内観

◯子どものころ、あなたは、先生やクラスメイトからどう思われていましたか？

嫌われていました。面倒で迷惑な存在だと思われていたと思います。

◯それはどうしてだと思いますか？

私が暗かったからだと思います。それから、コミュニケーションがうまくできていませんでした。具体的には、一人っ子で母親もいなくて、父親とも祖母とも学校であったことを話すなどのコミュニケーションが取れていなくて、人とどう関わればいいか分からなかったからだと思います。

◯学校であったことを話すことがなかった、と言われましたが、それは一度もなかったのですか？また、それはなぜですか？

父も祖母も私の学校での様子に対する興味が薄かったためだと思います。ただ、父からは、お前が人とうまくいかないせいで、俺が先生に呼び出しをされるんだ、と冗談のようなからかい半分のような感じで言われました。また、祖母は、私が誰かの家に行ったり、誰かのお母さんに遊びにつれていってもらうと、「仁美ちゃんが迷惑をかけてすみませんでした」と謝りの電話を毎回必ず入れました。

◯謝りの電話を入れられることに対してどう思いましたか？

嫌でした。できればして欲しくなかったです。そんなことをしたら、まるで私が家でとてもひどいことをしているから、きっと外でもひどいことをしているとおばあさんは心配しているんだと相手の人に思われる気がしました。また相手の人も忙しいのに、毎回電話されたら迷惑だと思いました。祖母にやめるようにいっても聞かないので、誰かの家に遊びに行くのが嫌になりました。

◯質問を変えます。先生からは、どうして人とうまくいっていないと思われていると思いましたか？ もしくは、このことに関する先生から言われた言葉で気になった言葉や覚えている言葉を教えてください。

先生は、私が同じ班の子と喧嘩になると、それを仲裁しようとした他の班の子に「大変ね」と言いました。

◯その仲裁しようとした子は誰ですか？

Ｉという子でした。

◯そのＩという子について教えてください。

Ｉさんは、私のことを嫌っているか、私とは関わりたくないと思っているように見えました。けれど、私とＩさんは、出席番号が近いので、嫌々同じ班になっている、という感じでした。
Ｉさんの友人のＡさんは、私のことを幼稚園の頃から嫌っていましたが、ＩさんはＡさんに対して、そのことをよく注意していました。
あるとき、別の友人であるＦさんが私に言いました。
「Ｉさんはいい子だよね。優しいよね。笠井さんは、Ｉさんに対してどう思う？」

私は、彼女があまりにもＩさんを誉めるので、つい「でも言葉にトゲがあることがある」と言ってしまいました。

Ｆさんは、私の言葉に顔色を変えました。
いつもあんなにお世話になっているのに、感謝の気持ちはないのか、そんな様子でした。
すぐにこのことは、ＦさんからＩさんに伝わりました。
Ｉさんの私に対する空気が変わりました。

Ｉさんは、私のいるところで、私の話をしました。
「お母さんに言ったらさー。家庭の事情があるから、そんなこと言っちゃいけない、って言うんだよ。おかしくない？」




私は、私が陰口を言われるのも仕方ないと思いました。私は、ＦさんにＩさんの悪口を言ってしまったんだ。Ｉさんに感謝することはあってもそんなことはしてはいけない。そう思いました。







◯そのことは、あなたのお父さんや先生に言いましたか？

言いませんでした。話しても、私が悪い、と言われるだけだと思っていたので、話す時間も話す手間ももったいないし、面倒だと思いました。父はそんなこと興味ないだろうし、学校の先生も忙しいのにそんなのに付き合わせてはいけないと思いました。