菅野完・緊急寄稿「捨て身の“籠池砲”が示す安倍夫妻の罪」〈週刊朝日〉
6/30(金) 11:39配信
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菅野完・緊急寄稿「捨て身の“籠池砲”が示す安倍夫妻の罪」〈週刊朝日〉
6月21日夜、昭恵氏の経営する居酒屋を訪れ「寄付金100万円」を返そうとした籠池氏。報道陣に見せた札束は中身が白紙の「ハリボテ」だった
保育士不足に陥っていた森友学園関連の保育園(大阪市淀川区)が6月30日で閉園することになった。大阪地検特捜部が籠池泰典前理事長の自宅、塚本幼稚園など学校法人「森友学園」関係先に対する強制捜査に乗り出したのは今月19日。国有地の不当廉売問題が明るみに出てから4カ月、ついに刑事事件へと発展したが、「詐欺」か、「国策捜査」か。菅野完氏がその最終攻防に迫る。
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籠池氏へのインタビューがようやく実現したのは、強制捜査から4日後の23日だ。開口一番、こう訴えた。
「しかし検察は、何から何まで持っていくねぇ。事件になんの関係もないものまで持っていく。息子や娘の赤ちゃんの頃の写真から娘の高校と大学の卒業アルバムまで。あんなもん捜査に必要ないと思うけどなぁ」
検察による家宅捜索への不満を口にした籠池氏の口ぶりからは、疲労のほどがうかがえる。
「そりゃ疲れるわな。なんせ、ウチへの家宅捜索は夜中の2時までかかったんやから。幼稚園のガサ入れの方はもっとひどい。幼稚園なんか女性職員多いのに、朝の6時ごろまで引っ張ってな。みんな徹夜や」
籠池氏へのインタビューに先立ち、幼稚園職員にも話を聞いたが、塚本幼稚園での家宅捜索は苛烈を極めたようだ。
「女性の検察官から『こっち来てください』と呼ばれ、身体中、隅から隅まで、ボディーチェックを受けました。私たちは容疑者ではなく参考人だと聞いていたのに、口調も扱い方もまるで犯人扱いでしたね」
しかも当初「家宅捜索の間、外部との連絡を遮断するため預からせて欲しい」と取り上げた携帯電話まで、最後になって「これも証拠品として押収する」と持って帰っていったという。
「検察は嘘ばっかりつく」と幼稚園職員も、籠池氏同様に検察の手法への不満を滲ませる。
今回の家宅捜索の容疑とされたのは詐欺と補助金適正化法違反の二つ。
森友学園の経営する「塚本幼稚園」で、勤務実態のない職員を雇用したように装い府の経常費補助金約3440万円を不正に受給した疑いと、平成23年度から27年度にかけて特別な支援が必要な「要支援児」を受け入れているなどと偽り、補助金約2740万円を詐取したという詐欺容疑だ。
一方の補助金適正化法違反の容疑は、小学校の建設工事に関し、金額の異なる複数の契約書を作成し、国土交通省の補助金を受ける際、約5600万円(後に全額返還)を不正に受け取ったというもの。
「確かに、我々にも反省せなあかんところはある。お叱りを頂戴するべきところもある。そやけど、今回の容疑二つとも森友問題の『本筋』になんか関係ある話か? これは単に、僕だけを悪者にして全部幕引きにしようとする政権側の思惑を『忖度』した検察当局による国策捜査やわ」(籠池氏)
確かに、19日に行われた安倍首相記者会見の終了30分後から始まった、森友学園関係先5カ所への一斉家宅捜索は、見ようによれば、大阪地検特捜部が政局の動きを見計らって実施したようにも見える。籠池氏はこう続ける。
「国策捜査やから、てっきりその日のうちに逮捕されるもんやと思ってた。僕をブタ箱に入れたら五月蝿いやつ一人減るしね。幼稚園に家宅捜索が入ったって話を聞いて、背広に着替えてたのもそのためやで」
この4カ月、籠池氏の運命は転変を続けた。森友問題が初めて国会で議論され始めた頃、安倍首相は「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いている」と衆院予算委で答弁している。ところが、野党側の激しい追及に耐えかねたのか、「私や妻が関係したということになれば、首相も国会議員も辞める」とあらぬことを口走り、森友問題は一気に政局化した。
「あの瞬間からやで。空気が変わったんは。うちの前顧問弁護士が『財務省理財局長がしばらく雲隠れしてくれと言っている』と伝えてきたのもあの頃。安倍さんの胸先三寸で、僕も、僕の家族も振り回されっぱなしや。もうみんな忘れてるかもしれんけどな、証人喚問かて、『首相を侮辱した』って理由やったやろ? 僕がここ数カ月辿った道を見たら、安倍首相の鶴の一声が、どんだけ影響あるか、よう分かるはずや」
ここ数カ月、安倍首相の答弁、表情、スケジュールに合わせ、籠池氏の運命は左右され、そしてついに今回、家宅捜索にまで発展。
「な? そうやろ? ここまでのことができるお人やから、あの国有地はああなったんや。あの人のご威光があったから、あの土地取引はあの形で動いたんよ。前川さん流に言えば『行政が歪められた』わけよ」
今回のインタビューは籠池氏が文部科学省前事務次官・前川氏の記者会見をネット中継で観終わった直後から開始した。
「前川さん、上手いこと言うてたな。加計と森友はよう似てると。大学の設置も、小学校の設置も、学校設置認可と財政支援の両方が必要で、加計の場合は、財政支援が地方自治体、学校設置認可が国で、森友の場合は学校設置認可が地方自治体、財政支援が国と違いはあるけど、この行政の両方を調整する『司令塔がどこかにあるはず』って言うてたやろ? で、『特定の意思で行政が歪められた可能性がある』って。全くそやねんって。森友の場合は、それが昭恵さんであり安倍首相ご本人やった。昭恵さんが名誉校長に就任した瞬間から、話が前に進み出したのも、前川さんが記者会見で言うてた『司令塔』があの夫婦やからや。そこがこの事件の『本筋』。ここを解明することが、ほんまは、地検特捜部のやるべき仕事ちゃうんかなぁ」
自身に掛けられた嫌疑を棚に上げ、行政の歪みを指摘する籠池氏の姿は手前勝手に見えるかもしれない。だが、その主張に理がないと一蹴するのも難しい。
確かに籠池氏の指摘通り、事件の「本筋」である国有地不当廉売の背景に切り込まない限り、「最強の捜査機関」と恐れられ、「政官財の監視役」とまで言われた地検特捜部の誇り高き看板に、癒えることのない傷をつけることになるだろう。
※週刊朝日 2017年7月7日号
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170629-00000044-sasahi-pol&p=3
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