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2018年06月13日20:18

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「FFXIV」絢爛豪華な闇夜の錦-後編-(小説)BL

 そんな事があってから、クローンの彼が過去を視る頻度が増した。
 ある時はゼノスの。ある時は現地民といざこざを終えた雑兵の。ある時は"主治医"や研究員たちの…。
 その内容は、彼が持つ疑問をさらに色濃くし、行動を起こそうと思わせるにはするには十分で。

 深夜。
 起きているのは警備をしている兵士くらいという時間帯。
 ゼノスもすやすやと寝息を立てているベッドからこっそりと抜け出して…。
 向かった先は、"実験室"とプレートの貼られた部屋。
 "超える力"の研究のためと、たびたびこの部屋で妙なポッドに入れられていたうえ、過去視によりここに求める物があると確信していた。
 この時間ならば中に人はいない。
 セキュリティに関係する防犯センサーなどは事前に細工しておいた。今ならば、誰にも邪魔をされずに調べられる。
 照明のついていない部屋の中。しかし、規則的な音を出しているつけっ放しの機械が光源となり、完全な闇ではない。
 誰もいないその部屋の中を、それでも息をひそめて移動する。
 目当ての物は中央に設置してあるポッドに接続してあるコンソール。
 過去視によりその操作はもちろん、警報が鳴らないようにする方法も知っている。
 しばらくの間、コンソールを操作し目当ての物を探して。
 そして、とうとう。
「………あった」
 ファイル名『B-XCVI』
 呼吸は荒くなり、操作する手が震える。
 口の中はからからで、喉が張り付く。
 手の震えを抑え込みながらファイルを開くと…。
 そこには、実験体"B-XCVI"の詳細な、膨大なデータが。

 薄々ではあるが、わかっていた。
 それでも、やはり。事実に直面すると…それがひどい内容であれば尚、信じたくないという気持ちが大きくなる。
 体が震え、思わず後ずさる。
 と。
「あ〜あ、とうとう知っちゃったんだネェ」
「っ!!?」
 突然背後から聞こえた声に、反射的に腰に下げた双剣に手が伸びるが。
「ダ〜メ。今大きな音を出したら気づかれちゃうからさ」
 その手の上から押さえつけられ、刃を鞘から抜くことができなくされた。
 そしてそれは同時に、己の動きも封じられる状態で。
「大丈夫だよォ。ほら、深呼吸。ひっひっふーってしてごらん?」
 しかし、ここまでくれば背後の人物が誰か、顔を見ずともわかったので。
「………カラス、おめぇ…今までどこ行ってたんだよ」
「ちょっと、野暮用でネェ」
 大きくため息をついてそういえば、どこか楽しげな返事が返ってくる。
「………お前、知ってたんだな」
「何を〜?」
「今更しらばっくれんな。最初から知ってたんだろ?」
 興奮して…声が震え、徐々に大きくなる。
「俺が…俺が、クローっ!!?」
 しまいには叫ぶような声をだしそうになったところで、双剣ごと抑え込まれていた両手を背後に回され片手でまとめられ、もう片方の手は口を塞がれ。
 そのまま顎を上げられて上を向かされる。
「言っただろう?大きな音は出しちゃダメって、ネェ?」
 そして、背後から覗き込むように覆いかぶさられると。暗い部屋にカラスの長い髪、そしてその独特のメイクで闇の中に浮かぶのはその瞳だけで。
「っ!」
 ゾクリ、と背筋を冷たいものが走る。
 普段いくらふざけていても、やはり天才と呼ばれた上忍だ。
 腕の中の彼が大人しくなったことを確認し、カラスは顔を離してにっこりとほほ笑むと。
「それで、キミはこれからどうするのかなァ?」
 ぱっと体を離していつものふざけたポーズで尋ねてきた。
 しかし、その真意を測りかねて戸惑っていると。
「キミは自分が何者か知ったんでしょォ?だったら、これからどうするのかなって興味がわいたわけ」
「…どうするって…」
 言われ、先ほどまで見ていたモニターに再び視線を落とす。
 そこには先ほどと変わらない文字の羅列。
 何度読んでも、書いてあることは同じ。

