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2018年06月13日20:12

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「FFXIV」絢爛豪華な闇夜の錦-前編-(小説)BL

「FFXIV」生まれいでしは長き世の闇(小説)
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こちらの続きとなっております。
今回はがっつり紅蓮のストーリーに食い込んでおりますので、プレイしていないと分からない部分が多々あります;
そしてがっつりネタバレも入っております。
さらに言うと腐っておりますご注意ください。

++++++++++++++

 いつものように悪夢を見て、いつものように飛び起きる。
 そう思っていたのに、その日は夢を見ることもなく…。

「ん…。」
 小鳥のさえずりと窓から差し込む光。
 朝の情景を感じながら目を開ける。
 こんなに穏やかな気持ちで目覚めたのはいつ振りだろう。
 そんなことを思いながら、あくびを一つして寝返りを打つ。
 すると、何やら暖かいものに当たりその心地よさに身を摺り寄せ…。
「……ん?」
 自分に与えられた部屋にこんな暖かいものがあっただろうか?
 と、言うか…ここは本当に自分の部屋か?
 マットの柔らかさやシーツの触り心地が自分の知っているものとまったくと言っていいほど違う。
 ゆっくりと目を開け、恐る恐る顔を上げ。
「目が覚めたか?」
「っ!!!!!!!」
 目の前には見知らぬ金の髪の美丈夫が。
 人は本当に驚くと声も出せなくなるという事を、この時初めて経験した気がする。




 帝国により生み出された"蛮族の英雄のクローン"は、忍者カラスの指導により日々その能力を成長させていった。
 髪を切ったその日から、一見精神も安定しているように見えたが…。実際にはむしろ悪化していて。
 一人で泣いているのはまだおとなしい方で。
 普段から腹が出ているような露出の高い装備を好んでいるのは、いつでもこの腹が裂け臓腑をぶちまいて絶命できるようにだと笑いながら話していたり。戦闘訓練中に危険を省みない行動に出るなど…己の安全に関しては無頓着な行動をとっていた。
 その日も、相手の攻撃を避けることなくその懐に飛び込んで倒すという無謀な戦い方をしていたのだが。
「ヒヨコくぅ〜ん。そろそろ避ける事、覚えてくれてもイイんじゃないのォ?」
 その様子を見ていたカラスがそう言うと、クローンの彼は頭をかいて。
「…体が勝手に動いちまうんだ。何より、こいつらのは避けなくても死ねねぇ」
 "死なない"ではなく"死ねない"と言っている事からも、彼の病み様がうかがい知れる。
 訓練中、という事もあり確かに致命傷を与えることはないだろうが。それでも当たり所が悪ければ死ぬこともあるだろう。
 しかし、彼は己がその程度では死なないと知っている。
 それは、己がクローンであるから…ではない。クローンの彼は、己がクローンであることは知らない。
 だが、己がクローンと知らないが故に、"蛮族の英雄"になった原因でもある光の加護は健在だと思っているのだ。
 実際、彼はクローンであるにもかかわらずその加護もしっかりと受けているようで。
 それに気づいた科学者は"蛮族の英雄"のもつ"超える力"の研究が捗る!と狂喜していたほどだ。
 そんな裏のことまで知っているカラスは、表情にこそ出していないが呆れ果てていた。
 もともと勤勉ではないし、他者に真面目にものを教えるのも性にはあっていない。
 だが、これは"オシゴト"だ。これでは自分の懐に入ってくる報酬額も落とされかねない。
 さて、どうしたものかと頭を悩ませたカラスは、避ける気がないのなら。と、一つの能力を上げさせることにした。
 スピードだ。
 素早く動いて相手が攻撃を繰り出す前に倒してしまえばよい。
 忍びはその素早い動きで相手を翻弄することも可能。忍びの修行としては何ら間違ったことではない。
「こんなにちゃんと、ヒヨコ君の面倒見てあげているなんて。ボクってホント真面目だよネェ」
「…ソーデスネー」
 修行のさなか、そんな軽口も叩けるようになってきた頃。
「…経過報告?」
 訓練をしていた二人に告げられたのは、この施設に皇太子のゼノスが来ているという事。
 そのため、クローンの彼がどれほど強くなったのかを知りたいという事で。
「ああ。殿下が"わざわざ"ご足労くださったのだ、分かっているとは思うが失礼のないよう…」
 科学者…クローンの彼にとってはいまだ"主治医"の男のくどくどと続く説明に、カラスと彼は顔を見合わせ嫌そうな顔をする。
 正直に言えば面倒くさい。
 だが、クローンの彼はともかくカラスは皇太子ゼノスが楽しめるように彼を育てるのが仕事。
「何をするのかは知らないけどォ。まぁ、さくっと終わらせて来ればイイんじゃな〜い?」
 今のお前ならここにいる兵士誰が相手でも負けないだろう?
 にやにやと、言外にそう言葉を含ませているカラスの意図に気付いた彼は、大きなため息を一つして。
「…ああ、そうする」
 実際、この施設にいる者で、彼に勝てる者はすでに一人としていなかった。

