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2017年06月02日23:48

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極私的THE BLACK CROWES論

るんるん…「THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION」/THE BLACK CROWES


90年代のアメリカンロックの雄、THE BLACK CROWES。

90年代らしいダイナミズムと生々しさ、彼らのルーツであるブルースやサザンロックが絶妙に融合した、理屈抜きのカッコいい音を聴かせるバンドだった。

彼らの1st「SHAKE YOUR MONEY MAKER」が登場したのは1990年。

まだ、華やかなりしL.A.を中心とするヘビーメタルブームが熱く盛り上がっていたころに、オーティス・レディングのカヴァー“Hard To Handle”をヒットさせ、それに続いてリリースされたのが本作だった。

冒頭の堂々としたギターサウンド、続く大地を揺るがすような圧倒的なグルーヴに、クリス・ロビンソンの独特の色気を持った極上のボーカルが乗る。

ギターはリフにしてもリードにしても匠の技と言えるような成熟したフレーズを連発し、メロディも非常に充実した、まさに新人離れした堂々のデビュー作。

このアルバムはヒットチャートもどんどん上昇し、800万枚以上を売り上げる空前絶後の大ヒット作となった。

この圧倒的な大ヒットデビューアルバムに続いてリリースされた「THE SOUTHREN HARMONY AND MUSICAL COMPANION」は、より洗練されたサウンドと、成熟した楽曲が詰め込まれた、これまた大充実作。

冒頭の“Sting Me”と“Remedy”の言葉にはできないようなカッコよさ、“Bad Luck Blue Eye Goodbye”の色気と美しさは、このバンドがすでにシーンの頂点に存在していることを証明するには十分すぎるほどの出来だ。

ここまでの2作はロックのダイナミズムとともに、グラムロックっぽい華やかなポップ性も同居していたのだが、そこから贅肉をそぎ落としたようにより生々しく、骨太なロックを聴かせたのが“Amorica”。

このアルバムは耳で聴くのではなく、身体全体で感じるタイプの作品で、音から迸るグルーヴが凄まじい。

サウンドにしてもギターフレーズにしてもクセはあるが、その音に体が馴染んでしまえば、理屈抜きのカッコよさを味わえる。

ここにきて、新生面を打ち出し、さらには高い次元で聴かせる彼らの、抜群のセンスを感じさせる作品だと思う。

続く4th「THREE SNAKES ONE CHARM」は今度は一転、その骨太路線を封印。

華やかなコーラスを復活させるも、ロックのダイナミズムよりも、クリスを中心とする彼らの持つ色気を前面に押し出した作品となった。

比較的、落ち着いた雰囲気の作品だが、こういう音でのクリスは水を得た魚のように絶品のボーカルを聴かせる。

この作風でも音全体から迸るグルーヴは全く衰えておらず、このバンドの演奏力の高さを感じさせる作品だと思う。

5th「BY YOUR SIDE」では前作では後ろに引っ込んだ感のあったダイナミズムが一転、最前面に押し出される作品となった。

1stと2ndにあったグラムロックっぽい華やかさも復活。

冒頭の“Go Faster”と“Kickin' My Heart Around”は鳥肌もののカッコよさのハードロック、さらには印象的なギターフレーズが素晴らしいアルバムタイトルトラックなど、各楽曲も非常に充実しており、聴きやすさといった点では、彼らのアルバムの中でも筆頭格なのでは、と思う。

1999年には彼らとジミー・ペイジの共演が実現する。

この時のLIVEの模様を収めた「LIVE AT THE GREEK」が翌2000年に発表されたのだが、これがまた素晴らしいLIVE盤となった。

LED ZEPPELINのトリビュート、かくあるべし、といっても過言ではないような出来のアルバムで、バンドの演奏の安定感にまずは驚く。

一部評論家筋では、ドラムがジョン・ボーナムには至っていない、などというわけのわからない論評もあったようだが、躍動感あふれるこのドラムこそ、LED ZEPPELINのナンバーに敬意を払いつつ素晴らしいエネルギーを注入しているのは一聴瞭然。

さらにはクリスの圧倒的なボーカルが、まさにプラントを彷彿とさせつつ、彼ならではの個性も発揮していて素晴らしい。

THE BLACK CROWESの圧倒的な実力を示した名LIVE盤である。

このLIVE盤で更なる高みに上ったTHE BLACK CROWESの21世紀最初のオリジナルアルバム「LIONS」は、また一風変わった作品となった。

冒頭のうねりを挙げる重々しいギター、さらには“Lickin'”で聴かれるトリッキーなギターなど、生々しい音が前面に出ているが、作品全体を包んでいるのは60年代後半をほうふつとさせるハッピーなサイケデリックサウンド。

アンセム“Soul Singing”をはじめ、“Losing My Mind”など悠久のグルーブと華やかな多幸感に包まれたアルバムで、彼ららしさが全編に溢れながら更なる新しい姿を聴かせてくれている。

2002年にはオフィシャルとフルLIVE盤としては初めてとなる「LIVE」を発表するのだが、この年に活動を休止。

2005年に再始動し、LIVE活動を再開させる。

オリジナルアルバムが再び発表されたのは2008年。

ロックのダイナミズムよりもルーツっぽい、ゆったりしたアメリカの音をしっかり聴させる作りになっており、ここにきてさらに成熟した音を聴かせるようになっている。

クリスの色気のあるボーカルも素晴らしい。

翌2009年には続くオリジナルアルバム「BEFORE THE FROST...」とダウンロードアルバム「...UNTIL THE FREEZE」をリリース。
スライドギターがここりよく響く前作をさらに成熟させたような音だが、“I Ain't Hiding”のようなディスコナンバーがさらりと自然に収録されているところに彼らの凄さが感じられる。

この後、活動休止と再活動を繰り返しつつ、2015年に解散を表明。

ここまで、常に充実作を発表した彼らだけに、さらなる活動が望まれる。


さて、ここからは余談。

彼らには未発表音源集、「LOST CROWES」という作品があるのだが、このアルバムも特筆ものの素晴らしさであるということを付け加えたい。

このバンドのソングライティングの奥深さを感じさせるには十分すぎるほどの内容である。



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