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2018年01月15日05:16

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「イスラーム国」の壊滅と中東の今後1

 昨年(平成29年)、米軍を主導とする有志連合などの支援を受けた地元勢力の作戦によって、いわゆる「イスラーム国」(ISIL)はイラクとシリアの大半で駆逐された。ISILは、組織としては事実上壊滅したと見られる。ただし、残党が各地に分散して活動を続けていると見られる。またISILの思想に同調する者が欧米・東南アジア等でテロを行うことが予想される。
 ISILの最高指導者アブバクル・バグダーディは、2014年夏、当時ISILが実効支配していたイラク北部のモスルにあるヌーリ・モスクで、自らを「カリフ」(預言者ムハンマドの後継者)だと宣言した。ISIL掃討軍は、昨年前半モスル奪還作戦を進め、6月にモスルの奪還を成し遂げた。劣勢に立たされたISILは、ヌーリ・モスクを爆破して撤退したとみられる。6月29日イラクのアバディ首相は、モスクの奪還は「ISという偽りの国家の終わりを意味する」と声明で述べた。
 その後、掃討軍はISILを壊滅する作戦を優勢に進めた。ISILは、2014年にシリア北部ラッカを「首都」に定め、実効支配していたが、掃討軍は、昨年10月ラッかを陥落した。10月17日シリア民主軍(SDF)報道官は、「戦闘は終結し、ラッカを解放した」と述べた。自称「首都」の陥落でISILという疑似国家は事実上、崩壊した。バグダーディについては、死亡説が流れているが、死亡の確認はされていない。その他の幹部の所在は不明である。
 12月21日有志連合の調整を担当するマクガーク米大統領特使は、シリア、イラク両国でISILが支配していた地域の98%が奪還されたと発表した。ただし、シリアを中心に約3千人のISIL戦闘員が活動しているとし、「戦いは終わっていない」と強調した。
 今後の予想としては、ISILの残党が他の地域に存在する集団と連携して、組織の立て直しをはかり、空間的な疑似国家の建設ではなく、もともとのテロ活動の拡散に方針を転換して、活動を行うことが考えられる。
 その表れの一つと見られるのが、昨年11月にエジプトで起こったテロで、死者は同国では過去最大規模の305人に上った。標的となったのは、エジプト北東部シナイ半島のアリーシュ近郊のモスクだった。このモスクには、ISILが異端視するイスラー教の神秘主義(スーフィズム)の信徒も訪れるため、攻撃対象にされたと見られる。犯行は、ISIL傘下の過激派武装勢力「シナイ州」によるという見方が有力である。シリアとイラクでの壊滅が近づくなか、ISILの関連組織がシナイ半島に拠点を移しつつある可能性もある。また追い詰められたISILが、大規模なテロを起こすことで過激思想への同調者を鼓舞する狙いがあると見られる。
 過激組織としてのISILは、中東・北アフリカではシリア、イラクのほかリビアやイエメン、エジプトなどに連携組織を持ち、東南アジアのフィリピンでも政府軍が5カ月に及ぶ戦闘を強いられた。また、欧米には同調者が相当多数おり、ローンウルフ(一匹狼)型のテロが頻発している。各地に広がったISIL系の集団、同調する個人の活動をすべて沈静化することは困難な課題である。
 また、ISILが組織的に壊滅した後は、クルド人の存在が重さを増すだろう。ISIL掃討作戦の主力となったシリア民主軍(SDF)は、アラブ人とクルド人が混在した民兵組織であり、クルド人が主体となっている。
 クルド人は、シリア、イラク、トルコ、イランにまたがり、それぞれの国で少数民族として生活している。国家を持たない世界最大の民族といわれる。クルド人には独立への志向が強い。昨年9月、イラク北部のクルド自治政府は、モスル奪還に貢献した余勢を駆り、自治区やその周辺の実効支配地域で独立の是非を問う住民投票を強行した。これに対し、イラク中央政府はクルド自治政府が実効支配する地域に進軍し、軍事的緊張が高まった。この時は、クルド側の指導者が退任したことで、事態は収まった。だが、ISIL掃討で成果を上げたことで、クルド人は今後、独立への志向を強めるだろう。そのことが中東情勢に新たな問題を増大させるだろう。

 次回に続く。
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