いま沖縄では、若い世代の動向に注目が集まっている。アメリカ軍基地に翻弄される苦難を味わってきた戦後世代とは別に、生まれたときから基地と共存してきた世代ゆえの葛藤を抱えた若者たち。辺野古新基地建設の是非を問う県民投票にこぎ着けた彼らの胸中を追いながら、苦悩する沖縄のいまを探る。
【第1回】沖縄の彼女が波風立てても世に伝えたいこと(2019年1月30日配信)【第2回】沖縄の若者が「戦後世代」との間に見る高い壁(2019年2月3日配信)
2019年が明けて10日ほど経ったときのことだ。
アメリカ軍新基地建設のための辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票の署名集めに奔走していた「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表(27歳)から、若手の主要メンバーにラインのメッセージが届いた。
「ハンガー・ストライキをやろうと思うんだよね」
メッセージを受け取ったひとりである大城章乃さん(27歳)は、LINEで流れてきた言葉に目を疑った。そこまでやらないと、いけないものなのか。
■迫られた決断
疑問をぶつけてみた。
「それがいま、私たちができることでいちばん効果があること?」
元山さんから、すぐに返信がきた。
「だと思う」
彼が一度決めたらいくら説得しても無駄だ。大城さんは、こう答えた。
「だったら、サポートするよ」
リーダーがハンストしなければならないほど、自分たちは追い込まれている。そう感じた。
大城さんは、それまで政治に関わったことはない。那覇市出身で、東京での大学時代は政治とは縁遠いバンド好きの少女だった。大学3年のときにアメリカに留学し、大学を卒業後は奨学金を得てハワイ大学の大学院で社会学を学んだ。
帰国して間もない昨年3月、後輩から県民投票を目指す若者のためのチラシをもらった。気軽に参加した会合だが、主催者の元山さんの話を聞いているうちに、同じ年齢の大学院生が1年間休学してまでやろうと思っていることを応援したいと思った。
元山さんは、アメリカ軍の普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市出身だ。東京の国際基督教大学に通っていたころに、安倍晋三内閣が国会に提出した安全保障関連法案に反対していた若者の組織SEALDs(シールズ)に加わった経験がある。辺野古新基地建設の埋め立ての是非を問う県民投票が、当時、政府と対峙していた翁長雄志前知事の後押しになればと2017年12月に「辺野古」県民投票の会を立ち上げ、昨年4月からは、一橋大学大学院を1年間休学して取り組んでいた。
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