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2017年04月29日23:48

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映画 PARKS パークス

”PARKS パークス”

今年五月に100周年を迎える吉祥寺・井之頭公園を舞台にした映画。
惜しくも2014年に閉館した吉祥寺の名物映画館バウスシアターのオーナーが
映画館の終わりを映画の誕生のきっかけに!という思いで実現させた作品。

井之頭公園そばのアパートに住む女子大生・純の部屋を見知らぬ女子高生ハルが訪ねてくる。
この部屋に50年前に住んでいた亡くなった父の元カノ・佐知子さんを知りませんか?と。
二人で公園の近くに住むアパートのオーナーの寺田さんを訪ねると、オーナーは佐知子さんと
ハルの父の友人だった。佐知子さんの家を訪ねると、つい先月に亡くなったばかり。
数日後、孫で音楽スタジオで働くトキオが佐知子さんの遺品からオープンリールのテープが
遺っていたと連絡があり、三人で再生をしてみた。
”君と歌いたい曲がある それはこんな曲で 僕らの物語は この公園から始まる”
佐知子とハルの父の歌声だった。しかしテープが痛んでいて、音は途中で途切れる。
三人は歌を完成させようと曲を作り、バンド仲間を集め、公園や街の音を集める。
そして三人の活動に興味を持った純の友人の紹介で吉祥寺の音楽フェスに出ないかと誘われる。
果たして60年代の曲を2017年に復活させる三人の試みは無事に成功するのか?

冒頭の公園の桜が美しい。
そう、この映画の主役は公園の桜、池、橋、森、そこに集う人々。
それだけでこの映画を見たかいがあります。
だから舞台は井之頭公園ではあるけども、見る人それぞれが心の中に持っている
故郷や今住んでいる街の公園を思い描き、どこか懐かしく、そして親近感を持って
この映画を楽しめるでしょう。

”この映画をこの桜のシーンから始めたい” という純を演じる橋本愛が
公園への愛がこもったプロローグを語りながら、桜満開の公園を自転車で駆け抜ける。
その、公園の自然と溶け込むような純のまさにナチュラルな笑顔と演技が素晴らしい。
そして亡き父の青春を小説に残すため佐知子さんを探す永野芽郁(ながのめい)が、
いきなり純の部屋の押しかけたり、曲の出来にダメ出ししたりする天真爛漫な少女を
これまた軽やかに演じている。
その二人の間に入る染谷将太もお調子もんでお人好しな青年を好演。
この三人の心地よい自然な関係、演技が公園同様心地よい映画であります。

三人が曲の歌詞やメロディーをアイディア出しながら少しづつ作り上げ、
公園の森をそよぐ風の音、動物園の動物の鳴き声、ベンチで語らう人たちの声を
録音して回ったり、バンドのメンバーを集め、スタジオで曲を仕上げていく様は
ジョン・カーニー監督の素晴らしい音楽映画”はじまりのうた”と同じく
街の中で音楽を作り上げるところも似ていて、高揚感があり楽しい気持ちになります。
橋本愛はギターとボーカルを披露しており、透明感のある歌声はなかなかよろしく、
染谷もラップを見事に決めており、二人の熱演に拍手です。

そのまま幸福感に包まれたまま、吉フェスに向けてクライマックスで大円団か、
と思いきや、そこは少し違った結末が。
さらには途中、五十年前の佐知子さん、ハルの父、寺田さんの回想場面にハルが登場したり、
ハルは一体何者?みたいな謎が出てきたり、純にもちょっとした過去の嫌な思い出が。
100周年記念映画なのでシンプルに感動できる作品にしたらよかったのに、と思いつつ、
ありきたりにしなかったのも数々の個性あふれる企画や映画を上映してきたバウスシアターの
オーナーと監督(脚本も)の気概で、より深みというか観客に考えさせる作品にしたかった
からではなかったのかなと思いました。

まあ、”僕らの物語はこの公園から始まる”っていうぐらいですから、
ハルが書いた小説として、50年の時を行ったり来たりするおとぎ話であってもおかしくない。
そういう意味では、ハルの数年後の姿で終わるラストシーンも納得できるし。
そしていつの世にも公園は”そこ”にあり、物語や歌を生み出すのだというメッセージを
感じられるし。

全編、トクマルシューゴの音楽監修のもと、吉祥寺ゆかりのミュージシャンの音楽で溢れており、
スカートの澤部が公園で弾き語りしていたり、シャムキャッツが吉フェスでライブしたり、
ラストの相対性理論の”弁天様はスピリチュア”(弁天様は井之頭公園の本尊)も
少し謎を残したエンディングにふさわしい曲でした。だからスピリチュア!
高田漣、佐野史郎(純のゼミの教授)、麻田浩(寺田役・本職は音楽プロデューサー)
といった音楽関連の人もちょい役でいい味出してたり。
そんな吉祥寺の街や公園にふさわしい音楽にあふれた映画の締めくくりとなる、
公園のいたるところで橋本愛、メンバー、そして公園にいる人たちが
出来上がった曲を歌い踊るミュージカルシーン、
まあ”ララランド”とはいきませんが、
まさに”♪パークミュジック 口ずさむストーリー♪
一緒に歌い踊りたくなる(これぐらいなら)、ほっこりした仕上がりで楽しめました。

吉祥寺は家から6キロぐらいでバスで一本で行けるとこにあって、
たまに曼荼羅2でライブ見たり、それこそバウスシアターにはどんと追悼や
ボガンボ&ローザルクセンブルグ関連のイベントを見に行ったり、あと佐藤のメンチカツ、
天音のたい焼き、小ざさの最中、アテスウェイのケーキとかなんかは食べたりしてますが、
肝心の井之頭公園には入り口までは行っても公園の中まで入ったことがありません。
入口わきのいせや(高田渡が毎日通っていいた居酒屋)やジブリの森も未開拓。
だから一度じっくり探索して見たいと思いました。
皆さんもこの映画を見たら好きな公園に行きたくなるでしょう。
思い出のレコード屋、喫茶店、服屋さんが無くなっていても、
公園は変わらずそこにあります。
そうすれば新しい物語や歌がまた生まれることでしょう。
そんな気持ちにさせてくれる映画です。


https://www.youtube.com/watch?v=Kzp4GDoiLYc


公園100周年を記念して相対性理論:やくしまるえつこが園内放送を担当中。
https://www.youtube.com/watch?v=8akax1RRa10


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