 だが。
「…俺が出る」
 訓練と称し、次々と向かってくる兵士をことごとく叩き伏せた彼の姿に。ゼノスの興が乗ってしまい、止める周りの者達を押しのけ彼の前に出る。
 相変わらず仮面のせいでその表情は見えないが…。
「………。」
 クローンの彼の口元が笑みの形をとる。
 意せずして、チャンスが訪れたのだ。
 手加減無用の本気のぶつかり合い。不慮の事故が起こってもおかしくはない。

 ああ、早く…俺を殺して…。

 初めのうちは理性もあったが、次第にそれも邪魔となり…。


 気づけば、見知らぬ男とベッドを共にしている。
 一体何があってどうしてこの状況なのか。
 まったく理解できない彼は混乱したまま。
「…誰?」
 ふわふわなベッドの端まで逃げて思わずそう尋ねると、美丈夫はどこか意地の悪そうな笑みを浮かべ。
「なんだ。昨日はあれほど燃え上がったというのに…薄情な奴だ」
「はっ!?なっ!?えっ!!??」
 美丈夫の言葉に顔を真っ赤に染め目を白黒させていると、突然ずきりと頭が痛み。


 セピア色の映像が浮かび上がる。
 訓練場でざわめく兵士たち、その中には主治医を名乗る科学者の姿もあり。
『で、殿下!ご無事で…ひっ!!』
 肩で息をする仮面の男…皇太子のゼノスに駆け寄った兵士はゼノスの気迫に押され、一定距離から近づけずに息をのむ。
『…面白い…。が、まだ足りぬ』
 ゼノスはそう言ってマスクを外し、投げ捨てると。
『死んではいないな』
 ぐったりとした人物…今この映像を見ている自分自身だ…の腕を掴み。
『これを治療し俺のもとへ連れてこい。意識はなくても構わん』
 科学者の方へ放り投げてそう言ったその顔は、金の髪に青い目の…。



 映像が終わり頭の痛みも引いて、軽く頭を振って顔を上げるとそこにはあの美丈夫が。
 顔の近さにいつの間に寄って来たんだと体を下げようとするも、すでにそこはベッドの端。
「ちょ、近い…」
「先ほどは自分から近づいていたではないか」
「そりゃ、寒かったし寝ぼけて…。いや、あの、ほんと近い。ていうかどこ触って…!!」
 ベッドから降りる前に腰に手を回され引き寄せられ、分厚い胸板に手をついて体を離そうとするがうまくいかず。挙句には尻尾を掴んでくるので抗議しようと顔を上げ、はたと気が付いた。目の前にあるその顔の造形は映像の中で見たのと同じ…。
「あんた………ゼノス…皇太子…?」
 そう言ったとたん、先ほどまでにやにやと、抵抗するさまを楽しんでいたようなその顔がどこか不機嫌なものへと変わり。
「なぜ気づいた」
 そう問われ、どう説明すべきか悩んだが…どうせすぐ話が回るだろう、と素直に己の能力…"超える力"の事を話した。
「…それを信じろと?」
「信じる信じねぇはあんたの自由だけどよ…」
 怪訝そうな顔のゼノスに困ったように返し、居心地が悪そうに身をよじる。
「なあ、離してくんねぇ?」
「何故だ?」
「いや、なぜって…」
 いまだ体を密着させたままだったのでそう訴えるも、即座に問い返され。
「おかしいだろ…あんたは皇太子殿下で、俺は兵士でもなんでもねぇ…言うならあんたの暇つぶしだろう?」
 そんな相手と裸同然で密着するなどどう考えてもおかしい。
 そう訴えてみるものの。
「俺がかまわんと言ったんだ…。誰も、文句はなかろう」
「文句ねぇってか言えねぇだけじゃねーか」
 本来ならば皇太子殿下に対してなんという不遜な態度を。と咎められるところであろうが、当の本人はそんな彼の物言いを受け、面白いものでも見つけたというように笑みを浮かべており。
 クローンの彼はそんなゼノスの態度に、これはどうあがいても離してもらえそうにない、と諦め大きなため息をついて。
 しばらくの間、どうしたものかと居心地が悪そうにしていたのだが。
「…?」
 はたと、頭上から聞こえてくるのが規則正しい呼吸音になっていると気づいて。
 そーっと、顔を上げる。

