mixiユーザー(id:5875012)

2018年10月14日21:44

30 view

ドゥーチュィムニー「翁長雄志知事死去。今だからこそ知っておくべき「本土に届かない辺野古問題の誤解」」

 翁長知事がいよいよ公約を果たし、辺野古埋め立ての承認撤回を表明しました。

 しかし8日の午後、膵臓癌による辞職の可能性が発表された後、沖縄県浦添市内の病院で死去されました。


 任期満了に伴う知事選が11月18日に予定されていたが、今後前倒しされる見通しとなり、沖縄はますます混沌を極めるであろうことが予想されます。

 沖縄に住んで2年間取材してわかったことは、どうやら情報が沖縄から日本本土(内地)に届く時に、ねじれや誤解が生じているという問題でした。

 今回は、米軍の新基地建設に「容認」「反対」という結論は抜きにして、できるだけ中立的な視点で事実を積み上げ「辺野古」「高江」にまつわる初歩的な誤解について考えてみようと思います。

◆「沖縄の民意」とは何なのか?

 この問題の契機は1995年の米兵による少女暴行事件に遡ります。

 1995年(平成7年)9月4日に沖縄県に駐留するアメリカ海兵隊員2名とアメリカ海軍軍人1名の計3名が、12歳の女子小学生を拉致し、集団強姦した強姦致傷および逮捕監禁事件です。しかしこのような凶悪な事件ですら、日米地位協定の取り決めによって犯人の身柄が拘束できませんでした。

 この理不尽さに、戦後、米兵の横暴に耐え続けてきた沖縄県民たちの怒りは燃え盛り、米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しの機運は高まりました。

 翌96年には「基地の整理縮小と日米地位協定の見直し」求める沖縄県民投票が行われ、総投票者数の89%が賛成票を投じました。

 基地反対の民意の高まりを受け日米両政府が沖縄県の米軍基地の整理縮小を検討を開始し、96年12月2日に合意に達しました(SACO合意)。

 しかし基地の整理縮小のはずのこのSACO合意の中に、普天間基地は「辺野古」へ、そして北部訓練場返還は「高江」集落を囲むヘリパッドの建設が条件と盛り込まれました。基地縮小と言いつつ基地機能の強化ではないか? その疑念はいまだに残っています。

 普天間の辺野古代替案について、地元名護市では1997年に市民投票が行われ、54%の市民の「反対」で地元名護の民意は示されました。

 ところが当時の名護市長、比嘉鉄也氏が上京し当時の橋本総理に辺野古への受け入れを約束。直後に市長を辞任するという謎の行動に出ました。

 今に続く混乱が始まった瞬間でした。

◆「オール沖縄」とは何なのか?

 そもそも「オール沖縄」の正式名称をご存知でしょうか?

「辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議」であり、その略称としての「オール沖縄」です。ここに内地の方の多くが誤解している部分があります。

 それは例えば、「オール沖縄の主張って全基地撤去なんでしょ?お花畑だよね?」と言った無知に基づくものだったり、「翁長知事って中国の手先じゃないの??」と言ったまったく根拠のないものだったりします。

 そもそもオール沖縄の主張は、2013年に県内全市町村で合意し安倍総理に提出された建白書の内容に基づいています。

1.オスプレイの配備を直ちに撤回すること。及び今年7月までに配備されるとしている12機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること。

2.米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。(辺野古新基地中止)

 オスプレイの配備撤回と、普天間の県内(辺野古新基地)移設反対。この2点でまとまった集合体だということが重要です。「全基地撤去」は苛烈な沖縄戦を経験した県民の願いではあるものの、オール沖縄の主張というわけではありません。

 翁長知事は元自民党員であり保守の人間です。日米安保の重要性を否定していません。そんな保守の人脈から共産党まで幅広い人脈が「イデオロギーよりアイデンティティ」とまとまったのがオール沖縄です。全基地撤去論者も、海兵隊撤去論者も、いろんな考えの人々がこの2点で同席している状態なのです。

