プレイレポ:ＴＮＸ『アイスブルーのキス/Fate spinner/今宵、追憶を消せ』
ハイ、先週、っていうかもう先々週になりますが、カッツェでまたしても！ Ｎ◎ＶＡをさせて！ いただきました！ その時のレポートです。
今回はほんと濃厚なプレイングだったので長いレポートになりましたが、お付き合いいただければ幸いでござんす。
■トーキョーＮ◎ＶＡ The Axleration『アイスブルーのキス/Fate spinner/今宵、追憶を消せ』
シナリオ＆ＲＬはコバヤシさん。
シキガミ＆エトランゼ――『オルタナティヴサイト』で追加された２スタイルをフィーチャーした時空改変シナリオでした。
エトランゼは『オルタナティヴサイト』付属１本目でゲストとしてはフィーチャーされてましたが、キャストとして明確に指定はされてなかったのでそのニーズに応えてくれるハンドアウトが存在するのが、まずグッド。
更に、シキガミ要素はキャスト�，髻峺汽轡�ガミ」に指定して導入に使い、しかもそれがキャスト�▲┘肇薀鵐爾諒�語と密接に関わっている――という、要素が有機的に結びついたダイナミックな感じを存分に味わうことができました。
全体的に「未来人」「シキとの絆」を物語としてがっつり喰うための仕掛けがとても練られて配置されていて、手ごたえ抜群の名作でした。シナリオタイトルがブン長いのもちゃんと理由があって、「おおー！」とひざを打ってしまいましたよ。
というわけで、もう１つの未来を掴み取るため運命（Fate）に抗ったキャストは以下の５人です。
▼片倉響（カタクラ・ヒビキ） 17歳女性
コモン◎、カタナ●、カゲ
日本刀型シキガミ「メモリア」によって非日常に誘われ、彼女を失うことで非日常に取り残された少女。既に日常は、殺しの天才として開花した彼女を受け入れる場所ではなくなっていた。破綻した生命倫理を首の皮一枚で「こっち側」に繋ぎとめながら、失われた半身を求めもがくデッドリーガール。
ＰＬは二次元さん。
▼玖（キュウ） 20代男性
エトランゼ◎●、クロガネ、カブトワリ
全てが凍りついたニューロエイジの未来から、世界を救うためやってきた男。沈着冷静なフルボーグだが、鋼の声の奥にヒューマニティを宿し、謹厳実直で至誠を尽くすタフガイ。超身体能力を持ち、所有する未来技術超絶兵器「ムーンスライサー」は文字通り月すら砕く。
ＰＬはシェンツさん。
▼ラフィオ・“アンジェ”・ラフェイブラ 22歳女性
ミストレス、イヌ◎、ニューロ●
ケルビム捜査官。出自は劣悪環境で天才電脳犯罪者として馬車馬の如く働かされていた児童で、法以上に、未来を作り出す／かつての自分自身である“子ども”を守護することに執着する。
ＰＬは田中。
▼“鉄（ジギーロス）”イルマ＝リンドステット 外見20歳女性
アヤカシ、バサラ◎、カブト●
常にたおやかな笑みを崩さない信教司祭にして機甲聖人。その正体は、ケント・ブルース大統領の部下として悪辣と共にあった悪魔が、小聖母と“約束”し心変わりした姿。神出鬼没で底が見えないが人類に対しては庇護の姿勢を貫いている。化物そのものの耐久力は、“鉄（ジギーロス）”の異名通りに火砲の直撃すら意に介さない。
ＰＬは新米さん。
▼“ＰＷ”クリント・ディビス 38歳男性
チャクラ＝チャクラ、イヌ◎●
北米連合出身。ケント・ブルースの部下によって娘を奪われ、アヤカシに対抗した結果差別主義者として凄惨な私刑に遭うというこの世の地獄を見てきた男。大切なものを次々と失いつつも、他人への優しさと己の倫理を決して忘れず、内に燻る激情との付き合い方を知っているハードボイルド。なおＮ◎ＶＡに来てから拳法が異常に強くなった。
ＰＬは浅間忍さん。
■雑感
久々にＰＬ５人Ｎ◎ＶＡという特盛りなシチュエーション。ともすれば要素が衝突して毀れてしまうものも出てくる状態ですが、皆さんの周りを見切った素晴らしいプレイングで大満足のアクトとなりました。
クリントは、キャスト中最も“大人”で“現実的”な立場からの知見を代表してくれました。シナリオの圧倒的なスケールの大きさに対し、あくまでＮ◎ＶＡの、ニューロエイジの住人としてのスタンスを貫くクリントがいてくれたのは、スケールの大きさに意識が空中分解しそうになっていた僕にとってとてもありがたく、また全体のドラマの緩急にも大きく貢献していたと思います。
特に、「アヤカシに対する復讐者」としての自分の業を冷静に自覚した上で制御しない、と宣言する様は非常にハードボイルドでした。浅間さんはこういう「いち市民の目線」が抜群に上手くて、毎回感動させてもらっています。クライマックスになった途端常人ムーヴを投げ捨て、魔界都市新宿みたいな超カンフーで敵をボコボコにし始めたのも痛快でした。この人にリンチできた民衆が凄いよ。
イルマは、エトランゼという“ニューロエイジの、まだ誰も知らない異常”に対し、アストラルという“ニューロエイジの、既に知悉された異常”を担当して、エトランゼの異常性を際立たせてくれました。勿論それには、イルマ自身のキャラ立てのキレが不可欠。悪魔の一族として「ミューと人類守護する契約を果たしている。それを破ると死ぬから絶対守る」という、アストラルな特異性とアクトへ参加する動機付け、他キャストからの信頼感を一挙に得るテクニカルなプレイングが冴え渡ってました。
まあ時々「ロリ聖母に執心過ぎる……」となるタイミングもありましたが些細な問題ですね。実際、超ダメージ食らっても平然としてるデータが超人度を裏打ちしており、データとキャラクターが絶妙に一致していて大変良かったです。
