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2018年04月03日17:28

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「欲望の翼」

「欲望の翼」 '90 (香) 監督:王家衛


スクリーン上映は13年ぶり―とあるが
調べたら思惟太は
01年の王家衛特集上映の時観たのが最後だった。
この時は「花様年華」の公開に合わせた特集上映だった。

個人的には「恋する惑星」の完成度の高さを評価するが
王家衛の名を世界に知らしめたという本作の
“雰囲気だけで語る演出”の力量には感心するというか
呆れてニヤニヤしてしまう(笑)。

お話もキャラの造り込みもなし
“恋の気分” “60年代初頭の風俗” “温帯の外れ、亜熱帯の湿潤” “鬱屈した不良”…
それらの雰囲気だけで映画はできていて、
男の理性が捉えない―或いは捉えきれない―恋の気分を
映画が撮れてしまうのだ…と証明して
この映画が当時の若い女の子たちを魅了してしまっただろうことは
想像に難くない。
高級少女マンガそのものなのだもの!

クリストファー・ドイルのカメラは粘りつく湿度が
人を、物を、じっとりと汗ばませ
コーラの瓶も
寝乱れたシーツも
ランニングもブラウスもワイシャツも
それを纏う女のうなじも男の額も
濡れて重く
それらが画を決めることを企んでいる。

こんなカッコつけた映画は
その“カッコつけ方”を眺めるしかないので
画に資するスター俳優が必要で
王家衛のスター起用は
演技云々ではないのだろう。

何しろ映画には気分しか映っていないのだから(笑)。
そしてそれは
映画としてとても正しいことなのだ。

アンディ・ラウはなんでか突然銃をぶっ放さねばならないし
レスリー・チャンは刺殺されねばならなくて
その前に二人して
長いながいトタン屋根の上を消滅点へ向かって走り去らねばならないのだ。
あの右から左へスクロールする密林の緑のために。

天井の映る構図にトニー・レオンのアップを嵌め込むために
あの謎のラストの部屋は異様に天井が低く
トニー・レオンは終始屈んだ姿勢で身づくろいをせねばならない(笑)。

そうしてスター俳優たちは
王家衛の画の中で
永遠になるのである。
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