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2018年08月29日01:45

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【映画】クラッシャージョウ 総火演《四》

公開の半年程前からだろうか。何の映画を観ても、その作品のCMが繰り返し流されていた。
靴音高らかに廊下を走る集団。
その行く手を敵が遮ると、大男がマシンガンを掃射する。
豪快に吐き出される硝煙。
その描き込み。そのリアリティ。

ジャングルの中、テキパキと小型のバズーカを組み立て、構える金髪の美少女。
『そこよ!』
叫ぶと同時に打ち出されるロケット弾。
爆風になびく長い髪。笑ってるのではないだろうけど、笑ってる様に見える一瞬の表情。
安彦良和の描くキャラが生き生きと動く。

ガンダムが終わって阿呆の様に腑抜けになっていた俺は、両肩を激しく揺さ振られる様な衝撃を受けた。
来た!これは間違いなく傑作だ。
そう確信した俺は、首を長くして公開の日を待っていた。



一部のマニアから熱狂的な支持を受けつつもいまいちメジャーになり切れずにいた名作、高千穂遙のスペースオペラが遂にアニメ化された。
監督はガンダム劇場三部作で日本中を興奮と感動のるつぼへと叩き込んだ、あの安彦良和が初メガホン。
ミリタリー色にこだわりつつ、それでいながら遊び心満載。笑いあり、涙ありの盛りだくさん。
豪華声優陣に加え、鳥山明、大友克洋、高橋留美子、細野不二彦、吾妻ひでお、とり・みき、いしいひさいち、御厨さとみ…
スペシャルデザイナーとして参加した、目が眩むようなメンバー。

楽しいこと、良いモノ、オイシイ所を、それら全てをガバッとすくい、まとめ上げたかの様な作品。
まさに『バブル全盛期』としか表現のしようがない、それが

『クラッシャージョウ』だ。



『知る人ぞ知る』とか、『知らざる名作』なんて言葉がある。
『ホントに名作だったら口コミで世に知られるだろ』と思わなくもない。だがそれにはそれなりの訳がある。

クラッシャージョウが公開された1983年春、日本のアニメ界は沸き返っていた。

時代を築き上げた名作中の名作である宇宙戦艦ヤマト。その完結編が遂に完成。

マンガの王様(当時はそんな呼ばれ方は無かったが)石ノ森章太郎の幻魔大戦が、新進気鋭の大友克洋のキャラクターで映像化。

怪物の様な2作品がそびえ立ち、クラッシャージョウはその間に割って入ろうとした野心作だった。それだけの魅力は充分にあった。しかし、クラッシャージョウを持ってしても上記の2作品には敵わなかったのである。
この時、日本アニメは頂点に達していたと言っても決して過言ではあるまい。
どこか、お祭りの前の夜の様な、皆が浮き足立ち、ソワソワし、これから始まる楽しいことに胸躍らせていた様な、日本中がそんな雰囲気の中にあった。
それがバブルという時代だったのだろう。



まずプロローグ。度肝を抜かれますよ(^^)
高速道路を疾走するトラックと、それを追いかけるセダン。共にエアカーで、路面から浮き上がり滑る様に疾走する。
と同時に鳴り響くアップテンポの洋楽『Bloodbath Highway』。
このスピード感。この躍動感。観てる俺のボルテージも一瞬でトップギヤだ。
カーチェイスは銃撃戦となり、エアカーは次々と爆発炎上。

ここで一瞬映る操縦席のモニターには、自分の走行速度と近くを走るクルマの速度、両車の速度差などがデジタル表示されている。しかもその数値が変化する芸の細かさ。肉眼で確認するのはほぼ不可能な一瞬のシーンにも関わらず、この設定と描き込みだ。

追跡するエアカーの赤い1台はベンツ。黄色のはBMWじゃないか。しかもBMWのデザインが秀逸。お馴染みのブタ鼻のノーズグリルが、後ろに進むに従って拡大して行き、その部分がキャビンになるという驚くべき斬新なデザイン。
フォト

未確認だけど、アメ車っぽいエンブレムが映った様な記憶もあるし、トラックはトヨタって噂もある。
因みに、現在実在する会社が登場するってのは、フィクションの作品の最高の楽しみ方の1つだと思う。
『さすがベンツはこの時代もまだ存続してんだなぁ』とか
『まさかBMWがあんな斬新なデザインを…』とかね。
これ、今だったらもう一捻りあってもいいね。『ベンツとBMW』じゃあまりにもありきたり。もっと、マヅダとかさ。プジョーとか。更に突っ込んで『Panasonic』とかね。
『え、Panasonicがエアカー作ってんのか?』
『だってあのロゴだったぜ?』
みたいにビックリするわな。そしたら
『なんでクルマ作ってんだ?電気自動車から参入したのかな?』
みたいに盛り上がるだろな、俺らみたいなマニアはw
ま、この時代は仕方ないと思う。観客もそこまで準備して観てないだろうから、判り易い『ベンツとBMW』にしたんだろう。
ついでに言っておくと、実在する会社が未来を舞台とする作品に登場するアニメはクラッシャージョウ が最初ではない。ダグラムに登場するソルティック・ラウンドフェイサーはエンジンがロールスロイス製だ。
それ以前の作品にもあるかもしれない。

