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2019年02月17日04:45

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それほど強くない

ごめん、ごめん。
今朝はあなたと会話したくない。

朝の張り詰めた空気の中、車から降りて私は思う。
ロッカーで着替えながら私は思う。

今朝は本当に会話したくない。

でも。
タイムカードを押すために待つ場所にたどり着くと、数分と待たずして彼はやってくる。

無視できない。
話しかけられて無視できるほど、私は強くない。

彼は会話がすべて疑問形で、内容がすべて自分が過去に遭遇したことばかり。

僕ワンピース見た?
僕自転車乗ってた?
僕買い物行ってた?

僕?僕?僕?

ひとことも、今日は寒いね、とか、今日は仕事忙しいかな?
とか、普通の朝の会話はない。

でも無視できないよ。
それほど強くない。

Iさん。綺麗な年下の女性。彼女も私と同様、彼に好かれている。
ひととおり会話して本当に疲れてくると、私はちょうど出勤してきたIさんにバトンタッチする。
Iさんも困惑するが、正義感が強いので、彼に諭したりする。

そんなんじゃ友達できないよ。
みんな疲れちゃうよ。

だけど彼は聞いていない。


お昼休み。
彼は私の前の席。
また例の会話が始まる。
疲れる!静かに本を読みたいのに。
一度上の人に注意され、彼も本を持ってくるようになった。
ワンピースの単行本。
読むふりをしてるだけ。

人と会話したくて仕方のない22歳の男の子。
外見は好青年なのに、中身を知るとみんな離れていく。
私とIさんは離れられない。
無視できない。
それほど強くない。

脳のある部分が欠落しているのだ。
一生ああなのかも知れない。
それだったら少しでも会話してあげていたい。
心が拒絶しても態度で表せない。


それほど強くない。




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