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2017年12月24日20:04

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1997タイ旅行【14】バンコクは今日も・・・(その3)

 バンコクは雨だった。明け方、私は夢を見た。何故か日本の知り合いがみなバンコクに来ていて、雨に降られてたいへん困っているという夢だった。
 変な夢を見たもんだと思いながら洗濯物の様子を見に宿のベランダに向かうと、嘘のように大雨が降っていた。
 なんということであろうか。今日は朝から水上マーケットを見に行くことになっているのだ。慌てて眠りこけている友人を起こし、雨が降っていると告げると、彼女は「バンコクに来てからろくなことがない」という暗い目をして♪傘がない〜♪と歌い出した。
 幸い、旅行代理店の用意した車に乗っているうちに、雨は止む気配を見せ始めた。さすが熱帯モンスーン気候の地域だけあって、雨が降るときはドドッと降るが止むときも早い。あれよあれよという間に青空が広がり始めた。早くもカカッと照りつける陽射しが痛い。
 休憩を一回はさんで、さまざまな国籍の人々を乗せた車はダムヌン・サドゥアクの運河に着いた。既に時計の針はお昼に近い時間をさしている。ここのマーケットが一番活気づくのは早朝6時から7時の間だというのに・・・。しかし、バンコクから80キロ離れた場所に行くために真夜中に出発するツアーなどなかったのだから仕方がない。車を降ろされた我々は、やたらニコニコ笑っているガイドのおっさんの誘導で、マーケットに向かうボートに乗せられた。
 ボートは激しいエンジン音を轟かせながら運河を進んで行く。運河の脇には高床式の家々が並んでいる。普通の民家の他に、駄菓子や日用品を売る商店や床屋があり、目が合ったおじさんや赤んぼが手を振ってくれる。いいないいな、ここに住みたいな。
 やがてボートはマーケットに到着。手漕ぎの舟に乗り換えてのたのた進む。来る時間が遅すぎて活気ある時間帯が過ぎてしまったせいなのかそれとも観光化されてしまったのか、すれ違う舟は観光客を乗せたものばかり。売っているのはみやげものの帽子とか棒に刺したパイナップルとかバナナとかばっかり。
 船頭のおばちゃんはみやげもの屋の軒先に舟を横付けしたのだが、我が舟のお客さんたちは誰一人興味を示そうとはせず、それどころか会話もまるでない。皆良識ある人たちばかりで、このようにあからさまに観光名所化された「水上マーケット」に連れてこられたことに対して不機嫌になっているのだ。エンジン付きボートに乗り込んだ時は、皆ワクワクドキドキ感情の高まりを隠しきれず、パシャパシャ写真を撮っていたというのに。我々のすぐ前の席では、スイス人とおぼしき金髪のおねえちゃんが、ボートが揺れて飛沫があがるたびに「キャー水がー」てなことを言ってはしゃぎ、隣に座ったドイツ人とおぼしきメガネをかけた実直そうなほっぺの赤い青年、快活な彼女に話しかけられ思わず言葉がどもりがち、というちょっとしたドラマが展開していたというのに。
 スイス人もドイツ人もアメリカ人とおぼしき短パンの3兄弟も、勿論わたくしたち日本人ちびっこ2人組も、申し合わせたように押し黙っている。「いらっしゃい、みやげものどうですかー」という売り子のねえちゃんの声にチラッと見るも(またこれがどーしよーもない紙でできた人形とか葉っぱでできた帽子とかでよー)、ハァー、とひとつため息が出るのみ。重い。空気が重い。舟が店を離れる時に誰かが漏らした一言が、すべて我々の気持ちを代弁していた。「グッバイ、スーベニヤー(おみやげ)」・・・。
 舟は、めしも食えてみやげも買えるという高速道路のサービスエリアのようなところに着いて、そこで有無を言わさず降ろされ、自由行動となる。これは我々の英語聞き取り能力が足りないことが原因でないとはっきり言っておきたいのだが、ガイドのおっさんは集合場所も集合時間も教えてくれなかった。従って、皆なんとなく舟を降ろされた場所の半径3メートルあたりから離れることができず、だからというわけではないのだが、みやげものを買いに行く人など一人もいやしない。あ、アメリカ3兄弟の一人がどっか行った、と思ったら水を買いに行っただけだった。我々も、朝食抜きだったのでパイナップルを買ったのだが、これが一人前パイナップル丸ごと一個だったので、腹が水っぽくなってどうしようもなかった。
 やっとのことでお迎えがやってくるが、帰りの車は案の定またみやげもの屋へ。トイレに行って水っぽい腹をスッキリさせたらまた腹が減った(どうにもあまり楽しい思い出ではないので文章がぶっきらぼうになっている私)。することがないのでアメリカ3兄弟たちとボケーと日向ぼっこすること小一時間、車の乗り換えを命ぜられ、我々はようやく町への道のりをたどることになった。
 私は何故かワゴン車の運転席と助手席の間の狭いシートに、運転手とタイ人ガイドに挟まれるようにして押し込められる。彼たちが「どっから来たんだー、日本かー、日本のどこだー」とか尋ねる声に答えるのが面倒なので「とーきょー」と嘘をつき、そのまま声を無視してがっちょり眠った。後部座席に座った友人は、隣に座ったビジネスマン風のタイ人に、これも嘘をついたつもりで「横浜から来たー」と言ってしまい、横浜の人口は何人くらいか、横浜の名物とは何だ等々質問攻めにされ、「ままマリンタワー」とか、必死になって答えていたようだ。心細い声で、何度か「ねー、横浜の人口ってどのくらいー」とか助け舟を求められたのだが、わたくしは「しらんー」と言い捨ててまた眠ってしまったようだ。と、のちに責められたがそんなことはまったく覚えていない。わたくしが覚えていることといったら、運転手がカーステレオの音楽に合わせてしきりに口笛を吹いているのだが、それがたいへんな音痴であったことが印象的だったことくらいである。ちなみに運転手のにいちゃんは、ちょっとバカそうではあるがなかなかいい男であった。しかし、そんなことはどうでもいいくらい、水上マーケットツアーはくだらなかった。ああ、2度と行くか。
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