだけど、それを全く知らず、信じるわけもない時代の人々に、わかってもらえない、というのは、辛いですよね。
彼は次第に、自分を「妄想癖」の病気、という風に思い込もうとし始め、過去の時代の人々と共に、ビールスで汚染される前のきれいな空気の中で生きたい、と思うようになるのです。
この辺り、話の作り方が抜群にうまいですよね。
コールの、気持ちの流れが、とても説得力がある。
こんな状況で、人はなかなか正気を保つのが難しい、それよりも、ビールスで人類滅亡なんてことを妄想、ということにしてしまう方が楽、じゃないと自分は発狂する、という自衛本能が働いてる、ということでしょうか?

アポロの呪いじゃ〜、という感じ。
正当な警告、予告を誰も信じてくれず、精神病院に入れられる。
そしてかたや、環境汚染が人類を滅ぼす、と警告している環境保護活動家のグループがいるけど、これもカサンドラコンプレックスで、信じない人、否定する人が多い。

ところでブラピがすごいです。
彼にこんなのができるとは、正直言ってたまきは思ってませんでした。
彼はあくまでも正統派、正義の人で、しっかり者、切れ者の役を演じるもの、という印象を持っていたので、これ観て心底驚いた。
信じられないくらい器用な人なんですね。
上手い人、器用な人って、何人か知ってるけど。
チャップリン、メリルストリープ、トム・ハンクス等‥。
でもブラピはそういう人だとは思ってなかったんです。
彼の演じたジェフリー・ゴインズは、精神異常者だし、それもタイトルの「12モンキース」に合わせて、なのか、猿っぽい動き、人間離れした早い動きと弾丸トーク、というかなり難しそうな役を、見事に、しかも彼らしいカッコよさも残して演じてる。
確かに賞を取るだけの演技ですね。

この人がある意味、話のキーになってる。
父親は有名な生物学者で、多くの動物実験をしてる人。
でも彼は父親とは完全に別の考えを持っていて、最終的には父の敵に回るのだけど、ちょっとオツムがプッツンだから、父親は気にも留めてない。
'96年までには、彼は環境保護を謳う団体、「12モンキース」を組織し、そのリーダーになる。
コールは'96年末に、ビールスがばら撒かれ、人類滅亡となったのは、このモンキースの仕業だろう、と目星をつけて2035年の未来から派遣されてきてる、が、実は・・・という話。

だけどね・・・これ言っちゃうとネタバレになってしまいますが、'96年末、人類滅亡となったまさにその日、真犯人を遂に突き止めたコールが、犯人を「ビールスばら撒き大量殺人」状態を食い止めるために射殺しようとし、警官に射殺される、と。
じゃ、'96年に死んだはずのコールが2035年に生きてて、時間を遡り、'96年に来ることってあり得るの?
と思ったけど、まだ子供の彼自身が、空港で射殺される大人のコール、つまり自分自身を見てる・・・「二人」は目が合っちゃう。
'96年当時に生きてたのはあの5歳くらいのコールの方なので、この時、コールは殺されてない、ってことになる。
あの男の子が、1%の生き残り組に入って2035年まで無事生きのび、カタストロフィー後の世界で、'96年末にばら撒かれたビールスの抗体を作る為にビールスのサンプルを取りに行く・・・
つもりが'90年に飛んでしまい、ジェフリー・ゴインズにビールスで人類が滅びる話をし、ジェフリーはその話にヒントを得て「12モンキース」を組織、「環境破壊を止めない人類をビールスで滅ぼし、地球環境を守る」なんてスローガンを掲げる(そこまではっきり示していたか、記憶に定かではありませんが)。
2035年に生きる人達は、ビールスは12モンキースの仕業ではないか?と目星をつけてコールをそこへタイムトラベルさせる・・・

もうここで、「あれ?」と思いませんか?
コールを96年へ送ろうとした時点で、「12モンキース」はビールスをばら撒いた犯人、と見做されている・・・彼らのリーダーの父親は細菌の研究をしてる生物学者だし、ジェフリーがそれを盗んでばら撒くのだ、と考えて。
でもそのジェフリーは、コールから聞いて12モンキースの結成を
考え付いた、と言ってるのです。
1990年に。
その時のコールって、2035年から派遣されてきた人。
「12モンキース」は2035年の時点で、過去に('96年)存在してるけど、それは2035年から派遣されたコールの言葉に触発されてできた団体なわけ。
じゃ、コールがあそこにタイムトラベルしなかったら、そういう団体は存在してないはず。
どっちが先?
という話になりますよね。
コールが'90年に飛んでジェフリーに話したからこそ12モンキースは組織された。
でも2035年からコールがそこへ飛んだのは、12モンキースが手がかりになっていたから・・・・
堂々巡りです。
卵が先か鶏が先か?