 蛮族の英雄のクローン。

 それが、自分。
「…笑っちまうな」
 モニターの文字を指先でなぞりつぶやく。
 自分が感じていた怒りも恐怖も悲しみも苦しみも全て…すべて、記憶さえも作られたものだったのだ。
 自分という存在そのものが、まがいもだったのだ。
 それなのに。
「作られたもんでも、涙とか出るんだなぁ…」
 ぼろぼろと、大粒の涙が零れ落ちる。
 悲しいのか嬉しいのか怒りなのかもよくわからない。
 ただただあふれ出る涙をそのままにしていたが、ふと。
「…そういや、よかったのか?」
「何がァ?」
「お前の事だから、俺がここに入るための準備してたの気づいてたんだろ?」
 おそらくカラスは初めから、自分がクローンであることは知っていたはず。
 ならば、こうやって真実を暴くことを止めなくてもよかったのだろうか。
「だって、ボクはキミを鍛えるために雇われただけだからネェ〜。それ以外の事は知らないよォ」
 その疑問に、飄々と返されたが。
「だったらなおさら…」
 この事が科学者たちに気づかれれば、罰せられるのはお前ではないのか。
 自分の事よりもその身を案じているようなものの言い様に。 
「ん〜…まあ、いっか。イイこと教えてア・ゲ・ル」
 しばし何かを考えていたカラスは内緒だよ、というように唇の前に人差し指を立て。 
「近々、ココは戦場になる」
「!!?」
 急に、先ほどまでのふざけた口調と違い、トーンを下げた真面目な口調でそう言われ。思わず息をのむ。
「なかなかうまく事を進めてるよネェ、この中にいる帝国の奴等は誰一人と気づいちゃいない。ほんと、お馬鹿さんばっかりだァ」
 しかし、次の瞬間にはいつもの状態に戻り。
「だ〜か〜ら〜。もうここでお金を稼ぐのも無理だなぁって。キミも、自分の好きに動いてイイんじゃな〜い?」
 そう言って、クローンの彼にウィンクをした。



 結局、自分はどうすればいいのかなどとすぐに答えが出せるはずもなく、触ったものをすべて元に戻し痕跡を消して彼はゼノスの寝室へ戻った。
「……どこに行っていた」
「っ!」
 扉を開けた途端声をかけられ、びくりと体をはねさせる。
「…起きてたのか」
 しかし、なるべく落ち着かせた声をだし、ベッドにもぐりこんで。
「暖房がなくなって目が覚めた」
「俺は湯たんぽか」
 シーツに入った途端抱き込まれ、そんなことを言われて苦笑する。
 ゼノスにとって自分は動物の犬猫といったペットのような存在。
 ただ、言葉が通じて過剰な"遊び"が出来るので気に入っているだけ。

「…なあ」
 …真実を知って、まず思ったことは…。
 おそらく、仲間たちが自分のせいで惨殺されたという事が事実ではないという事。資料の中にも記憶の改ざんとあった。
 ならば、俺が死にたいと思っていた事さえ無意味なことだった。
 しかも、そう思って致命傷を負えば負うほど、治療とともにさまざまな実験を行がおこなわれることとなり…。
 あの胸糞悪い主治医…いや、科学者に情報を提供していたという事になる。
 いっそ、外へ出ようかとも思ったが…。
「あんたは何で、俺を殺さないんだ?」
 仰向けに寝ているゼノスの胸に、手と頭を置いて尋ねる。
「気づいてたんだろ?俺が死にたがってたこと」
 なのにどうして?
 すると、ゼノスは鼻で笑い。
「簡単なことだ。お前が良い退屈しのぎだったからな」
 ゼノスは地位も、力も強すぎる。
 反抗する者があれば切り伏せても文句は言われない、抵抗されても痛くもない。
 そんな中、ゼノスに傷を負わせられたのが唯一。