どうにか追っ手を巻いたトラックはアジトに逃げ込む。積み荷は何と、冷凍睡眠にされた素っ裸の美少女。
しかも、え〜と、その、いい歳こいて書く様なことじゃないんだけど、アソコがね、非常に控え目ではあるけれど、描写されてるんですよ。

『え〜っいいの〜exclamation & question(´⊙ω⊙`)』
『バブルなのか?これがバブルなのか?』
劇場内が声無き声でざわついたのは言うまでも無い。
これ描いちゃったのは、一般のアニメとしては多分初めてじゃなかろうか。



ここから音楽が盛り上がり、オープニングに雪崩れ込むんだけど、これがまた素晴らしいの何の!
宇宙に浮かぶ障害物を破壊するシーン。フルオーケストラの演奏による重厚な音楽と画面のスピード感。セリフが無い分一気に引き込まれる。
ファイター(戦闘機)で狭い通路を進むと、目の前の隔壁が閉じ始める。エンジン全開で飛び込み、挟まれるギリギリのところでストップモーション。
『ジョウ 、パイロット、身長180cm、年齢19歳』みたいな感じで各キャラが紹介されて行く。非常にスタイリッシュ。
仕掛けた爆弾が爆発し、大きな火球が生じる。エンジンを全開にして矢の様に離脱するミネルバ(ジョウ達が乗る航空機型の宇宙船)。音楽も最高潮となり、重厚でありながら艶のある伸びやかなサウンドに呼応するかの様に、アフターバーナーに点火して更に加速するミネルバ。その流れる様な挙動。
画面一杯に膨らみ劇場全てを照らした火球は呆気なく消滅し、突然の漆黒の闇。そこに浮かび上がる『監督 安彦良和』の文字。
拍手喝采もんの素晴らしいオープニングである。



『人1人の命ぃ?』
どこか素人臭い、クドい言い回しに、思わずイスから落ちそうになった。
え、主人公、こんな声なの?

『穏やかじゃないなぁ〜』
こっちはのび太(の声)じゃん。

そして次元大介もいるぞ。ど〜なってんだこのアニメ?
と、最初こそ出鼻を挫かれたけど、ジョウの力の入り過ぎた声は、いかにも若く、舐められまいとする若者らしさがよく出ている。のび太も次元も、後で銭形のとっつぁんまで登場するが、物語が進むにつれてそれぞれ『リッキー』、『タロス』、『コワルスキー』以外の何物にも思えなくなってくるのだから不思議なものだ。

ストーリーは、バレンスチノフなる人物にハメられたジョウ達は連合宇宙軍に捕まり謹慎処分。ヤケになってディスコで暴れ、そこにタロスの昔の仲間であるバードが登場。

『所属は情報部2課だ。解るかなぁ?』
試すように不敵に笑うバード。

『スパイかexclamation & question
鋭いタロスの指摘。

『そりゃあ言い過ぎだ。
ま、似たようなもんだがな』

この一連のセリフ回しがシビれる。
そうか、スパイって軍だと『情報部』の所属になるのか。知らなかった。
バードの入れ知恵で惑星ラゴールに寄り道することになるジョウ達。しかし大気圏内に入るや否や、正体不明の小型機の迎撃を受ける。
爆音が響くミネルバのブリッジ。
『洒落た歓迎だぜ!』
百戦錬磨のタロスは、こんな時でも軽口を叩く。

ジョウが叫んだ。
『戦闘配置だ!このケンカ買った!』

『そう来なくちゃ』
と指を鳴らしたリッキーがコンソールを叩くと、シートごと彼の姿が沈んで行く。

『セントーハイチ』
アニメで幾度となく使われた言葉だが、ではその戦闘配置ってのは、具体的にはどんなだろう?
少なくとも俺は、それを実際に表現してるアニメに出会ったことがなかった。このクラッシャージョウを観るまでは。
ミネルバは通常航行用の艦橋の下に、戦闘艦橋がある。そして戦闘配置を取ると、クルーは座ったままシートごと下に降りて行くのだ。

フネが大型化し、その用途も複雑になると、それ専用の指揮所が必要となる。
航海艦橋、戦闘艦橋、防空指揮所…
このミネルバも通常艦橋と戦闘艦橋とがあり、前者は大きな窓があって位置も高く、見晴らしが良い。恐らく居住性や快適性も考慮されているはずだ。シートの質とかね。リクライニングすれば簡易ベッドになって仮眠が取れるとかさ。
しかし後者は全て戦闘用に作られているだろう。通常艦橋より低い位置にあるのは被弾面積の減少を図ると共に、最重要防御区画(ヴァイタルパート)の内側の、重装甲に囲まれた中に降りるからだろう。
普通は乗組員の方が走って配置場所まで移動するのだが、ミネルバの場合はクルーは4人。この人数ならシートごと移動する方が合理的かもしれない。
考えれば考える程、現実的な設定だ。本当に兵器を知ってる人が描いてるんだなぁと感心する。