 ちなみに県知事をはじめ、県議会ではオール沖縄は与党の立場にあります。

 国政レベルでも選挙区ベースで衆参合わせて、6人中5人がオール沖縄の新基地反対議員が当選している現状です。

 もしもオール沖縄が全基地撤去を主張していれば、内地に跋扈する「中国攻めてくるおじさん」からの「お花畑」などの声も受け止めなければなりませんが、普天間基地の沖縄県内に占める割合は全米軍基地の6%です。

 辺野古の新基地はその6%の移設の話をしているのに、あたかも全米軍基地撤去と主張しているかのようにミスリードし、中国が攻めてくる論と結びつけるのは印象操作と言わざるを得ないでしょう。

 普天間を県内から無くしたところで、その他94%の米軍基地は沖縄に駐留し続けます。アジア最大の空軍基地である嘉手納や、海軍基地のホワイトビーチもあります。沖縄県民はすでに国防のために限界まで譲歩していると言えるのではないでしょうか?

◆辺野古、キャンプシュワブは海兵隊の基地

 海兵隊というと「海」という文字が入っているためよく海軍の下部組織だと勘違いされていますが、米軍は公式に4軍で構成されています。

 陸軍、空軍、海軍、海兵隊は基本的に別の組織です。

 その中で海兵隊は映画『プライベートライアン』に出てくるような上陸のための部隊であり、残念ながら人柱にされ、使い捨てにされる可能性が高い軍隊です。(※アメリカ本国の中では、教育を受けられなかった貧困の若者が奨学金のために入隊する場合も多く。彼らもまた国家による搾取の犠牲者であるという声もあります。)

 自分の命を命とも思わない「命知らず」な部隊だからこそ、他人の命にも目が向きません。米兵の犯罪の多くが海兵隊によって引き起こされているという世論が沖縄では根強く。2016年に起こったうるま市の女性レイプ殺人事件も元海兵隊員の手によるものでした。

 そしてこの海兵隊が駐留するのが日本では沖縄と岩国だけなのです。

 沖縄県議会では2016年に「海兵隊の撤去」が公明党を含む全会一致(自民党は退席)で採決されています。

 テクノロジーの発達により戦争の形も変わり、ベトナム戦争以降、海兵隊は活躍の場を失いつつあります。その存在意義自体が今、アメリカ議会でも疑問視されています。

◆辺野古は普天間の代替案ではない?

 そもそも普天間基地の危険性を鑑みた上での辺野古移設案だったはずでしたが、2017年6月、当時の稲田朋美防衛大臣が「米側との具体的な協議やその内容に基づき調整が行われなければ返還条件が整わず、普天間飛行場の返還がなされないことになる」と発言してしまいました。なんか怪しいと思ってたけどやっぱりかよ! 結局、新しい基地を増やすだけかよ!」と、沖縄県内では強い不信感が広がっています。

◆辺野古には本土からのサヨク、プロ市民ばかり?

 まず基地反対運動というとネット上に駆け巡るのは過激なイメージだったりします。自分も沖縄に来る前は誤解していた部分なので、かなり根深いデマだと思います。

 2年間で座り込みや県民集会の現場に300日以上は通ったと思いますが、そこにいるのはほぼ8割、9割が沖縄県民、とくに定年後のおじいおばあ世代です。

 そりゃそうです、平日の昼間に座り込めるのは圧倒的に定年後の世代ですよね。

 沖縄戦を経験した世代の情熱はハンパじゃありません。4人に1人が戦死した地上戦を生き延びた人々であり、軍隊が住民を守らなかった事実を肌で知っている世代だからです。地上戦の最中、本来、防衛に来たはずの日本兵に赤ん坊を殺された、略奪された、強姦された、自決を強要されたという話は枚挙にいとまがありません。

 農業をしながら、週に1、2回というペースで通う人もいたり、朝だけ参加する。夕方だけ参加するなど、皆、生活の中に組み込みながら続けているという感じです。休憩時間などは文字通り手弁当で、弁当を持ち寄り和気藹々と昼食をともにしたり、三線を弾いて歌ったりもします。