 "蛮族の英雄"だった。

 オリジナルと顔を合わせたのは、クローンの彼を手に入れてずいぶん経ってからだった。
 その時すでに、クローンの彼の実力はオリジナルよりも上だった。
 刃を交え、その場で斬り捨てることも可能だったが…。交えたこちらの刀が折れ、興味がわいた。
 後々、それが"蛮族の英雄"であり、己の"玩具"のオリジナルと知り。
 刃を交えるほどに強くなっているのがわかり、牙を磨いて己の庭へと来るのが楽しみとなっていた。
 そんな"蛮族の英雄"と同じものが手元にいる。
 簡単に殺してはつまらない。折角の、壊れない"玩具"だというのに。
「お前はなぜ、俺に殺されたいと願う?」
 質問しておきながら、己の胸の上で少し眠そうにしている不遜な態度のクローンの頭を撫でながら聞き返せば。
「…初めは、死ねればそれでよかった…」
 眠気のせいか素直に心の内を出してきた。
「でも、あんたと戦って…、愉しかった…」
 ポツリポツリと漏らす言葉を催促するでもなく、ただ頭を撫でながら聞いていて。
「他の奴じゃ物足りない…あんたと戦って死にたい…」
 それを聞いて、ゼノスの口元がにやりと歪む。

 そう、これこそがこの"玩具"を簡単に壊さない理由。
 愉しいのだ。
 全てが虚しいこの世界において、戦っている時だけが史上の喜び。
 近頃は戦の中でもその愉しさを見出すことがなかなかできていなかった。
 自分が強くなりすぎ、周りがあまりに脆過ぎた…。
 2年前のドマでの反乱の鎮圧でも、心が躍ることはなかった。
 だが、この"玩具"は初めて刃を合わせたあの時からイレギュラーな動きをしてくれた。
 愉しかった、久々に心が躍った。
 だが、少し離れていた間に下級兵どもがこれに悪戯をしたという。
 その報告を受けた時、得も言われぬ不快感に襲われた。
 これは俺の物だ他の誰にも渡さない、渡したくはない、自分だけの"玩具"。

「…だから、あんたが…殺してよ」
 己の胸に頬を寄せながらいじらしく言うその"玩具"の髪を掴み顔を上げさせ。
「そうだな…ならば、俺が飽きた時…お前を壊してやろう」
 目を覗き込んでいえば、髪を掴まれ痛みに歪んでいた左右で色の違う瞳が見開かれ。
「ちゃんと、あんたが壊してよ…?約束だぜ」
 髪から手を離せば、猫のようにすり寄ってくるそれの頭を撫で、セノスは笑みを浮かべた。

 嗚呼。
 なんと哀れで滑稽で…愛らしい"玩具"だ。




 後日、カラスが言っていた通りアラミゴは反乱軍の襲撃により戦場と化した。
 爆炎や銃弾、さまざまなものが飛び交う戦乱にまぎれ、あの科学者を探したが、その姿が見つけられない。とうに逃げたか?と思ったが、ゼノスのもとへ向かう途中…ちらばった書類の束と、見覚えのある眼鏡…そして崩れた壁に、広がる赤。
 壁の瓦礫の隙間から、呻き声のようなものが聞こえ白衣のような布が見えた気もするが…。
 その場にとどまるのは危険と判断し、彼はその場を通り過ぎた。


 ゼノスはいつものように玉座にいるはず。
 しかし、彼が到着した時にはすでにそこは戦闘が行われた後のようで。床や壁に刃の跡。
「っ!!?」
 どこへ行ったのか、と考えていると、外から咆哮が聞こえ。以前見せられた、空中庭園に捕えられた"獣"の存在を思い出し。
「……。」
 ゼノスの寝室から空中庭園は一望できる、と。なだれ込んでくる反乱軍に見つからないルートでそこへ向かった。




