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2018年03月31日11:15

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3/30パルジファル@リンデン

得難い体験だった。

とにかく、涙が止まらなかった。第一幕クンドリー退出後の弦による鐘の動機、聖杯開帳、第二幕冒頭クリングゾル、第三幕聖餐の動機が初めて上昇音形に転ずる所、聖金曜日の音楽で短調から長調に戻る直前のバスのピチカート、Enthüllet den Gral, öffnet den Schrein! の6箇所だったのは克明に覚えている。
前にも書いたがこれが6年ぶりの実演。もちろんこの間録音等で何回も通しで聴いてはいるが、幸い実演派でまだ居続けてられている今の自分にとっては、やはりライブで空間を体感してナンボ。こんなにも自分はこの作品を渇望していたのかと、自分自身びっくりした。
この瞬間を味わうことが自分の人生の意味の一つなのだということを再確認。一般人にとっては理解しがたいキモい感覚なのだろうが、信仰を持たない自分は、こういうものを持っているからこそ、仕事等で口にも出せないような辛い思い等があっても心は常に安定して居られるのだと思っている。

という個人的感傷はさておいても、素晴らしい公演だったと思う。
バレンボイムの指揮は二つの場面転換の軽さ・落ち着きのなさ始め、種々で自分の嗜好との方向性の違いを感じさせるが、それでも総合評価はポジティヴ。神聖であるはずのこの作品はとにかく何でも露骨で生々しい彼の感性とは水と油とは個人的に思っているが、作品との適性・相性・スタイル(と自分が考えるもの)を乗り越えて自らの土俵で相撲を取って、そしてそれなりに説得してしまうのは、やはり大物指揮者の証明なのだろう。その点、バレンボイムは、昨年のブルックナー然り、昨日の聖セバスチャンの殉教全曲然り、これに該当する。
以前書いたことの繰り返しになるが、歌手を揃えるのもGMDバレンボイムの資質。敢えて脇役から始めるが、シュトルックマンは今まで聞いて来たクリングゾルの中でby farベスト。冒頭の「時は来た」の呟きからクンドリー退出後のパルジファル侵入を凝視する演技に至るまで、異次元。リング後期2作でアルベリヒが万全だとドラマに立体感が出るのと同じ。この人の全盛期にあまり実演機会が巡って来なかった(駆けずり回らなかった)のを改めて悔やむと共に、昨年のフィデリオに引き続き円熟の晩年に間に合った幸運を噛みしめる。
昨晩の某ワーグナー研究家は若干シャーガーのパルジファルには留保を付していて、その理由は「何を歌ってもシャーガー」なところにあると理解。そのスタイルはまさにその通りなのだが、それを踏まえてなお、彼のパルジファルは素晴らしかったとは思う。覚醒前のパルジファルなんか正に「いつものシャーガー」そのものだが、ただ第三幕の彼は明らかに第二幕までのパルジファルとのステージの違いを出しており、かつ、そっちの方も板についていたと感じた。彼一人で14型(確か)のフルオーケストラと互角に張り合えるその豊かな声量も相変わらず。3月連続で、しかも黄昏、トリスタン、パルジファルと聴くという幸運に恵まれたので、この後の喪失感のマネージメントが大変そう(笑)まあ、11月のリサイタル、来年6月のトリスタン再演があるだけ恵まれてるが。
ステンメは若干ヴィブラートがきつい。大丈夫か?一方であの独特の集中力は健在。
パーぺは若干残念な出来だったし(美声は健在だが、声の力が持続しない。そして引き出しが少なくなったのに伴い表現力も…)、アンフォルタスのハンブルク専属ラウリ・ヴァサールというのがとんでもないクソだった(何だこりゃ。クレイヴネスのハーゲン、ダウドのトリスタン等の黒歴史が走馬灯のように…)という点はあったが、ワーグナー歌手が引っ張りだこのこの時期、これだけ集めたことをまずは称えねば。

カーテンコール中、バレンボイムがマイクを取り、インテンダント最終日のフリムについて簡潔なラウダチオ(功績を称えるスピーチ)を述べて、フリムに繋ぐ。母国語でないのに、というかはっきり言って拙いドイツ語であるにも関わらず、満場の観衆の心を一気に掴むこの能力に、この国に生きる外国人として素直に深い敬意。この人、本当に政治家としても間違いなく大成できただろうし、行政官的資質が特に問われる独劇場のGMDというのはある意味天職だったのかもしれない。

パルジファルは、この長いブランクの後、火曜日のミキッシュ(久しぶり!)、金曜日のベルリンフィル。キャストを見直してみたら、実はかなりいいかも。クンドリーは今回と同じ、スケルトンは流石にシャーガーには敵わないだろうが彼は彼で立派、クリングゾルの二キーティンは諦めるしかないが(というか、ここまでは昨シーズンのトリスタン@メトと同じだな…)、フィンリーのアンフォルタス、そしてゼーリッヒのグルネマンツと、相当期待できるのでは?後はラトルだな。


• Musikalische Leitung
o Daniel Barenboim<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/daniel-barenboim.12687>
• Inszenierung
o Dmitri Tcherniakov<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/dmitri-tcherniakov.19820>
• Bühnenbild
o Dmitri Tcherniakov<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/dmitri-tcherniakov.19820>
• Kostüme
o Elena Zaytseva<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/elena-zaytseva.83202>
• Licht
o Gleb Filishtinsky
• Chor
o Martin Wright<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/martin-wright.83429>

[X]
• Amfortas
o Lauri Vasar<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/lauri-vasar.32371>
• Gurnemanz
o René Pape<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/rene-pape.12813>
• Parsifal
o Andreas Schager<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/andreas-schager.80531>
• Kundry
o Nina Stemme<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/nina-stemme.50169>
• Knappen
o Sónia Grané<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/sonia-grane.79944>
o Natalia Skrycka<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/natalia-skrycka.108539>
o Florian Hoffmann<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/florian-hoffmann.19239>
o Linard Vrielink<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/linard-vrielink.125817>
• Blumenmädchen
o Elsa Dreisig<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/elsa-dreisig.111451>
o Adriane Queiroz<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/adriane-queiroz.12735>
o Anja Schlosser<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/anja-schlosser.105770>
o Sónia Grané<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/sonia-grane.79944>
o Narine Yeghiyan<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/narine-yeghiyan.64117>
o Natalia Skrycka<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/natalia-skrycka.108539>
• Stimme aus der Höhe
o Natalia Skrycka<https://staatsoper-berlin.de/de_DE/person/natalia-skrycka.108539>

o u.a.
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