僕もラフィオで参戦。クリントとは、ハウンドとケルビムで所属は違えどイヌ同士、ということで、僕はかなり情に拠ったプレイをさせていただきました。実は前回まで過去はそんなに決めてなかったんですが、今回はプレイ密度を上げようと、“かつての己自身”として“子どもを守る”ことをキャラクターモチベーションに設定。「法よりもエゴを取る」ニューロ●なイヌとして、結構うまいこと動けたと思います。
また、クリントが落ち着いて対応できる精神の太い人だったので、僕は慌てふためく役もさせていただきました。エトランゼの超技術に「こんなの見たことありませぇん！」と途方に暮れるの滅茶苦茶楽しかったです！ 美味しい役どころでしたネ。あと、〈オシログラフ〉で未来人のことを信じる根拠を作れたのは、我ながら状況にハマったプレイングができたと思います。
そして、シナリオテーマのタロットにかかわる、キャスト�▲┘肇薀鵐爾肇�ャスト�仝汽轡�ガミ。ここの熱さは……すごかった！ ちょっと語ります！
まず玖は……もうやることなすこと全てかっこいい！ シェンツ先生、ベストコンディションの姿である！ シェンツ先生の高まりに高まった「ＳＦっぽいことしてえ」「物凄い破壊力の小型砲をぶっぱなす超戦闘機械やりてえ」という欲望が詰め込まれた超フルボーグを、「これこれ、これよ！」という演出の連打でキメまくってくれました。
まず玖の凄いところは、「物凄い破壊力の小型砲をぶっ放す」にキャラが集約されていて、設定した武器『ムーンスライサー』（〈†破壊光線〉相当）で全てを語るところです。『ムーンスライサー』には、彼が「超戦闘存在であること」「世界を変えうる存在であること」「ここではない場所から来たこと」が全て詰まっていて、このシャープなキャラ造形にまずシビれました。この『玖はムーンスライサーを撃つ存在である』という印象を強めるため、本当にシナリオ中は１回しか撃てないデータになっているところも凄かった！
また、ただの戦闘機械で終わらず、無機質な言葉のなかに、確かに「情」「平和や善の希求」といった共感できる要素を感じさせるロールだったのも良かったです。自分自身が消失する運命にあることも全て受け入れている、静かな優しさと潔さと道具存在（彼はクロガネです）の哀しさを的確に演出していてなんでシェンツ先生はそんなプレイングができるってんだい？？？
更に、未来要素の使い方が滅茶苦茶に上手く、「名前はナインになる予定だったが、ニューロエイジの有名な殺人者と同じになってしまうので漢字名になった」と、自分が来た場所と現在のニューロエイジとの連続性をキャラクターに絡めて演出したり、「ムーンスライサーを作ったのはラフィオ」などと他キャストの当事者性を更に高めてくれたりと、本当に八面六臂の大活躍でした。
「未来から来てややディスコミュってるロボ」をやってるのに一回もポンコツになったりグデったりしなかった、といえばどれだけ当日のシェンツ先生がキレッキレだったか、わかる人にはわかると思います。
そして響。シキガミとのかつての関係性や、具体的なキャラ造形まで任される難しい枠を、圧倒的な熱量で走りきってくれました。シキガミのスタイルそのものは持っていないのですが、「シキガミへの執着」を強く表現しており、シキとの関係の１つの形がしっかり提示されていたと思います。
また、響のスタイルで特筆すべきは、シキガミを失い、コモンのスタイルを得たということです。
カッツェでは、前回の『少女達は苺味の血を流す』に出てきた久遠が、コモンのプレイスタイルのうち、「“普通”の閾値が高いがゆえにキャストたりえる」という形をとても鮮烈に表現してくれていました。
一方、響がコモンで表現してくれたのは「スタイルを失ってしまった者」でした。「シキに会うことで一度日常から遠ざかっていたキャラが、いやおう無く戻ってきてしまった」。Ｎ◎ＶＡにおいてもっとも大切なスタイルを失ってしまったということをコモンで表現したのは白眉だったと思います。
Ｎ◎ＶＡはスタイルをぶつけ合うゲームなので、「コモンのスタイルを推していく」ことは、すなわち「スタイルを失ってしまったこと」を推していくことができるようになったわけです。
これを、二次元さんがシキに対する情熱をミァハに対するトァンの如く熱烈に表現してくれたので、僕のなかで「コモンになってしまった者」のロールモデルとして非常に強い印象が残りました。
また、「コモンになってしまった」のに「コモンの世界にはもう馴染めない」とうことを、残り２つのスタイルで表現しており、ここでも二次元さんの強いキャラ表現が最大限生きてました。命令に従ってやってきただけの警官を四肢切断しようとしたりな！ そして他ＰＬ，というか僕が「あとで合流しづらくなるのでどうか手心を……」とお願いしたらちゃんと矛を収めてくれる度量と柔軟性。マジありがたかったです！
響の練り上げられた設定のおかげで、期せずしてコモンというスタイルについても考える契機となったのはとても面白い展開でした。
というわけで、重量級のシナリオに、５人ものＰＬが、全力でぶつかっている、素晴らしいプレイ体験をさせていただきました。とにかく学ぶところや気付くところの多い、得るものも多く、何より最高に楽しいアクトでした。ご一緒いただいた皆様、ありがとうございました！！
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