 ……まじかよ寝てやがる…。

 瞳を閉じてすやすやと寝息を立てている姿に、皇太子のくせにあまりにも無防備すぎやしないかとため息をつく。
 と同時に、なぜここまで気に入られているのかがわからないと首をかしげた。
 確かに刃を重ねている間のゼノスは(仮面をしていたので表情こそわからないが)愉しそうではあった。
 だが、寝室に連れ込むほど気に入られるようなことなのか…と。
 しかし、いくら考えても結果は出ない。と、尻尾を握られたままだったので脱出は諦め、ゼノスの腕の中で力を抜き。
 太陽の位置から言ってまだ時間も早朝。もう一眠りくらいできるだろう…と言うか、この状態では寝ることくらいしかできない。
 背中に腕は回っているし、尻尾も掴まれているし…不可抗力だ。と目の前の胸板に頬を寄せてみる。
 心臓の音が聞こえる。
 暖かい。
 "生きて"いる人の体温を感じ、目を閉じれば一筋涙が零れ落ち…。

 この男の腕の中だと、悪夢を見ないでいられる。

 そう気づいたのは、拠点がエオルゼアの帝国軍の施設からアラミゴへ移動となり。頻繁に夜にゼノスの寝室へ呼ばれるようになって、何度目かの朝を迎えた時だった。
 呼ばれる、と言っても。ほぼそのほとんどがゼノスの戯れに付き合い刃を交え、こちらは瀕死の状態で気を失っているところを連れ込まれているわけなのだが。 
 ゼノスと刃を交える時、初めのうちは彼の機嫌はあまりよろしくない。
 なので、もとより手加減のないものではあるが…手足が千切れていないのが不思議なほどに手酷くやられる時もあった。
 それでも、クローンの彼は死なない。死ねない。
 クローンとはいえ、光の戦士だから…という事もあるが。科学者が徹底的に治療を行うからだ。
 人の形の形成に成功した唯一の実験体。
 それをそう簡単に破棄するわけにはいかない。まだまだ研究することは山ほどあるのだ。
 科学者のその狂気じみた研究心により、クローンの彼の死にたいと言う願いが叶えられることはなかった。
 そして、どうにか瀕死の状態から回復した彼が意識を戻す前にゼノスが連れて行ってしまうのだ。
 ポッドの中で一夜を過ごすことが少なくなった彼は"洗脳"を受けることもなく、悪夢も見ない。
 クローンの彼がゼノスと行動を共にしたがるようになるのは、当然の結果だった。
 そして、ゼノス皇太子が一人の蛮族に寵愛を注いでいるという噂が流れるようになり。


「……良いのかよ」
「…何がだ?」
 アラミゴ、ロイヤルパレスの謁見の間。
 その場所で、玉座に腰かけているのはこの地の統治を任されている皇太子のゼノス。
 彼は己の膝の上にミコッテ族を乗せているという状況で。
「…こんなことしてっから変な噂が立つんだぞ…」
 しかし、膝の上のミコッテ族…蛮族の英雄のクローンの彼も、口ではそうは言うものの…。
「くだらんな」
 ゼノスが一言そういって彼の頭を撫でれば、彼は一つため息をついて撫でられるままとなる。
 今でこそ普通の状態になっているが、初めのうちは周りの者はもちろんクローンの彼も抵抗していた。
 幹部たちにはこわごわと、クローンの彼は斬られることはいとわぬといわんばかりにずけずけと。おかしい、やめろと言っていたのだが。
「俺の行動に文句があると?」
 と言われれば幹部は黙るしかなく。
「お前は俺のペット(玩具)だ。そうだな?」
 そんなことを言われては、この場所(帝国)で立場などない彼は受け入れるしかなかった。


 こうして、クローンの彼がアラミゴで暮らすようになったのだが。
 相変わらず外に出ることは許されておらず、常に何かの検査をされ、体を動かすのはもっぱら施設内。
 時折、皇太子の視察についていくこともあるが。それでもその地の帝国施設より外へは出ることはかなわなかった。
 なので、本当に飼われているような状態の日々が続いていたのだが。

