私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
事務所で打ち合わせ。
川口
「君は銀行や役所で書類を書くのは苦手かな」
野田
「得意というわけではないけど、普通にできます」
川口
「ときどき、郵便振込とか、書類記入をお願いしたいんだけど」
野田
「履歴書、書くのはたいへんでした。だけど見本に合わせて、適当に記入しました。だから、できます。ある会社で採用されたんですけど。会社の方針について行けなくなって、辞めたんです」
川口
「御免よ。嫌な過去を思い出させてしまって」
野田
「良いですよ。合わない会社もあるんだ。そんなこと、気にしてないです」
川口
「事務的な仕事は苦手かい」
野田
「パソコンぐらいはできますよ。ワードやエクセルなら大丈夫」
川口
「名刺整理をお願いできますか」
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