頭がいいというのも，いろいろあるようです。

　わたしは今，小学校で個別にAくんという子を見ています。Aくんは４年生ですが，九九や漢字がなかなか覚えられません。自分の名前を何とか漢字で書けるようになりましたが、油断すると間違えます。ときどき平仮名も間違えることがあります。「東郷町」と書けるようになるのに１か月かかりました。九九は今のところお手上げです。

　先週、そのAくんとトランプゲームの神経衰弱をやりました。２回やったのですが２回とも圧倒的にわたしが負けました。そして今週「リベンジだ」と言って再挑戦しました。５対２１で完敗，返り討ちにあいました。もう何回やっても勝てる気がしません。
　Aくんは魔術師のように札をどんどん開いていきます。まぐれではありません。きちんと覚えているのです。
「どうしてそんなに覚えてるの？」
　と聞くと、
「先生は大人だから、記憶力が衰えてるんじゃないの」
　と言われました。
　Aくんの言うように自分の記憶力が衰えているのかもしれません。が，たぶんそれだけではないようです。
　文字や九九がまったく覚えられないAくん，けれどもトランプの札の位置は正確に覚えられます。しかも短時間に，たくさん覚えられます。

　頭がいいとか悪いとか悪いと言うけれど、「頭がいい」というのにはいろいろな能力があるんだと思わざるを得ません。