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2019年01月01日05:00

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YouTube Premiumオリジナルドラマ「オリジン」感想

2018年12月07日のツイート

YouTube Premiumオリジナルドラマ「オリジン」、8話まで観て、まあ面白くないことはないけど、つらいところがある。最初に思ったのは、SFなのにSFがしっかりしてない。宇宙船は、エレベーターが通る軸を中心に、10個のリング状の区画が回っている形なのだが、このリングが回っていることに意味がない。

宇宙船の形はモロに2001年宇宙の旅のディスカバリー号を軸に同作のリング状の宇宙ステーションが10個連結しているという分かりやすい形をしているのに、その形が遠心力で擬似重力を発生させるためでもなんでもなく、なんのことはなく能天気なスペースオペラのように適当に人工重力が働いているという。

これが実に頭が悪そうに見えてしまう。ほんと適当にそれっぽい形の宇宙船デザインしときましたー的なやっつけ感。内部はただの真ん中にエレベーターのある筒状の10階建ての建物と同じ。これが1階ごとに逆回転しているのが無意味さに拍車をかけている。デザインの意図が遊園地のアトラクションと同じ。

ちょっときつい書き方になっていると思うが、まあまあのショックだったので。だって最初に目覚めたシュンが船内をさまよって、窓から宇宙船の全貌を見たときに「リングの中心方向が下だった」ので。それを見せられたとき、もう脱力してしまって1話だったけど早々に離脱しようかと思ったもの。

さらに、「ああ…リングの中心方向が下なのね…分かったよ、そういうことにして観ていきましょ…」と思って観ていったら、いつの間にか「リングの中心軸に上下に移動するエレベーターがあって、結局上下はそれを基準にしたものになってた」という。分かりますか?図で描けば一発で分かると思うけど。

ほんと「ずさん」。適当すぎ。…まあいいよ別にもう…SF的にはその程度の作りなのね…分かりました、そのつもりで観ていきましょ… 別にSFマニアでもなんでもないけどさぁ、世間一般にとっちゃSFなんて別にこんな不思議の国のアリス的なノリでいいってことなのかよ…ってガックリきちゃいました。

まあ「安いドラマだなー」とは思うよね。こんな感じだとやっぱり。まあいいんでしょうね、安いって思われたって別に。「ドラマが安くて何が悪い、ドラマというのは安いものだ、安く気軽に楽しめる、ツッコミどころがあってつっこんで楽しむご愛嬌、それがドラマというものだ」ってことでしょうね。

もう、そういう「安いツッコミどころ」は常に満載ですね、オリジンというドラマは。観ていくのだったらその都度深く考えず流すようにしていくしかない…w はい、それがまず第一につらいところ。次に、今度は構造的につらいところがある。連続ドラマのフォーマット的なものね。

このドラマの話の中心軸は、閉ざされた宇宙船内に取り残された数名の男女が、その過酷な状況や人間をのっとる正体不明の生物の脅威と戦いながらサバイバルしていくこと、なのだが…この中心軸の話の進行はおざなりに、登場人物一人ひとりの「地球でどう生きていたか」をいちいち見せられるのがつらい。

人物の過去がどうだったかとか、はっきり言って興味ないから。そうじゃなくて「こんな宇宙船内で、これからどうなっちゃうの?」これが興味の中心だから。人物の過去とか長々とやったところでそんなものは単なる「人物紹介」。 …という人物でした。…で、だから?ってなるだけですよ。

要するに、本来ならば人物設定はサラッと済まして、ではこういう設定の人物が問題にどう立ち向かっていくのか? が話の筋というものだから。で、その話の筋、本筋の中で、どういう人間かを描いていかないといけない。同時進行しないといけないのだよ。人物を深めていくのと話を進めるのは。

それを、人物を深めることと、話の本筋を、分けちゃってたら話にならない。また料理に例えるけど、カレーライスをさぁ、カレーとライスで分けて食べますか?ってことだよ。せめて、かわりばんこならあり得る。いや、あり得るか? カレーとごはん一緒に口に入れないとか、やっぱりあり得ないでしょ。

それをやってるんだよ。カレーだけをたっぷり延々食わせて、カレーの味はこんなのでした。はい一区切り。ではごはんを食べましょう。ごはん、少し食べてください。では今度は違うカレーです。たっぷり食べましょう。はい、カレーのルー、お腹いっぱい食べましたね。ではごはんをまた少し食べましょう。

カレーの例えはいいとして、せめて「この人物の過去が知りたいなあ」って気持ちにさせてからでしょ。そんな気持ちになるように描けてないから。だってこの制作者、人物の魅力はそれぞれの「回想で」描くつもりで作ってるから。だからそれは構造的にまずいんだよって言ってるのですよ。

また違う例えをすると、「ドラゴンボールのアニメの引き伸ばし」と同じことをやってる。悟空とべジータのにらみ合いですよ。にらみ合ったままの二人を、緊迫のBGMと共にたっぷり交互に映す。にらみ合ったまま動かない。これは話が進まないってことです。で、何をやってるかと言ったら「回想」ですよ。

「過去はどうだったか」をやる。いや、本当はアニメの制作者も話を進めたい。でも原作ができてないから進められないw もう苦肉の策で、こうするしかない。しかし、策としてはしっかり成り立つ。ちゃんと間が持つ。つらいのは視聴者。間が持ってるって、でもこれは視聴者つらいですよ。かわいそう。

