おかしい・・・誰もおいらのことを注目してくれない。
どうしちゃったんだ!?
いつものように、埼京線の電車に乗って、帰宅しようとしていたぐーちゃんの頭の中は???だった。
電車の中には20人ほどの男女が乗っていたのだが、ぐーちゃんのことなど見向きもせず、みんなスマホの画面に夢中になっていた。
ぐーちゃんは思った・・・。
スマホは、それほどまでに大事なものなのだろうか?
もしかしたら、ぐーちゃんが池袋の駅から乗ってきたことさえ、彼らは気づいていないのかも知れない。
一日の大半を、あの小さな画面を見て過ごすなんて、ぐーちゃんにはとても信じられなかった。
ぐーちゃんがアルバイトで始めた、ローカルCM出演も、最初はなかなかオーディションに受からなかった。
最近は、あの人なつっこい間の抜けた笑顔がいいと、評判になっており、メジャーCMにも出られるようになってきた。
つい先日も、東レのトレビーノのCMに、彼の巨大な顔面が映し出されていた。
つぶやきで見逃したかたのために再掲します。
そのわざとらしい演技は、師匠と仰ぐ岸部一徳さんから、失笑をかったと言われている。
が、しかし、あの素人っぽい演技が、そもそも彼の持ち味なのだから、そう簡単にはなおらないだろう。
あれは、くさやの干物みたいなもので、そのうち慣れてきたら、いい味に感じられるかもしれない。
こうして、今や押しも押されもせぬ、大スター(???)になりつつあるというのに、
この静けさはなんなんだ・・・と、ぐーちゃんは納得できなかった。
「あ!ぐーちゃん、気がつかなかった。サインしてください」というのが本当だろう。
「いやあ〜まいったなあ。ちょっとだけだよ」と、おいらはニコニコして、サインをしてあげるのに・・・。
・・・などと考えているうちに、ハードなCM撮影の疲れからか、いつのまにか眠りこけてしまった。
2時間後、電車は池袋の埼京線車庫に、整然としておさめられていた。
中には、まだ眠りから覚めそうもない、ぐーちゃんがいたことは、言うまでもない。
ログインしてコメントを確認・投稿する