高山岩男先生にお会いしたのは、わたしがまだ大谷大学大学院に在籍していた頃だと思う。
京都で年に一度、「西田・田辺記念会」という講演会が京都大学を中心に行われ、大谷大学でも何回か開かれたことがあった。
この「西田・田辺記念会」は、戦前の京都帝国大学文学部哲学科で西田幾多郎、田辺元に学んだ先生方の�狷荏覯餃瓩箸い�色彩があり、毎年、原野栄二先生も欠かさず出席されていた。
その会では、西田哲学と田辺哲学について、一人ずつ講演を行うことになっており、下村寅太郎先生、辻村公一先生、武藤一雄先生、野田又夫先生なども公演されたことがあり、その地に創文社や筑摩書房から刊行された西田哲学、田辺哲学の論集にそこで話されたことをもとに原稿とされていたことも多かった。
「きみが西谷さんと原野さんの共通のお弟子の〇〇くんだね。」
と、高山先生に声をかけていただいたのも、たしか京都で開かれた「西田・田辺記念会」のときであったと覚えている。
「なかなか、おもしろい論文を書いているようじゃあないか」
と、半分以上のお世辞を高山先生におっしゃって、わたしが恐縮していると、原野先生が、
「西谷さんの授業にも出ていて、西谷さんもなかなか優秀だといってもらっているんですよ」
と、高山先生に同調するような言われ方として、わたしは赤面するしかなかったの覚えている。
「今、何を読んでいるのかな」
と、高山先生に聞かれて、
「カントの『判断力批判』を読んでいます」
と、答えると、
「あの本はなかなか難しい本だから、骨が折れると思うが、カントはあの『判断力批判』を宗教を念頭に置いて書いていたと思うから、カントの『宗教論』も読めばいい」
と、高山先生に行ってもらったことを今も覚えている。
しかしわたしのなかでカントの『判断力批判』は、カントの美学と政治哲学ということが頭にあったので、高山先生の�爛�ントは『判断力批判』を宗教を念頭に書いていた�瓩箸いΩ斥佞�どうも理解することができなかったこともお゛得ている。
「彼は親鸞にも関心があって、ゆくゆくは『教行信証』をじっくり読んで、そちらの方面から西田哲学・田辺哲学でものを書かそうと西谷さんと話をしていて」
「じゃあ、武内義範さんみたいな哲学をされるつもりだね。いいことだ。」
と、高山先生と原野先生が話されていて、オイオイ、そんな話は聞いていないぞと思ったこともよく覚えている。
1993年7月に高山先生が亡くなりになり、1999年7月に高山先生のお弟子である花澤秀文氏が人文書院より『高山岩男−京都学派哲学の基礎研究』という一冊を出されたとき、原野先生からこの花澤秀文氏の『高山岩男』の書評を書けといわれ、書かしてもらったことがある。
以降、花澤秀文氏とは年賀状のやり取りをさせてもらって、またご子息の哲文氏の『高坂正顕−京都学派と歴史哲学』（燈影舎）も読ませてもらった。
わたしが高山先生の著作で拝読したのは、学生時代には、西哲叢書の『ヘーゲル』と岩波書店の『西田哲学』『続・西田哲学』『哲学的人間学』など、そして大学を離れた会社勤めをするようになってからは、こぶし書房から復刊された『世界史の哲學』だけであるが、『世界史の哲学』等は現代において十二分に通用する哲学書だと思ったことがある。
高山岩男はもう一度、評価されてもいい哲学者だと考えているのてある。
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