文春オンライン 2018年5月
特別警備2号が発令
(2)ソ・サンドン(25歳・男性・軍人)
国境警備隊に勤務するソ氏は、質問を始める前に「秘密保障はきちんとできますか」と確認を求めた。
──9月9日は北朝鮮の建国記念日だったが、特別な行事や上部からの命令があったか。
「特別警備2号が発令されました。核実験とミサイル発射で、情勢が緊張しているからです。勤務は3組から5組に増え、潜伏勤務だったのが巡察勤務に変わりました」
──ミサイルや核実験をどう思うか。
「核開発は自主国防と思います。核を持てば、プレゼント(経済支援や食糧支援)を贈ってもらえるんじゃないですか」
──トランプ大統領の印象は?
「軍隊内では、戦争の狂信者だと言っています」
──金正恩委員長をどう思うか。祖父・金日成、父・金正日との違いは?(この質問を聞くと、彼はため息をついて数秒間沈黙した)
「必ず答えなければいけないのですか。金日成首領様のときは、とてもよかったそうです。その後は、あまりよくありません。金正恩委員長は、金正日将軍様と似ています。たがを締めすぎています」
──最近、中朝国境では市民たちが渡江(国境の川を渡って脱北すること)しているか。
「あまりにも締めるから(取り締まりが厳しいから)脱北は難しいです。銃殺もするから、容易ではありません。私も、目をつぶって送ってやることはできません」
国境を守る警備隊の兵士は、川を渡って脱北する人々を見逃す代わりに謝礼金を受け取ってきた。それができなくなったので、「来年には除隊するのに、お金がない」とソ氏は言った。
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