「もしもデマの通り日当がもらえるんなら、私ら大金持ちになるねえ」

 あるおばあはデマを笑い飛ばしていました。

 土日祝日は県内の家族連れや本土からの個人や団体、政党の関係者などが駆けつけます。基本的に沖縄県民を中心に行われている運動でありますが、日本政府が税金を使って強行している工事なので、日本に暮らす人々なら誰しも参加して当然であると言えます。責任は本土の側にあるのです。

 また、ネット上では中国、韓国人が多い。などのデマもありますが、実は座り込みの現場でもっとも見かけるのはアメリカ人だったりします。自分の国がこんなところにまで基地を作って申し訳ない。そういう気持ちのアメリカ人たちです。

 VFP(ベテランズ・フォー・ピース)米退役軍人の会の元米兵たちの姿も頻繁に見かけます。

 集う人の様々な想いを「辺野古新基地建設反対」のワンイシューにしぼって行われている運動なので、全基地撤去論=中国攻めてくる論で批判することは見当はずれと言っていいと思います。

 非暴力の運動であり、荒い言動は運動内で注意されます。実際に僕も機動隊員の理不尽な言動に対し、汚い言葉で抗議した際に、後で先輩に呼び出され、「ああいうのは良くないよ、抗議はお互いの尊厳を守ってやりましょう」と注意されたことがあります。

 もちろん機動隊による激しい暴力、拳で殴る、挑発する、肋骨を折る……などにさらされた後は、抗議運動も加熱しますが、その時の映像(しかもカルト宗教団体によって撮影された)だけを見て彼らを暴力集団などと呼ぶことは早計であると言えます。実際に地元名護署の警官も「座り込みの人々がテロリストなら、テロリストの概念が変わっちゃいますよね」と愚痴っていました。

 ただ、時に数千人から数万人が集まる運動でもありますので、その中に例えば某中核派や某革マル派などの極左の人々が混じっていることはあります。

 しかしパーセンテージでいうと全体の1%程度なので、その事実だけを切り取って広めることは印象操作だと言わざるを得ません。

 そして、やはり大事なのは沖縄県民の民意が座り込みする側にある。ということです。「県民投票でも選挙でも結果を出してきた、それを無視して政府が工事を強行する、ならば座り込みをして少しでも工事を遅らせるしかない」という人たちなのです。国が民主主義のルールに沿って手続きを進めていれば、こんなことにはならなかったでしょう。誰も好き好んで座っている人はいません。

◆埋め立て承認撤回へ、そして翁長知事の辞任

 いよいよ国が辺野古の埋め立てを予定している期日まで数日を切りました。

 8月17日のXデーまでに県の埋め立て承認撤回手続きは完了するのか、国と県のギリギリの攻防が続いています。

 辺野古ゲート前に加え、沖縄防衛局での座り込みも行われています。

 そんな中、翁長知事の意識混濁が発表されました。

 めまぐるしい情勢が続いています。

 「容認」か「反対」かの前に、デマに流されず、正しい情報を元に議論することが本土の人間に求められています。

 沖縄にはまだ日本の米軍基地の70.6%が集中しています。

 これは「沖縄の基地問題」ではなく、「本土が沖縄に押し付けてきた基地問題」なのです。

 急転直下、この文章を書き上げて1時間ほどで翁長知事の訃報が届きました。保守、革新問わず、今時、こんなに県民のことを考え、国と対峙し地方自治を貫いた政治家がいたでしょうか。ここまで民のために身を粉にして働いたその背中。彼と同時代の沖縄を生きられたことに感謝の念がこみ上げます。

 さて、これから沖縄は激動の季節をむかえます。残された僕らがこれからどう生きるのか、試される番です。本土も沖縄も我々は皆、この問題の当事者なのです。

眼を逸らさず、逃げずに見つめていただきたいです。合掌

<取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎(Twitter ID:@oogesatarou)>

大袈裟太郎●ラッパー、人力車夫として都内で活動していたが、2016年の高江の安倍昭恵騒動から、沖縄に移住し取材を続ける。オスプレイ墜落現場からの13時間ツイキャス配信や籠池家潜入レポートで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。新しいメディアを使い最前線から「ポスト真実」の時代にあらがう。

レポートは「大袈裟通信アーカイブ」
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年10月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031