ようやく梅雨が明けたなと思っていたら、いつの間にか、うるさいほどのセミの声が聞こえてくる。
有栖川宮公園には大きな池がある。公園入口から池に向かって歩いていくと、池のほとりにベンチが2台ある。ひとつ目のベンチでは、いつものストレッチお姉さんが体を伸ばしていた。
どう見ても色っぽくない・・・。そしてふたつ目のベンチには・・・あ“〜!!このあいだのお爺さんがいる。
ニコニコとこっちを見ながら、声をかけてきた。
爺「やあ!お元気でしたか?」やけにきげんがいいのは、どうしてなんだろう?
爺「このあいだ久しぶりにNHKに行ってきましたよ」
アニキ「ホォ!?」
爺「いやあ、あそこは音もいいし、広さもちょうどいい」
アニキ「スタジオパークでも見てきたんですか?」
爺「いやぁ、ちょっとためしに歌ってきましたよ」
アニキ「へえ〜、のど自慢大会の本選ですか。鐘は鳴りましたか?」
爺「鐘は鳴らなかったけど、拍手はたくさんもらいました」
アニキ「ほぅ、それは良かった。うれしいものですよね」
爺「ええ、見に来てくれた人も、感激して泣いていましたよ」
アニキ「で、なんの曲を歌ったんですか?民謡??」
爺「いえいえ『時の過ぎ行くままに』とかね」
アニキ「あぁ、沢田研二ね。彼はいいよねえ。お爺さんも好きなんだ?」
爺「ええ、まあ・・・ははは」
アニキ「星加ルミ子が、初めてポール・マッカートニーに会ったとき、『なんてきれいで、かわいい男の子なの!?こんな人が現実にいるなんて!?』と、心を奪われたと言っていたけど、ボクもジュリーを初めて間近で見た時、『男でも、こんなに美しい人がいるんだ』と、まるで夢を見ているような感じでしたよ。確かにひとりの人間なんだけど、まるでギリシャの彫刻を見ているような、そんな美しさがありました」
爺「はぁ・・・そうですか・・・すみません」
アニキ「え!?お爺さんがなんであやまるんですか?これは昔の話ですから」
爺「それじゃあ私は、そろそろスタジオにいかなくてはならないので、失礼します」
アニキ「そうですか。いってらっしゃい」
アニキは、またお爺さんと、ゆっくり話ができて良かったなと思った。
だいぶ太りぎみなので、ちょっと心配だな・・・。
それにしても、なんであやまっていたんだろう?
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