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2017年12月24日20:18

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1997タイ旅行【19】はじまりはいつもトラブル〜いろんなことがありました〜

 飛行機がまる一日遅れるという、最初から波乱含めの幕開けにやや不吉な予感を禁じ得なかったタイの旅。思えばどんな国でも、スタートは苦々しい思い出が多い。
 ケニアではナイロビからナショナルリザーブに向かう途中、調子に乗ってカッ飛ばし過ぎた運転手が運転を誤り、車が横転、いや逆さまにひっくり返るという事故に遭う。額を割って同乗者1名が入院。私は打撲傷を負う。
 エジプトでは空港で怪しいツアー会社につかまり、ピラミッドツアーを手配してもらったところ相場の3倍ちかい料金をぼったくられる。
 メキシコでは屋台のタコスに大当たり。食中毒で病院に担ぎ込まれる。
 事故や病気の類いならば「あんなこともあったけどまあしょうがない」という風にも思えるのだが、現地人に騙されたという思い出だけは、いつまでたっても思い返せば腹が立つ。エジプトという国の洗礼かこれが!と怒った友人と私は、その後は「怒る外国人」モードでずる賢いアラビックどもに立ち向かったのであった(バーレーンの空港で胸を触ってきたエジプト人もいた。おやじ、一生許さん)。
 そしてタイ。バンコクはドン・ムアン空港に降り立った我々は、タイ国鉄にゴトゴト揺られて首都の中心部にある駅、ファランポーン中央駅に着いた。
「どこに行く?チェンマイ?ピピ?プーケット?」
と寄ってくるバスの客引きたちをかわし、駅の窓口に向かう。我々の最初の目的地は、プーケットの近くにあるクラビという町だ。私が以前エジプトで仲良くなった男性が、そこでダイビングショップの手伝いをしているというので、訪ねてみることにしたのだ。鉄道でまずスラー・ターニーという町まで行き、そこからバスでクラビに向かおうという計画である。
 ところがどっこい南に下る列車の座席は現時点から2、3時間先まで全て売り切れだという。6時間以上待たねばならぬという話で、気の毒そうな顔をして説明してくれた駅員に礼を言い、向きを変えるとまたしても客引きが寄ってきた。
 長距離バス、特に夜中のバスは盗難の危険があるというからなるべく避けたかったのだが仕方がない。試みにバスの料金を訊いてみると、ちょっとびっくりするようなお値段(高額)である。こりゃ〜騙されてるかもしれんな〜という思いが脳裏を掠めたが、スラー・ターニー経由ではなくクラビに直接行ってくれる、そして出発時間が迫っているという話だったので、チケットを買った。
 やっぱり騙されてしまった。タイの客引きは、エジプトに比べてさほどしつこくない。「いいって」「でも」という問答も、2回くらい繰り返せば「そうか」と言って去ってゆく。だから、信用したのに。「5時ちょうどのバスがある。あと20分しかないよ」という話だったはずなのだが、旅行代理店の椅子に座って待つこと既に50分、もう5時半である。どういうこっちゃこらー、と思うのだが他数名の外国人旅行者たちもおとなしく待っているので我々もトイレを借りたり、通りでイカを焼いている人を眺めたりして時間をつぶす。
 午後6時、ようやくお迎えが来た。どちらかというとエアコンなしビデオなしでもいいから安い普通バスに乗りたかったのだが、どうにもこのバスは旅行者用のバスであったらしい。隣に座るはエルサレムからやって来たイスラエル人夫婦。乗り込む時に手渡されたお弁当がなんだか油っぽいパンとドーナツでちょっとブルー。走り出してしばらくしてから始まった映画が『ウォーターワールド』でまたまたブルー(ハゲー、引っ込めー)。更に、隣席のイスラエル人が買ったチケットは我々のチケットの6割ほどの値段だったので一気に真っ暗な気分になり、倒れ込むように眠る。
 しかし友人には災難がもうひとつ待っていたらしく、トイレ休憩の時に泣きそうな顔で「手すりに足を乗せて寝てたら、隣のイスラエル人のおやじに足をキューッとはさまれた」と報告してきた。このイスラエル人のおやじ、自分のお弁当を未開封の状態でくれたり、豆とレーズンでできているっぽいコーンフレークのようなスナック菓子をわけてくれたりとなかなか良い人ぶりを発揮していたのに、正体はただのすけべおやじであったのだ。若い女の子が打っているとジュースをくれたりする、パチンコのおやじと一緒である。「今度はさまれたら蹴飛ばせ」と言ったら、寝惚けたふりして本当に蹴飛ばしたようだった。
 休憩の後しばらくして突然バスが故障。1時間半、待ちぼうけ。のんきに酔っ払っている乗客もいるが、イスラエルのおやじは「バスを替えるべきだこりゃー」と怒っている。友人は寝ている。私はバスの外に出て、ぼうっとしている。なんてこったいタイのバス。深夜3時、ようやく出発。みんな寝る。
 うすぼんやりとしたミルク色の闇の中、誰かがつかみ合う音で目が覚める。後部座席に座っていたガタイのいい白人旅行者が、昨夜遅くに途中から乗り込んできたタイ人の男を床に押さえつけてなにやら大声で叫んでいる。そしてまた激しいつかみ合い。旅行者に誰かが加勢し、タイ人はようやく取り押さえられた。
 眠くてぼんやりしていたのであまり覚えていないのだが、後で聞いたところによるとそのタイ人、眠りこける旅行者のウェストポーチを探り、財布を盗もうとしたらしい。怒りに震える旅行者が「出てけ!今すぐ降りろ!」と叫ぶや否や、バスを飛び降りるタイ人。バスの床には、そのタイ人の履いていたサンダルがぽつん、と残されていたのを覚えている。
 突然の出来事にみんなビックリして目覚めたが、騒ぎが収まるとあっけないほど素早くまた、眠りに戻って行く。時刻は午前6時30分、窓の外を見ると、深い霧の中に木々が続き、それが朝陽を受け桃色に染まってゆく、それはそれは幻想的な光景であったことよ。そしてよりにもよって、あんな屈強そうな男の荷を探るとは、なんとまあ大胆なタイ人であったことよ。
 翌朝9時、バスはスラー・ターニーに到着。乗り換えなしだと聞いていたのにここで2時間も待たされ、睡眠十分気力十分のわたくしはいよいよキレそうである。クラブ兼レストラン兼ツーリストインフォメーション兼ゲストハウスであるという待機場所のトイレに入り、とりあえずトイレットペーパーを盗んで気を鎮めようとするが紙が置いてないので更に逆上、壁と便器を蹴飛ばす。
 しかし、11時過ぎにようやく発車したクラビ行きバスは、乗客のほとんどがタイ人、ローカルなムードがなんとも心地よいので少し落ち着く。窓の外には赤や紫や黄色や桃色や白の花が咲き乱れ、南国の樹も目に緑鮮やか、赤い土との対比がまぶしい。ところどころに、植樹されたのだろうか、奇妙に整然と並んだ落葉樹がすっかり葉を落とし、白く細々とした姿を晒す。そこだけが異彩を放ち、痛々しい。
 激しい、「こんなに雨が降っても大丈夫!」というような、まるでこれは車のフロントガラスのコーティングテストかというような大粒の雨がバスをドッと襲ってはあっという間に去ってゆく。こうして20時間かけて、我々はようやくクラビに到着したのであった。「最初のトラブル」はもう結構、この先の旅が無事に続くことを祈りたい。
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