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2019年01月01日05:24

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1983年ジャマイカ旅日記ー2

キングストン

 ガツン。アップタウンの商店が集まる道沿いに、車の騒音に混じって大きな音が響いた。すこし気取った山の手のグレゴリー・アイザックスの店を出て、すぐ脇の売店で、僕はアイスクリームコーンを買っていた。男も女も足を止めて、クスクス笑っている。透明な空気を通り抜け、真昼の太陽がギラギラ照りつける道端で、大きな石を1人のラスタマンが頭上にかかげて、目の前のコンクリートの壁面に向かい怒声をあげている。まわりの建物からもいろんな顔がのぞく。「おまえは・・・」「ちくしょう・・・」・・・。切れ切れに言葉が流れてくる。ガツン。ものすごい勢いで壁に投げとばされた岩が彼の足元にゴロゴロ転がる。珍しいショーでも見るような眼で皆ニヤニヤして立ち止まっている。汗とほこり、破れ目から黒い肌が光る濃紺のTシャツと黒ズボンのラスタマンのドレッドが、大石を投げるたびに華麗に空中を舞う。もう一度放り投げると、顔を歪め、大口を開けて罵声をあげていた彼の顔は別人のようにスッキリして、今迄の出来事が嘘のような顔付で、スタスタと歩き去ってしまった。町の一角のちょっとした見世物は終わり、熱風が通りを吹き抜ける。

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