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2017年09月22日20:32

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そして「SMILE」は、微笑まなかった

るんるん…「SMILE」/THE BEACH BOYS


THE BEACH BOYSの「SMILE」、というアルバムは存在したのだろうか。

「SMILE」は、ロックの歴史でも最大の謎ともいわれていた、未発表アルバムである。

僕は高校生の頃からTHE BEACH BOYSが好きで、特に「PET SOUNDS」に夢中になっていた時期があった。

それに近いサウンドを求めて、「TODAY!」や「SMILEY SMILE」、「WILD HONEY」、「FRIENDS」といったアルバムを聴きまくっていたりもした。

アルバムの出来はともかく、この頃のTHE BEACH BOYSのサウンドが大好きだったのである。

その時期のTHE BEACH BOYSを聴いていると、嫌でも耳に入るのが幻の名作「SMILE」で、その謎めいた神秘性も相まって、まだ聞いたことのない名作に胸を焦がしたものである。

THE BEACH BOYSの頭脳、ブライアン・ウィルソンはTHE BEATLESの「RUBBER SOUL」にショックを受け、これは自身への挑戦だと受け取り、凄腕のスタジオミュージシャンを集めて、THE BEACH BOYSのメンバーにはコーラスとボーカルのみをレコーディングに参加させて、歴史的名作「PET SOUNDS」を完成させる。

その圧倒的なポップロックアルバムは、ポール・マッカートニーをはじめ当時のミュージシャンには絶賛されたものの、あまりにも先駆的な内容だったのか、当時の大衆への受けはいまいちだった(ちなみに現在は名作として一般的に認知もされており、全世界で900万枚以上の売り上げをあげている)

ブライアンは、「PET SOUNDS」の評判がいまいちだったのにもめげず、今度は複数のスタジオで90時間におよぶテープを編集し3分半の楽曲に仕上げた名曲“Good Vibration”を完成させる。

この曲は全米・全英で1位を獲得するなど大成功をおさめ、この勢いに乗り、同じ方法で一枚のアルバムを完成させるという試みの下、始められたのが「SMILE」のセッションであった。

結局、このセッションはブライアンが精神に異常をきたしたことが原因となり、失敗に終わる。

そして、このセッションをもとにリレーコーディングされた曲などを収録する形で「SMILEY SMILE」が発表されるに至るのである。

以来、「SURF'S UP」までのアルバムに「SMILE」収録予定だった楽曲がいくつかおさめられたり、ブートレッグでセッションの一部が流失したりしたのだが、「SMILE」そのものが日の目を見ることは、長らくなかった。

そして、そんな日は来ないだろうと思いながら、おそらく大部分のファンは「SMILE」を妄想の中で聴いていたのではないだろうか。

それが突然、形となって現れてしまったのが2004年のことだった。

なんと、ブライアンがソロアルバムとして、発表したのである。

2003年に「SMILE」完全再現LIVEを行い、そのアレンジをもとにスタジオ入りし短期間で完成させてしまったのである。

さらに2011年にはこのブライアンのバージョンをもとに当時の音源を編集しなおしたという形でTHE BEACH BOYS名義の「SMILE」もリリースされている。

さて、その「SMILE」の出来である。

ブライアンのバージョンにしても、THE BEACH BOYSのバージョンにしてもその印象は大きく変わりはないと思う。

“Good Vibrations”をアルバムにしたら、こうなりました、というアルバムというのが乱暴ながら一番簡単に説明できる方法のような気がする。

それぞれの楽曲はアルバムの一部分を担うパーツとして成り立っており、アルバム全体で組曲が形成されている、といったところだろうか。

圧巻なのは“Our Prayer〜Gee”から“Heroes And Villains”につながるオープニングで、幻想的なコーラスから、溌剌としたバンド演奏が切り込む様は、本当に素晴らしい。

もし、これが正式にリリースされていれば、ロック史上最高のオープニングと永劫的に讃えられていたのではないか。

さらには既発の“Surf's Up”はやはり名曲で、この位置にあると、なるほど、しっくりくるし、“Bohemian Rhapsody”の約10年前に、こんな恐ろしい曲が完成されていたことに改めて驚かされる。

ただ、ブライアンのソロ名義にしても、THE BEACH BOYS名義にしても、どちらも散漫な印象はぬぐえない。

ハッキリ言って、情報量が多すぎるし、焦点がぼやけてしまっているように思う。

このあたり、やはり過去の名作の、焼き直し感は否めないと思う。

あらためて聴きなおしてみて思ったのは、果たして、1966〜67年にブライアンが思い描いていた、頭の中で完成させていた「SMILE」はこの形だったのだろうか。

「PET SOUNDS」や“Good Vibrations”で披露していた圧倒的なアレンジ能力を考えると、実はまた異なった形かもしれない。

しかし、どういう形であれ、「SMILE」が世に出たことにより、ロック史上最高のミステリーは、終止符を打たれた、ということなのだろうと思う。


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