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2017年05月24日16:46

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「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 「ラビング〜愛という名前のふたり〜」 「はじまりへの旅」

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 ’16 (米)


これはTwitter の方もサボっていて呟いていない。
アカデミー賞脚本賞を受賞した監督ケネス・ロナーガン作品は初体験。
子を失った男が自らを縛る懲罰と贖罪の人生が
甥である10代の少年の父を失った喪失の苦悩と響き合い
不器用にも訥々と故郷の苦界を彷徨う映画は、
言われるような“再生”の物語というより
まさにその彷徨の過程を読むお話であり
何とかしたいが何ともならないもどかしい主人公リーの人生に付き合って
彼の愚かしさや卑小さやぶっきらぼうな優しさが
あの“冬の日の悲劇”に象られていることに
観客としても向き合わざるを得ないわけで、
自分が生きて息をしていることが許せないだろうリーの“何ともならなさ”に
じっと耐え続ける映画になっている。
これはもうケイシー・アフレックが
“完全無欠なアメリカ人の男”をいかに裏切るかを眺めて
その
子供じみて繊細でピュアで単純な“脆弱な男”の在りように
喝采を送るしかなくて、
死んだ兄ジョーのような“男としての完成”に至らないという意味で
16歳の甥パトリックと同列のリーを
ケイシー・アフレックはみごとに実に見事に演じていて、
ああもうアメリカ人俳優の中で今一番好き!と
叫びたくなってしまう(笑)。
アメリカ人女優の中で今一番好き!なミシェル・ウィリアムズは
“冬の日の悲劇”後の狂乱が一切省かれている脚本に
“その後の(元妻)ランディ”の心の軌跡を見晴らせる芝居で応えていて
上手いなぁ…!とため息が出る。
父が死んだというのに
二又のガールフレンドとよろしくやったり
バンドの練習を休みもしないパトリックの脳天気な暮らしぶりが
“喪失の苦悩”を耐えやり過ごすための方途であることもまた
悲劇を跨いだリーの在りようと重ねられていて
良いドラマ 上手い脚本だと思ったのだった。
佳作。



「ラビング〜愛という名前のふたり〜」 ’16 (英・米)

ジェフ・ニコルズは物語を最高裁での勝利という感動で語らず、リチャードの愚直なまでの妻への愛と世界との距離感と、被庇護者であることを受容しつつ実は庇護者たるミルドレットの慎ましい人生の在りようを、極めて抑制された筆致で綴っているのだ。

とつぶやいている。
異人種間の結婚が違法であった時代の黒人妻白人夫の夫婦のお話。
妻ミルドレッドを演じたルース・ネッガが主演女優賞ノミネート。
「マンチェスター〜」もそうだが
ハリウッドのお約束のような感動作を回避し
登場人物の心の軌跡をしっかり語ろう―という作りの映画が
ノミネートされるのは嬉しい。
このラビング夫妻とか「初恋のきた道」の夫婦とか
一組のカップルが
どれだけ互いを敬い愛することができるかを明かされると
法廷闘争や文革といった事態や歴史よりも
“他者を好きでいる力”に感動してしまうなぁ(笑)。



「はじまりへの旅」 ’16 (米)

俳優マット・ロスの監督作は特殊な教育方針により子供6人を山中で育てる父親の物語で、魅力的な偏向と映る彼の思考は現実と擦れて破れて行くのだが、ユーモラスな語りは父親と子どもたちを柔らかく包んで 社会や現在を裁くのではなく家族の絆を謳っているのだ。

とつぶやいている。
ヴィゴ・モーテンセンが主演男優賞にノミネートされている。
教養高く体力がありサバイバル能力も半端ない最強の父親―ヴィゴ・モーテンセンは
戯画化されていてなおカッコよく魅力的に映るのだが、
いやこの偏向は行きすぎだろ…と
いささか退いてしまう困った男でもあって、
その彼と6人(!)の子どもたちの“外の世界”体験が
これまた戯画化されて語られるお話は
現在の教育や親子関係を揶揄しているわけで、
どう風呂敷をたたむのか?と心配していたら
そこそこ折り合いをつけて苦くも甘くもなくさっぱり終わったので
よかったね!ヴィゴ・モーテンセン!
とか思ってしまった(笑)。

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