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2019年01月02日07:53

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1983年ジャマイカ旅日記ー3

 59番のバスに乗る。ボブ・マーリイのワンラブ・コンサートのあったナショナル・スタジアムそばの安宿からダウンタウンに向う。バスの車掌だけは釣り銭をごまかさない。ジャマイカ人は車を停める時、手を斜め下に伸ばす。これがなかなか格好いい。むかしオートバイ試験の時、手信号があったっけ。停止の合図が同じだ。多分どっちのルーツもイギリスかも知れない。このバスの車掌は中年の太ったおばさんだ。肉厚の逞しい腕でキップを切る。車内の揉事もひと睨みで静まりそうな貫禄だ。バスは住宅街を走る。通りは、金持ちたちの豪邸が建ち並ぶビバリーヒルズという細長い丘の下を走るマウンテン・ヴュー通り。今日は町内清掃の日らしく、あちこちで女の人たちがジャマイカ風の熊手でゴミを集めている。

科学工業のないこの国は燃えないゴミはまず少ない。出たとしても、誰かがすぐ拾ってしまう。果物を買いに近くを歩いていた時、ゴミ捨て場に壊れたピンクの旅行カバンを見つける。片面の一部がとれて中が見えた。当然カラのようだった。帰り道、それを大事に抱えている男とすれちがった。ビールの空き瓶も車から放り投げるようなことはしない。ジャマイカでショッキングな光景のひとつは事故車の残骸だ。まるで巨大な猫がしゃぶり尽したように、あらゆる部品が盗みとられて、キレイにシャーシーだけがひっくり返っていたり、壁に激突した姿勢で放置されていた、これらの奇妙なオブジェをのぞけば、ジャマイカは清潔な国とも言える。かき集めたゴミは、その場で燃やせば万事終了だ。

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