 ある日。
「……ご機嫌だな?」
「そう見えるか」
 ドマの領地、ヤンサへの視察へ出たゼノスが予定よりも早く帰還したうえ。いつものマスクを装備していなかったので不思議に思い、じっと顔を見て出たのが先のそれ。
 ゼノスは機嫌がよさげではあるが、周りの者達がオロオロとしているので外でなにやら一悶着あったな。と思いつつ、いつものように彼の傍へ寄った。
「っ!?」
 その瞬間、ズキリと頭が痛み浮かび上がる映像。

『…なるほど、生かしておいたのも無駄ではなかったか』
 装飾の壊れたマスクを眺めそう言ったゼノスが動かした視線の先には一人の忍び。
 ぼろぼろの状態で膝をつき、肩で息をしているその忍びの顔は…。

「っ!!!」
「………何が見えた?」
 突然額を押さえてうずくまった彼に、ゼノスが問う。
 悪夢を見た時のように鼓動が早い。
 ゼノスとの戦闘によりボロボロになっていた忍び。その顔はどう見ても…。
「あ…」
 額を押さえていた手で今度は胸元を押さえ、ゆっくりと顔を上げる。
 ゼノスは優しい笑みを浮かべているだけで何も言わない。
 この男は知っているのか、あの忍びの正体を。
「……………。」
 クローンの彼は己を落ち着かせるように息を吐いて両手を広げ、ゼノスの首に腕を回し。
「…なあ、今日はやんねーの?」
 そんな彼の行動に、ゼノスは少々驚いた湯に目を見開いて、幹部たちはざわつき。
「…?」
 何をそんなに驚いているんだ?と不思議そうにしている彼の様子に。
「…どこで覚えてきたんだ」
 ゼノスはくつくつと笑いながらそのまま彼を抱き上げ立ち上がり。
「俺も少々、物足りないと思っていたところだ…。退屈させてくれるなよ?」
 そして、いつものように手加減無用の"戯れ"が始まる。



 そんな、ある日。
 属州となっていたドマで反乱があり、それを防ぐことができず落とされたという報告に来た兵士。
「……。」
 帝国の兵士は皆フルフェイスのマスクをしているので、その表情はうかがい知れないが…ゼノスを前に、酷く怯えているのだけはわかった。
 幹部たちの小声での卑下を聞きながら、ゼノスが立ち上がる気配を感じ膝の上から降りて。

 ああ、羨ましい。

 斬り伏せられる兵士を横目にそんなことを思ってしまう。
 皇太子に不遜な態度をとっても、何度戦っても、死を与えられることもなくここまで来た。
 今では…下手をすれば、このアラミゴで。ゼノスの次に強いのが自分かもしれない。そう思ってしまうほどに。
「千人隊長フォルドラ・レム・ルプス、ゼノス様がおっしゃられた獲物を確保し、只今帰還しました!」
 そんなことを思っていると、いつの間にやって来たのか。帝国の兵にしては珍しく、このアラミゴでのし上がってきた現地民の女兵士の声に顔を上げる。
 その隣には見たことのないララフェル族の女の姿。
 フォルドラの話によるとゼノスの命で捕えてきたらしいのだが…。
「ゼノス・イェー・ガルヴァス……!あなた、何を企んでいるの!?」
 その言葉に、ゼノスも彼女へ視線を向ける。
「底なしの闇みたいな目……。本当に飢えている獣なのは、あなたじゃないのかしら」
 やはり外の者は皇太子であろうと関係なくはっきりものを言うな。
 そんなことを思いながらじっと見ていると、彼女が顔を動かした瞬間目が合い。
「っ!!!」
 まるで、鈍器で殴られたかのような激しい痛みを頭部に感じ、頭を抱えて体を丸める。
 流れ込んできた映像には、以前ゼノス経由で見た自分と同じ顔の忍びの姿。
「あなたたち…」
 この時、彼女もこちらの映像を視たようで。
「…なんてことを」
 頭を押さえたままではあるが、強い視線でゼノスを見つめ非難の声をあげる。そして気づくどうやら彼女も自分やミンフィリアと同じ、"超える力"の持ち主で、だから捕まったのだ、と。
 ゼノスはそんな彼女の視線を鼻で笑うと玉座に腰かけ、過去視による頭痛で涙目になっていたクローンの彼を膝の上に乗せ。
「…フォルドラよ、まず、その耳ざわりに鳴く豚を黙らせよ。俺では、命まで殺ぎ落とすからな」
 言葉の恐ろしさとは裏腹に、彼の頭を撫でるその手は優しかった。

つづく
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