 クローンの彼は一部始終を見ていた。
 神龍と融合し、蛮族の英雄と戦ったゼノスは敗れる。
 しかし、そこへ駈け込んできた解放軍の者達と何かを話していた彼はとても満足そうな表情を浮かべ、持っていた刀を己の首筋にあて。
「さらばだ……俺の最初で最後の友よ」
 まっすぐと英雄を見つめ微笑み、刃を引き。
 倒れる間際、彼の視線は英雄ではなく…寝室の窓からこちらを見ているクローンを捉えていた。



 花畑に横たわる皇太子ゼノス。
 反乱軍は戦闘が終わったことを伝達してまわっているため、この場には入口のあたりに2名の見張りがいるだけ。
 そこへ、クローンの彼は音もなく降り立つ。
 横たわっているゼノスの顔を覗き込み。
「…あんたは満足いく死を手に入れたんだな……」
 ぽつりとつぶやいた声が聞こえたのか、入り口にいた見張りたちがこちらへ駆け寄ってくるのが視界の端に見えた。
「……嘘つき」
 クローンの彼はそう言ってゼノスに口づけ。
「おいお前!どこからはいっ…!!?」
「消えた!!?」
 まるで霞のようにその場から姿を消し、見張り兵が慌てふためいていた。



 空中庭園から離れた場所にある、塔の屋根上。
 上空からみられでもしない限り、そこに人がいるなどと誰も思いもしないような場所で。
「あっれぇ〜?キミに四ツ印教えた覚えはないんだけドォ?」
 カラスに言われ。
「弟子だからな、師匠の得意技を覚えただけだ」
 どこかで聞いた言葉で言い返したのはクローンの彼。
 先ほどゼノスのところにいたのは彼の分身だったのだ。
「つか、お前。逃げたんじゃなかったのかよ」
 自分んにここが戦場になると伝えてから、その姿を見せなかったカラスは、とっくにこのアラミゴを脱出しているものと思っていた。
 しかしカラスは今自分の傍にいる。
「ん〜。ちょっと忘れ物を取りに来たのさァ」
「忘れ物?」
 彼の返事に怪訝な顔で尋ね返せば、目の前に掌を出され。
「そ。キミの授業料、まだ全額貰ってないんだよネェ」
 そんなことを言われ、クローンの彼は困ったように。
「授業料ったって…俺は金なんざもって…」
 諸手を挙げて、無い袖は振れぬと言おうとした彼に、カラスは差し出した掌を返し、人差し指を突き出して。
「もともと冒険者なんだからァ、金の稼ぎ方くらい知ってるでしょォ?」
「っ!!」
 とんっと胸元をつついて言われ、クローンの彼は目を見開いた。
「四ツ印の分は追加料金だよォ。ちゃあんと、満額払ってネェ?」
 笑顔でそんなことを言われ、あっけにとられていたが、ふと。
 カラスは以前、授業料はすでに受け取ったようなことを言っていたような…。
 つまりこれは、ゼノスが死んで生きる理由を失った彼へ新たに与えた生きる意味。
 それに気づいた彼は小さく息を吐き。
「おめぇ…面倒見良すぎるだろ」
 そんな彼にカラスは意地悪な笑みを浮かべ。
「あ、料金はトイチで増えるからネェ〜」
「おう前言撤回だこの野郎」
 



 アラミゴが帝国から解放されたというニュースがエオルゼアを賑わせる中。
「あれ?お前髪切ったんじゃなかったのか」
 解放者の一人であるシロガネは、行く先々でそんなことを言われて首をかしげていた。

END

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クローンのシロとゼノピの間に愛はないのです。
あるのは依存と執着と所有欲のみ。
もし愛だったとしても本人たちはそれをそうだとは思っていない感じでお願いします←

そしてゲーム内の忍者70クエのようにカラスが美味しいとこもっていきまくった気がする←
カラスってなんだかんだ言ってめっちゃ面倒見いいよねと思っているのですよ。
助言してくれるし装備返してくれるし助けてくれるしねw
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