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2018年06月04日08:22

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ジャー・ヒロ、ジャー・ヒロを語る 5−2

狐に化かされた音楽祭ー2

大河、渡良瀬川沿いの、葦(あし)が群生する広大な遊水地の何もない原っぱだっ
たけど、夜になると丸く黄色い月が昇り、河原を吹く風と数十人の観客との、まるで
秘儀のような不思議な祭りになった。当時仲良くしていたシェラードという老ラスタ
マンが「さあ、皆一緒になろう!カム、トゥゲザー」と言って、皆で手を繋ぎ合っ
て、大きな輪になり、当時絶頂期だったシャンティシャンティの最高の演奏とヒロ
(彼は音楽を捨て、九州で大工になった)の歌声を陶然と聴いたものだった。「あん
な素敵なコンサートはなかった」という人もいた。

・九時頃かなあ、ライブも終わりに近づいた頃には、ぞろぞろ町の人たちも現れた
し、パトカーまで出現する賑わいになっていく。これは例の広報車が効果あった訳で
はなく、な〜んもない所だから、音が遠くまで響き、あんまりうるさいから来た訳
さ。それでもやっと賑やかになったと、僕なんかは嬉しくなった。暗い夜空に輝く月
と、滔々(とうとう)と流れる渡良瀬川の水音を背景に、まるで神に捧げるような清
らかなコンサートはようやく終わりを迎えた。誰の顔も喜びに輝いていた。(レゲ
エっていいよなあ・・・)僕も叫びだしたいほど嬉しかった。

・でも結局十五万ほど赤字になり、トレンチが十万、向こうが五万背負ったっけ。僕
が「トレンチタウン」という名を店に付けたのは、勿論愛するボブ・マーリイが住ん
だ街の名ということもあるが、そこで暮らす無数の貧しい人々を忘れまいという意味
もあった。だから、バブルの時代がやってきて大儲けしたレゲエ業界の連中の噂を耳
にすることもあったけど、僕は(レゲエを金儲けの手段にすべきではない)という想
いが強かった。だからレゲエ・イベントでの赤字は、ある種当然という気持ちがあっ
て、だいたい毎回赤字だったけど、店と暮らしが続けられていけばいいと考えてい
た。全てをレゲエと愛すべきラスタファリズムの啓蒙運動に捧げたような日々だっ
た。

そして後になって聞いた話だが、某ミュージシャンが「演奏していても、観客が殆ん
どいなくって、まるで狐に化かされたようだったなあ・・・」と言ったと聞いて、
笑ってしまう。そう正しくその通りだった。あの橋詰さんは狐が化けたんだろうか?

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