照準器の中に敵を捉え、引き金を引く。
1機の敵戦闘機を、見事一撃で撃墜。
ドヤ顔で親指を突き上げるジョウ。
ニタリと笑うタロス。
この一連のシーンにはセリフが無く、それが戦闘の緊迫感を一層煽る。
何よりも、セリフが無くても生き生きとしたキャラの表情が雄弁に語ってるでしょう。
『どうだタロス!』って叫んでるジョウの声が聞こえるしね。タロスはきっと、
『腕前はおやっさん(クラッシャーダン)に引けはとりませんぜ』とでも言ってるんじゃないかな。

ここでの注目は、彼我の戦闘機は、共に機体の各所にバーニアを装備している点だ。大気圏内での飛行と言ったって、それぞれの惑星毎に大気密度やら組成やらが異なるだろうし、何より宇宙空間での戦闘もあるからね。急激な機動はバーニアによって制御するって考えに行き着くのは当然だろう。
劇中でも、急旋回の時には機体各所のバーニアから火を噴き、それが激しいドッグファイトの演出や、ミサイルを回避する説得力を持たせることに成功している。

ミネルバは動力部に戦艦が1隻買えるぐらいの金を注ぎ込んでおり、極めて機動力のあるフネって設定なんだけど、大気圏内での格闘戦となれば小型戦闘機の運動性能には及ばない。状況不利と見たジョウはアルフィンとファイター1で斬り込んで行く。これでこちらは2機になったが、それでも敵はまだ多い。圧倒的不利な状況に違いはないが、ミネルバは足手まといと判断したジョウは『宇宙港へ逃げ込め』とタロスに命じる。『しかし4対1ですぜ?』と躊躇するタロス。
『邪魔だ!早く行け!』と一喝するジョウ。
自分の身を案じてくれている、父親と同じぐらいの年齢の大先輩に向かって怒鳴りつけるこのシーンはなかなか印象的だ。今回だけに限らず、今までもこの調子でやって来たのだらう。にも関わらずタロスが黙って従ってるってことは、ジョウの判断力が確かだと認めているからだ。単なるイケイケなガキではなく、優れた状況判断と勇敢な行動力を併せ持った、頼りになるリーダー。そんなジョウの素顔がここのシーンから見えて来るのだ。

俺は小説も大体読んだけど、クラッシャージョウって基本ピンチに陥るとジョウとアルフィンがファイター1で打って出て大暴れ。しかし次第に包囲され、ニッチもサッチも行かなくなって大ピンチ!って瞬間にタロスとリッキーが助けに来る。で、4人集まって大反撃、ってのが毎度のパターンなんだけど、今回も全く同じ。ジョウとアルフィンは敵戦闘機と相討ちとなってジャングルに不時着し、同じく不時着したであろう敵が追い掛けて来て夜に銃撃戦となるが、ここでは1つ目の巨大な類人猿とか食人植物なんかが登場する。
ここのシーンは、オラ、ワクワクするだ!
この化け物、なんとレーザーが効かないのね。
いやぁ〜この頃ね、俺は密かに憂いていたことがあったのよ。レーザーとかビームが兵器に転用されると、そのあまりの高温によって、ほぼ全ての物質を簡単に貫通してしまうらしいと。そうなると、俺が愛して止まない『重装甲』とか『重装備』って概念が失せ、兵器は全て軽量で安価な使い捨てとなり、敵弾に耐えるのではなく、損失による戦力低下を数で補うという発想に進化して行くのではないかと。
それじゃつまらないよ。ロマンが無い。

この怪物も図体ばかりはデカいけど、数発のビームが貫通すれば絶命か。恐怖感も圧迫感も絶望感も無い。おもしろくないわ。
映画館でそう思っていたら、ジョウがライフルを幾ら撃っても怪物は全く怯まない。咆哮をあげながらどんどん近付いて来るではないか?
え、どうなってんの?ビームが効かないの?

これ小説版で書いてあったんだったかな。全身を覆う体毛がビームを吸収しちゃうとか、表面の油脂が反射させちゃうとかで、とにかくビームを受け付けないんだと。
スゲー( ゚д゚)そんな設定があれば、『ビーム兵器あれば無敵』って一方的展開は避けられる訳か。
宇宙は広いのだから、そういう信じ難い生物だっているかもしれない。或いは当の人間自身が、スゴい兵器を開発してもそれを防ぐ防御手段や装甲材質を生み出すものか。
その後ガンダムでも、大戦末期のジオンで耐ビームコーティング技術が実用化され、ゲルググの装甲に採用されたって後追い設定が生まれた。近距離からの直撃には耐えられないが、短時間の照射や、収束率の下がる遠距離とか低出力レーザーならば耐えられるとか…。
現実の世界でも、成形炸薬弾頭が発達すると幾ら装甲を厚くしても無意味となり、『戦車無用論』ってのが台頭した。しかし複合装甲を開発、採用したレオパルトの登場により、戦車は再び陸の女王に返り咲く。それと同じような話か。
あぁ、明日は遂に戦車が見れるナ…




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