異例で異様な知事選だと感じた人も多かったに違いない。
翁長雄志前知事の急逝で選挙が大幅に早まった。超短期決戦となり選挙自体が見えづらかったし、最後は台風の直撃も受け、日程を切り上げる形で選挙戦を終える展開となった。異例の連続が結果にどう影響を及ぼすかは見通せない。
「異様さ」も際立った。
本紙などの調査に対し、知事選で「基地問題」を重視すると答えた有権者が多数を占めた。辺野古新基地建設問題が焦点化した4年前と同様、「経済の活性化」を上回った。
今回も辺野古問題の是非が最大の争点である。新基地建設を推進する安倍政権・与党本部が死に物狂いで、テコ入れを図ってきたのも、このことを証明している。選挙結果が、辺野古新基地計画に重大な影響を及ぼすことになるからだ。
それなのに、選挙戦で辺野古の是非について議論が深まることはなかった。異様さはここに尽きる。
翁長前知事の後継の玉城デニー氏(58)は新基地に反対を明言した。だが、先の展望は見えなかった。政府・与党から全面支援を受ける佐喜真淳氏(54)は、普天間飛行場の早期返還は訴えた。だが、辺野古については最後まで賛否を明らかにせず、選挙戦を終えた。
1996年の普天間返還の日米合意から知事選は6回目となる。普天間の移設について候補者の姿勢が明示されずに選択が迫られるのは、初めてである。
結果によっては新基地の行方を決定づける選挙で、深められるべきことが深められず、1票を投じる判断材料が十分に提供されなかったのは残念である。
辺野古についての問いは基地問題にとどまらない。沖縄と政府の関係性はどうなっていくのか。憲法が規定する地方自治とは何か、地方と中央の関係はどうあるべきなのか-。選挙結果は、さまざまな分野に波及することになるだろう。
沖縄の将来を決定する岐路ともなる知事選である。一人一人が未来と、次の世代に大きな責任のある1票であることを胸に、投票に臨んでもらいたい。(沖縄タイムス政経部長 宮城栄作)
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