オリジンは要するに「そういうフォーマットでやる」って決めてやってるんですよ。そうやってたっぷりドラマ10話分の時間が稼げるのでね。何人もいる人物の人数分の回想で時間稼ぎまくり。別々の他人の人生だから人物同士の関連持たせるとか面倒なことせずに描けるのもいい。

だから本筋がスカスカなんですよね。人物一人ひとりの過去をじっくり描くことがメインになっちゃってる。そんなこといくらやっても個々の小品を並べているだけ。個々の人物紹介をやってるだけで本筋にはほとんど関係なかった。

ああ、この人はそういういきさつでこの宇宙船に乗ることになったのね。それだけ。その人の過去と宇宙船で起きたことが関係ないものであれば、本当にそれはただの人物紹介でしかない。まずはちゃんと1本のストーリーを描いて、そういうのはスピンオフでやれよ、ってこと。

それは分かるでしょ。あるキャラでスピンオフを作るのが成り立つのは、そのキャラが人気だから、それでさらにもう一儲けできるからでしょ。そのキャラがそこまで人気になったのは、ちゃんと1本の作品を作って、その作品がいいものとして売れて、その中で活躍したキャラで、客に好かれたからでしょ。

それを人物紹介の段階でやるのは無理がある。なんで興味ないキャラの興味ない過去を見せられないといけないの?ってなるでしょ。そういうことが普通にできるのは主人公だけ。主人公の人生はストーリーにとって本筋になるものだから、そいつの過去から始まってもそこが話の始まりってことになるからね。

適当なもののつぎはぎの寄せ集め感が否めない。SFは適当、本筋のサスペンスホラーは適当、個々の人物の過去はそれぞれ単品みたいになっちゃってて、面白いのもあったけど大抵たいして…って感じ。ぜんぜん観たいドラマではなかったなー。

だってエイリアンみたいなの期待しちゃうじゃん。地球の世界観はブレードランナーみたいだし。そういうパクりみたいなのはいいんだよ。好きなんだから。そういうのが観たいんだから。だからちゃんとやれよと。ちゃんとやってくれるなら、ちゃんと面白がるよこっちも。

SFホラーの見た目だけ適当にパクって、回想で時間稼ぎしたような作りで、悲しくなっちゃいました。こんなドラマでYoutubeプレミアムを引っ張ろうとか考えてるとしたらつらいんじゃないですかね。そうじゃなくて適当なタマのひとつなら、まあいいんじゃないですか。適当なタマのひとつ、適当なドラマ。

あともうひとつ。群像劇が適当。ぜんぜん群像劇描けてないから。だって個々の過去を別々にやってるだけだからね。そういうのは群像劇ではない。単像劇×人数分、とでも言うのか。構造的な問題なのか、人物どうしが絡み合うのを、避けてるから。一人ひとりの回想描くのに一生懸命だからねー。

ほんと、お前の過去なんかどうでもいいよ!今、目の前にいる人間たちとその回想にかける労力使って絡めや!(お互いぜんぜん深入りしようとしない)エイリアン、今襲ってこいよ!(ぜんぜん襲ってこない、だったら何も怖くないじゃん、仲よく目的地まで行ったら?)演出はビックリさせるだけのやつ。

私はそんな風に感じましたけど、別に普通の人が何も考えずに観たら楽しめるかもです。


もう少し言わせて。回想を「Aさんが自分の過去をBさんに話す」とか「Aさんの記憶をBさんが見る」とか、そういうことでドラマに描かれる、というものにしようよ。そいつしか知らないそいつの過去のシーンが勝手に始まるだけ、って、どんだけ人物閉ざされてるの。どんだけ人物どうし切り離されてるの。

これは人物が客に向かって独りごと言ってるのと同じで、何もドラマにならない。人物どうしが絡み合わなきゃドラマにならない。これってもしかして制作者の性格なのかって思っちゃう。なんか素人くさいよなーやってることが。回想を入れまくるとこんなに酷いことになるという悪例を見させてもらった感。


最終話まで観ました。オチはよかったよ。それまでにけっこう伏線があったのも分かった。テーマも分かった。そういうことが表現したかったのね。デビルマン的な。だから、途中ダラダラやりすぎってこと。

こんな風にするんだったら真相なんて隠したってしょうがないんだよね。隠したままで進展がないんだから。だから、デビルマンが誰かを隠すより、デビルマンの視点でその気持ちをじっくりたっぷり描いてった方がずっと面白いじゃん。

だからデビルマンが誰かはすぐ(客には)バラすことになるわけだけど、隠すよりもっと面白くなるわけだから、ぜんぜんそうするべきだったね。不動明がデビルマンってことは、誰も知らない知られちゃいけないんだけど、観てる客にはバラさないと話にならんでしょ。そういうことですよ。

私がデビルマン的なの描きたいわけじゃないからね。制作者さん、あなたがそれを描きたいんだからね。最終話観たら分かりますよ、ああそういうことが描きたいんじゃん、描きたかったんじゃんあなた、って。だったらダラダラどうでもいい脇役の過去話で時間潰してる場合じゃなかったね、もったいないね。
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