この作品は全編にブラックユーモアが散りばめられているが、そのピークは病院前のシーンだろう。『安楽死デー』と称して、病院の前の道路に次々と入院患者が集められる。車椅子に座った老人や、チューブに繋がりベッドで寝たきりの患者などが連れて来られる。看護士や医者は、患者を放置するとそそくさと脇に避難。固唾を飲んで地平線の彼方に目を凝らす。
やがて道路の彼方にフランケンシュタインが駆るモンスター号が現れた。危うし患者たち。
ところが、患者たちの直前で急ハンドルを切ったモンスター号は、病院脇の道に飛び込むと、そこで様子を伺っていた医者や看護士たちを次々と跳ね飛ばした。
まぁそんな具合に、５組のレーサー達はあちこちで人を轢き殺しながら走るのだが、最終的に、カラミティ・ジェーンは反対派が仕掛けた地雷を踏んで爆死。
ナチスの恋人もハリボテで作ったトンネルに飛び込み、その先の崖から転落死。
ネロは逃げ遅れた子供を轢き殺そうとして、やはり反対派が仕掛けた爆弾で死亡。
マシンガン・ジョーはフランケンシュタインとデッドヒートの末、手榴弾を放り込まれて爆死。
結局はフランケンシュタインが優勝するんだけど、実は彼もこのレースの反対派なのであった。優勝を狙っていたのは、勝者は大統領から直接祝福の言葉をかけられるので、そのチャンスに手榴弾で自爆し、大統領を暗殺しようと画策していたのであった。
単なるＢ級アクションと思って油断していたら、なかなかアメリカの現代社会の矛盾や問題点に鋭く踏み込んでいるのだ。
世界大戦の後にアメリカは独裁国家となり、首都は北京になり、ナチスが市民権を得ている歪んだ世界。圧政による民衆の不満の矛先を、刺激的な娯楽によって逸らしていたのであった。
今の時代にも通じる部分はあるし、頭空っぽにしてバカになって観てると、何気にそうした矛盾点とか、現代社会の恐ろしさみたいのがジワリと染みて来るのである。
『Ｂ級』とはお金をかけてないってだけであり、『だからつまらない』と言う訳では決して無い。ハリウッドで500本もの映画に携わりつつも一度も赤字になったことがないというロジャー・コーマンを、人は『Ｂ級映画の帝王』と呼ぶが、超一流の映画人だったんだなと改めて痛感する。
デスレース2000年
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