私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。並木義江と川口が喫茶店で会っている。コーヒーとコーラがテーブルに置いてある。
並木
「待った。ご免。仕事があって」
川口
「こちらは暇が多いからいいさ。相談に乗ってくれますかね」
並木
「相談って、何さあ。お金を貸してくれっというのは辞めてよ。こっちも借金をようやく返したところなんだからね」
川口
「それはないよ。就職の相談ですよ」
並木
「だれの。私の知っている人」
川口
「当たり。俺の就職の相談なんだ。フリーターしかやったことがないだろ。まともに正社員をやったのはサクラ学園にいた5年間だけだ。だからハローワークに行っても、派遣会社に行っても、断わられてしまったんだ。だれかに紹介してもらえと言われたんだ」
並木
「へー、そんなこと言われたんだ。こっちの仕事も紹介できることもないし。困りましたね」
川口
「森井さんと佐々木君へ相談に行っただけど、断わられてしまった。それで恥をしのんで、並木さんにところへきたんだ。俺でもできる仕事ないかな」
並木
「昔の世話になったから、力になりたいけど。難しいなあ。単発のバイトでもよければ」
川口
「この際、文句は言いません。よろしくお願いします」
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