あと、タイムマシーンの故障で、'96年に送られるはずが第一次大戦の戦場に送られてしまい、足に弾丸を受けて、一瞬後に '96年に戻ると、ちゃんとその第一次大戦当時に使っていた弾丸が足から摘出される・・・
科学的に、そんなことあり得ない、と思っちゃいますよね。

だけど、正直に告白しますと、たまきは、次か、そのうち書くかもしれない小説かシナリオ(多分後者)のネタに、タイムトラベルで過去の自分自身と何度も会って話す、というストーリーを
ちょっと考えたりしてます。
多分やらないだろうけど。
でももし書くのなら、当然SFになるから、こういう「科学的にあり得ない」話になるわけです。
昔から人々は、こういうある種おとぎ話、というものに夢中になってきてるのですね。
そしてそれが大きい影響を与えて、未来の科学の進歩につながったりもしてる。
昔、ライト兄弟が鳥を見て飛行機の前身となるグライダーを発明した時は、人間が空を飛ぶなんて「おとぎ話のような白昼夢」に過ぎない、と思う大人が多かったはず。

人の想像力ってすごいです。
SFやファンタジーだからこそ実現できるストーリーってある。
観る人に、豊かなイマジネーションを与えてくれ、科学やテクノロジー、物理学などに興味を持つきっかけを与えてくれたりするのですね。
今私達が使っているテクノロジーや科学を別な角度から見直したりもさせてくれる。
現代、現在の現象だけを見ていては見えてこないものが見えたり。
だからたまきは、ファンタジーやSFが、理解するのに難しいのに
好きなんです。
自分で書くのもファンタジーですね、大体。


そうそう。
コールは途中から、女性医師キャサリンを愛するようになり、このまま'96年に留まって、彼女と暮らすのだ、と言い出しますね。
でもそれはできない、と2035年からやってきた仲間に言われる。
では、2035年に戻って、もし彼女が1%の生き残りの中に入っていたら、そこで会うこともできるけど、彼女、年は幾つ?という問題があるぞ!
今30歳くらいとして、39年後には69歳なんですけど。
きゃほほ〜い!
コールは'96年当時5歳くらいだったから、そこから39年経って44歳くらい?
まあ、タイムトラベル間の恋愛は避けた方がよさそうです。
可能になる時代がやってくるとしても。
混乱の極みで、オツムを正常に保つことが難しい、ということになりそうだから。

でもこういう空想って、面白くて止められなくなっちゃいますね。
そしておそらくね、タイムトラベル、そのものは無理でも、似たようなことが近い将来可能になるかもしれない、とも思うのです。
そしたら、人類の世界観、というか人格、思考パターン、考える速度、角度、そういったものが、劇的に今とは異なってくるだろう、という気がします。
現代の、「世間体がね」「結婚適齢期が」どうの、ちゃんと学校行って、普通の人と同じように、目立たないようにして・・・云々。
そういう、現代で当たり前になっている不文律?
常識、社会通念、といったものは、なくなりはしないけど、大きく変化するだろう、と思います。
最近では、「タイム」(原題「In time」)という映画を観ましたけど、これは、近い未来に、細胞を若く保つ方法が発見されて、人の外見の年齢が25歳で止まり、何百年でも生きられるようになる、という話です。
なので、自分の祖父母や両親と並ぶと、本人が25歳以上になってれば、同年代に見えるわけです。
タイムトラベルとは違うけど、まさにSF的な状況でしょ?
そして将来、こういったことはある程度、可能になるでしょうね。


SFって面白い。
人によっては、謎解きの面白さ、というのがあるようですけど、
たまきにとっては、「現代の状況で当たり前になっていることが、ほんの少し状況が変わるだけで、まったく違う意味を持ったり
違うものに見えてくる」なんていう、想像力を生み出してくれる点ですかね?一番惹かれるのは。

頭脳に自信のある方は観てください。
科学、物理、あとミステリーの謎解きが得意な人には、かなり手ごたえのある内容だと思います。
たまきみたいに、そういうもの「ぜ〜んぶダメ」という人は・・
面白かったです。
すごく。

要するに、いろんなことに好奇心の強い人なら楽しめます。
この映画、「SF映画の傑作」と言われているらしい。

ラスト30秒くらいの、飛行機の中のシーンがすごい。
あれは、24年経った今でも誰にも解けない、興味をそそられる大きなミステリーですね。

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