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2018年05月28日21:12

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Sinfonia Dramatique 第3回演奏会

劇響は劇的に成長した!

☆Sinfonia Dramatique 第3回演奏会
■日時:2018年4月22日(日)11:45開場/12:15開演(16:15終演)
■会場:大田区民ホール アプリコ大ホール
※JR/東急「蒲田」駅徒歩3分/京急「蒲田」駅徒歩7分
■曲目
♪P.I.Tchaikovsky/バレエ音楽『眠れる森の美女』全曲op.66
■指揮:佐藤 雄一
■入場料:1,000円(全席自由/当日券あり)

Sinfonia Dramatique(通称『劇響』)は、佐藤雄一氏を音楽監督として迎え、2017年に演奏活動をスタートしたオーケストラ。
早くも第3回演奏会を開催した。

【過去の記録】
☆第1回演奏会
■2017年04月09日(日) 【開演】12時15分【開場】11時45分
■タワーホール船堀大ホール
■曲目
♪P.I.チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』1877年版全曲ノーカット
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1960904700&owner_id=26363018
いきなり3時間を越える大演奏会だった。

☆第2回演奏会
■2017年9月24日(日)【開場】13時00分 【開演】13時30分
■タワーホール船堀大ホール
■曲目
♪P.I.チャイコフスキー:スラヴ行進曲op.32
♪P.I.チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」op.32
♪P.I.チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調op.36
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1963061027&owner_id=26363018
3曲とも、ギネス級に遅いテンポで貫き通した衝撃的な演奏会。
それを最後まで緩むことなく演奏し切った劇響の力は大変なものだった。

劇響は、佐藤氏の音楽性を強く反映したオーケストラとなることが期待されており、今のところ遅いテンポの採用を厭わないことが一つの特徴となっている。

しかし、佐藤雄一=遅いテンポというのは誤りだ。
ベートーヴェンの「田園」や「英雄」の第一楽章などは極めて速い。
緩急自在にテンポを変化させながら、曲の性格を深くえぐって表現するのが佐藤氏の特徴と言うべきだ。
佐藤氏のもう一つの大きな特徴は、想像力の豊かさに支えられた、極めて繊細なニュアンスだ。
劇響の過去の演奏では、タワーホール船堀の大雑把な音響も災いして、デリケートな表情や音色が十分に表現されていなかったのが不満だった。

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会場となった大田区民ホール アプリコ。
過去3回聴きに来たことがあるが、今回一番音が良いと感じた。
劇響の音が、個々の奏者のバラつきが少なくクォリティが高かったためと思われる。

演奏は、芸術性高く、繊細で表現に富み、感銘深いものだった。
前2回の演奏会で感じた不満は完全に払拭された。

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もう演奏会から一月以上も過ぎてしまった。
近年、4、5月は多忙で日記が書けないことが多い。
それ以上に、名演に作文力がついていけないことも執筆を難しくした。
概要でも記録を残すこととしよう。

序奏から、この作品の本質が明らかにされる。
カラボスのテーマに表された邪悪さと、リラの精のテーマに表された清らかな善と美の対立である。
耳慣れた旋律であっても、佐藤氏の演奏は生きた表現が伴うから、その音楽の意味が初めて聴くように新鮮に発見されるのだ。

本編に入ると、通常のバレエよりはテンポが遅めだが、ごく自然な感じで、演奏が音楽の楽しさに溢れている。
バレエのBGMから解放されて、音楽が自立した魅力を発揮している。
非常に感心したのは、遅めのテンポでも生き生きと楽しい感じがよく表現されていたこと。
過去のオケでは、遅めのテンポで表現も硬くなる場合があった。
劇響の演奏力に感嘆した。

悪の妖精カラボスの登場で音楽は一気に緊迫する。
鼠の馬車に引かれて滑稽な感じで登場するが、間もなく、このカラボスの怒り、憎悪の凄まじさが音楽で明らかになる。
バレエだとむしろこの辺りは上手く表現されない。
見えるものにイメージが縛られるし、演奏もスケールが小さくなる。
カラボスの邪悪さと、リラの精の清らかな美の対比は、他に類のない力強さで、チャイコフスキーが強い思いをもって作曲したことを感じさせる。

現実の世界でも、善と悪、美と醜は常に対立しているけれども、それが目に見える形で意識されることは少ない。
音楽は、それをありありと聞こえる形にして、この世の真実を示すことができるのだ。
演奏の力あってこそ、である。

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今回の演奏のクライマックスは、第2幕第2場第19曲「交響的間奏曲と情景」だったのではなかろうか。
大変長く、そして静かな音楽なので、バレエでは大幅にカットされてしまうという。
劇響は、もちろんノーカットで演奏した。

――あまりにも素晴らしい、芸術性の高い演奏に圧倒された。
演奏の緊張感、アンサンブルの精度、表現の深みが並々でない。
【百年の眠り】を音楽で表現するとこうなるのか!
とても踊れる音楽ではないが、それだけにチャイコフスキーがどうしてもこれを描きたかった思いが伝わってくる。
佐藤氏と劇響はその思いを解放したのだ。

――そして、眠っていたオーロラ姫の呪いが解けたとき、一気に全てが解放されて生き生きと躍動し出す、そのコントラストの鮮やかさ!
かつての中央区交響楽団の、エニグマ変奏曲の名演を思い出した。
第13変奏の、死にも近い深い喪失感から、第14変奏の復活への劇的な変化。
思えば音楽は、バッハのロ短調ミサ曲の昔から、復活をこの上なく深く劇的に表現してきた。
この「眠りの森の美女」もまた、死と再生の物語であったのか。
過去から綿々を受け継がれてきた音楽の深さを掴み取る、佐藤氏の力あっての表現だ。
佐藤氏の演奏でも年に1、2度という神がかり的名演だった!

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この第2幕があまりにも素晴らしかったから、楽しいバレエ用の曲が続く第3幕は、もうオマケだと思っていた。
ところが、佐藤氏と劇響は、驚くほど入念に第3幕を仕上げてきた。
一曲一曲のアンサンブルの精度の高さ、音楽の面白さ!
アマオケ超えの名演が何曲もあった。
その演奏の楽しさは、佐藤氏ならではの、オーケストレーションや形式に対する鋭い感覚に支えられていた。
「長靴をはいた猫と白い猫」ですら、密度濃く表現された音楽形式の工夫が感じられる演奏だったのである。

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演奏会は大成功だった。
スタンディングで喝采する人たちもいたほどだった。
劇響は、佐藤氏最強のパートナーとなった。
劇響は今後第6回の演奏会まで既に予定されている。
次回は9月だ。

☆Sinfonia Dramatique 第4回演奏会
■日時:2018年9月17日(月祝)13:30開場/14:00開演(予定)
■場所:ティアラこうとう大ホール(江東区)
※都営新宿線/東京メトロ半蔵門線「住吉」駅A4出口徒歩4分
■曲目
♪D.Shostakovich/交響曲第7番ハ長調op.60「レニングラード」
■指揮:佐藤 雄一
■入場料:1,000円(予定)

ショスタコーヴィチの思いが76年の歳月を超えて蘇る。
ゆめゆめ聞き逃すことなかれ。
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