2018.12.15 於:みなとみらいホール
(前半)
ベートーヴェン
序曲<コリオラン> op.62
(後半)
ベートーヴェン
交響曲第9番 ニ短調 op.125<合唱>
指揮:井上 道義
ソプラノ:菅 英三子
アルト:福原 寿美枝
テノール:錦織 健
バリトン:青山 貴
合唱:東京音楽大学
コンマス:木野 雅之
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
遂にこの時期になってしまいました。今年もあと2週間です。
色々と忙しく、風邪をひいたりで体調万全ではありませんでしたが、頑張って行ってきました。
今回の指揮は私の偏った演奏会エントリであまりお目にかかる事のなかった井上道義さん。かなり前から頭がツルツルで怖そうな顔、のイメージがあり、どんな演奏になるのかとても楽しみでした。
みなとみらいの定期演奏会では毎回開演40分前から識者によるその日の聴き所の解説がありますが、この日、解説にあたった齋藤弘美氏が曲目の解説部分で井上さんを舞台に招き入れると(開演の随分前で)「こんなにお客さんが少ないところで話すのは止めていっぱいになってから面白い話をしましょう」と、プレトークを中断してしまうハプニング。
開演の直前に続きがあるのかと思いましたが、途中休憩の後(第九の前)にお話されるとのアナウンス。なんだか面白くなってきました。
前半は大曲の前によく演奏される序曲ものの「コリオラン」。時間は10分に満たない曲ですが、その中に起伏のある劇性が凝縮されていてなかなか重い作品です。
井上さんは、この曲をギリギリの緊張感とキレキレのボウイング指示で目の覚めるような演奏に仕立てます。タメから切り出す際の音圧、一気通貫な流れ、絶望的な結末、どれも綿密で明快な演奏で後半への期待が高まります。
10分聴いて、15分の休憩、となると、ビールでも飲みたくなりますが、体調や後半の長さを考えて自粛です。
後半は、プレトークの続きから。印象的だったのは(井上さん自身)第九をあまりたくさんやりたくない、という告白から始まった事。終生、新しい事に挑戦し続けたベートーベンに「年末恒例のオケの餅代公演」とか「何百回も演奏してチャレンジが薄らいだ演奏」と見られるのが嫌だという理由。
(自分は72歳だが)「黄昏の演奏はしない」という強い意思表示をしてプレトークは終了。ハゲ頭といかつい顔に似合わず自分の思いをさらけ出す人間味のある素敵な指揮者だなと思いました。
演奏の方は、オーソドックスな流れをベースに、楽器毎のアクセントを強調したリズミカルなもの。特にパーカッションの演出やティンパニ強打は曲の緊張感を盛り上げていました。唯一大好きな第三楽章が少し早めで、どこまでも平坦に拡がる安息の時間が短めに終わってしまったのが残念でした。
ソリスト陣も充実。青山さん(バリトン)の声量がかなりでしたが、テノールの錦織さんのよく通る美声も健在で、ソプラノ、アルトを含めた重唱は息をのむ美しさでした。
そして合唱!東京音大にブラボー!です。
井上さんの演奏は確かに黄昏ではありませんでしたが、合唱を活かすという部分では、若さや生の渇望(畏敬と称賛?かな)に満ちているようで、若いコーラスの魅力をこれまでになく最大限に引き出しているように感じました。とにかくフレッシュ!これはこれでアリです。
素晴らしい演奏、独唱、合唱に感謝。
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