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2019年02月12日19:33

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東遊雑記・・・

 先日、「東遊雑記」を読み終えました。
 以前少しだけ書きましたが、
 江戸時代の古川古松軒が著した、東北地方と北海道の旅行記です。
 平凡社の東洋文庫に入っていたので、図書館から借りて来ました。
 民俗学者の宮本常一が、特に優れた旅行記として挙げた本の1冊です。

 古松軒は、1726年(享保11年)、
 備中国下道郡新本村(岡山県総社市新本)に生まれました。
 天明3年(1783年)3月末から9月にかけて、
 山陽、九州を巡り、「西遊雑記」を著しています。

 幕府巡見使の随員に採用され、巡見使藤波要人、川口久助、三枝十兵衛に従い
 奥羽地方及び松前を巡った際の記録が、「東遊雑記」です。
 天明8年(1787年)5月6日に江戸を出発し、奥州街道を北上して陸奥国に入り、
 出羽国を通って7月20日松前に到着、8月中旬まで滞在した後、
 陸奥国太平洋側を巡り、水戸街道経由で10月18日江戸に帰着しています。
 現在の地名で言うと、通った主な都市は、
 埼玉県越谷市、茨城県古河市、栃木県宇都宮市、福島県白河市、会津若松市、柳津町、
 郡山市、須賀川市、福島市、山形県米沢市、新庄市、鶴岡市、酒田市、秋田県横手市、
 秋田市、大館市、青森県弘前市、外ヶ浜町、北海道松前町、知内町、青森県青森市、
 三戸町、秋田県鹿角市、岩手県盛岡市、平泉町、一関市、宮城県石巻市、仙台市、白石市、
 福島県いわき市、棚倉町などです。

 巡検使は、江戸幕府の4代将軍徳川家綱の時に制度化されたもので、
 概ね将軍の代替わりの際に各国に派遣されていました。
 「東遊雑記」の巡検内容を読むと、城などには寄らずに、
 巡検場所と定められた、主として神社・仏閣などを見て回ったような印象です。

 名所旧跡を巡るのが目的ではないため、
 金華山など行けずに嘆いている記述もありましたが、
 かつての歌枕などを通ると、古歌を記したり、自分でも短歌を作ったりしています。
 象潟など、どこが良いのか分からないと見たままを書いている所もありました。
 とにかく、旅先で自ら実見、体感したままを記述し、
 学問的に考察しようとする点に特色があります。
 「上方・中国筋」を基準として、その土地の不便性、後進性の程度を批評したり、
 林子平の「三国通覧図説」など他書を批判するなど、
 徹底的な経験主義や現実主義で記していて、
 しかも神秘的世界を完全に否定している点が、素晴らしいと思いました。

 北海道に1か月弱滞在していますが、
 アイヌの風俗などについて、細かく調べて図示しながら記述しています。
 北海道を探検した近藤重蔵は「東遊雑記」を携えて蝦夷地を旅し、
 とても良く述べられていると感心したようです。
 一方、北海道の名付け親である松浦武四郎は、
 度々林子平「三国通覧図説」を批判している点について、
 巡見使という公的身分での表面的な観察のみで、
 訳知り顔に後世の人心を惑わすものだとして、批判していますし、
 古松軒が久保田城下について亀田藩と比較しても草葺が多いと
 後進性を指摘していることについて、
 菅江真澄は「久保田落穂」で、文章は後世に残るものだから、
 感情的に書くべきではないと批判しているとの事です。

 この東遊雑記は、行程の毎日が記述されていますので、
 地図を見ながら読み進めましたが、自分が旅をしているような気分になりました。
 特に行った事がある所などは、江戸時代にはどのような所だったのかとの興味もあり、
 とにかく読むのが楽しい本でした。
 また、当時の人の感性も理解出来ました。
 江戸時代の人がどのような感覚を持っていたのか、
 何点か面白い話があるので、日記のネタがない日にでも、
 追々書こうかなぁと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。


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